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机の上には散りばめられた宝石。
あたしはベッドの上にうつ伏せになり、アルバムを開く。
召使いが来る前に読み終わらなきゃね。
なんて考えながらもパラパラと適当にめくる。
外から足音がすればあたしはアルバムをベッドの下に隠した。
体制を整えあたしはベッドの上にちょこんと座り込む。
長く伸びた髪の先端を人差し指と親指でスリスリとしていれば部屋に召使いが入ってくる。
「お嬢様、お時間ですよ。」
堅苦しい顔をしないで欲しい。
あたしはそんな顔好きじゃないのに。
貴族以外にも立ち入りできる舞踏会ではなくて、宮廷舞踏会、つまりお偉い人達が沢山集まる舞踏会。
あたしはその舞踏会の主人公になるべき存在だった。
今回はあたしの婚約者を探すとお父様から聞いた。お父様は
「変な真似はするな」
とだけ言われたけど、それを我慢できるような大人じゃない。
窓越しにゴン、ゴンと外で鐘が響いた。響いたあとの重低音は空に広がり消え去る。
これから始まるのはきっと、楽しい楽しい舞踏会なんだろうな。
あたしは慣れないハイヒールで部屋を出た。
つまらない。
ものすごくつまらない。
こんなつまらない舞踏会人生初かもしれない。
いっその事逃げ出しちゃおう、こんな王宮なんて。
あたしは誰もいないか確認し、ながい廊下を全速力で駆け抜けた。
夜の外はこんなにも明るいのか。あたしは見慣れない街並みを見渡しながらあたしはハイヒールを鳴らした。
カンカン
暗い街を照らす外灯の下あたしは踊る。ステップを終わらせた目線の先には青色のネオンの店。
この時間での開いているお店があることを初めて知ったあたしは興味本位でお店に入る。
階段を下るとドアを開けた。青色のグラデーションのかかった女性があたしを見た。
「いらっしゃいませ」
ニコッと微笑む顔は美しい。あたしを知ってるかのように近づき、あたしに水色のオーガンジーをかけた。
「そのままだったら姿がバレますよ。」
彼女はあたしが姫であることを気づいていた。
「似合ってますよ。」
珍しいヘアピンをつけた女性はあたしに微笑みかけた。あたしはカウンターに座って女性…アンと喋った。
彼女はアンシライシと言うらしい。彼女と話が弾んでいたところ、ドアの音が鳴る。あたしはビクッと反応した。アンは
「いらっしゃいませ」
とドアの方にほほ笑みかける。あたしは恐る恐るドアの方に目をやると黄色のウェーブを重ねる髪、毛先に薄く彩る菜穂色。
あたしを見る彼の目は、黄色と薄桃色の混ざりあった夕焼け色になる。
「なんだ、先客がいたか」
アンから聞いた話彼はツカサと言うらしい。
「キールを頼む」
「承知しました」
聞いた事のないカクテルの名前も彼の声だと甘ったるく感じる。
「あちらのお客様からです」
「えっ?」
あたしに?どうして?
「なんだ、酒言葉もわからないのか」
ツカサはあたしの隣に座る
「名前は?」
「…エム」
なぜかあたしは彼を…ツカサを、信用できると確信した
「ふむ、エム…エムだな。」
ツカサはあたしの長く伸びた髪に接吻をする。
「姫様。綺麗だ」
「あまり弄ばないで」
ツカサの瞳に酔ったあたしはキールを一口飲んだ。慣れないお酒に表情を任せると赤く染る。
アンは1曲流そうかとツカサに話しかけるとツカサは頷く。ツカサはあたしに問いかける
「Shall we dance?」
あたしたちが踊り終わったときに、グラスの中の氷は既に溶けてるだろう。
「I can’t say no.」