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第9話「もう、目逸らせへん」
放課後。
教室。
(帰りたい)
でも足が動かん。
理由は一個。
目の前にいる、あっきぃ。
「なんで残ってんの」
「ぷりちゃんが残ってるから」
(意味わからん)
カバンを持つ。
「帰るわ」
その瞬間。
腕を掴まれる。
軽いのに、
逃げられへん。
「待てって」
(……来た)
振り返る。
近い。
見上げる形になる。
(でか……)
普段は気にせんのに、
今はやけに意識する。
広い肩幅も、
長い脚も、
全部。
一歩下がる。
そのまま、
背中が壁に当たる。
(あ)
逃げ場、なくなる。
その瞬間、
あっきぃの手が壁につく。
俺の顔のすぐ横。
見上げたまま、動けへん。
完全に捕まった。
「ぷりちゃん?」
上から声が落ちてくる。
低くて、近い。
「なんや」
自分の声が震えてるのが分かる。
でもどうしようもない。
視線を逸らそうとして、
できひん。
あっきぃが、
じっと俺の目を見てくるから。
少しだけ笑ってる。
あのニヤニヤした顔。
でも目は逃がす気がない。
「さっきからさ」
ゆっくり言う。
「分かりやすすぎ」
「何が」
分かってるくせに聞く。
あっきぃが、ほんの少しだけ顔を下げる。
距離がさらに近くなる。
(やめろ)
視界が、
ほぼあっきぃで埋め尽くされる。
逃げ場は、どこにもない。
「俺の唇、見て」
「やだ…」
一瞬で思い出す。
昨日の風景。
俺らのが触れ合った瞬間。
顔、熱い。
上から見られてるせいで、
余計に全部バレてる気がする。
「昨日のことも」
声が近い。
「今日も」
さらに少しだけ詰めてくる。
「全部、顔に出てる」
「出てへん!!」
でも、
見上げたままやから、
逃げ場がない。
表情、隠せへん。
あっきぃが少しだけ間を置く。
そのまま、
じっと見下ろしてくる。
(無理)
耐えられへん。
「俺のこと好きになっちゃったんでしょ」
(……っ)
真上から落ちてくる言葉。
息が詰まる。
否定したいのに、
言葉が出てこん。
視線も逸らせへん。
全部、捕まってる。
「違う?」
少しだけ優しくなる声。
こんなんずるいやん。
抗えるわけない。
「……知らん」
やっとそれだけ言う。
でも弱い。
あっきぃが少しだけ笑う。
「それ、肯定ってこと?」
「ちゃう!!」
でも、
もう遅い。
あっきぃが小さく息を吐く。
それから、
「…好きだよ」
真上から、落ちてくる言葉。
近すぎる距離で。
「……っ」
心臓、うるさい。
頭、回らん。
「ぷりちゃんのこと」
少しだけ柔らかい声。
「もう逃げないでよ」
その一言で、
全部崩れる。
「……逃げてへん」
やっと言う。
小さいけど、
嘘じゃない。
「知ってる」
「……嫌ちゃう」
ほぼ聞こえへん声。
でも、
ちゃんと届く距離。
あっきぃの目が少しだけ変わる。
さっきまでの意地悪なやつじゃない。
少しだけ、優しくて真剣。
(……あかん)
それ見たら、
余計に逃げられへん。
「……ほんま、ずるい」
最後にそれだけ。
もう分かってる。
目、逸らせへん時点で。
コメント
1件
やばいー! prちゃんもう逃げられないです🥰