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第5話
「行くよ」
ヴェルニクス・ドレインが低く告げる。
「ああ……」
俺は小さく返事をする。だが心臓は早鐘のように打ち、吐き気がわずかに口元に押し寄せていた。
ヴェルニクスは祭壇の前で、低い声で詠唱を始める。
言葉は耳には届くようで届かず、理屈を超えた何かが胸に押し寄せる。
「カエルム・レヴェラーレ」
意識が、じわじわと薄れていく。
「……ああ、なんだこれ、死ぬのか?」
目をそっと閉じる。
暗闇の中、時間が引き裂かれる感覚。重力も、空間も、すべてが消え失せ、体がただ浮遊するような感覚に支配される。
そして気がつくと、視界が真っ白に染まっていた。
「どこだ……ここは……」
声に出して問いかける。現実なのか、それとも夢なのか、判別できない。
全身が寒さに包まれ、背筋に冷たい汗が伝う。
「誰だ……俺たちに干渉しているのは……」
問いかけるが、答えは返ってこない。ただ、空気の奥から声が響いてくる。
「お前は人間か……なぜここに……」
どこからか、低く響く声。
「……だれ?」
思わず口をつぐむが、答えはない。
「人間ごときが干渉するとは、身の程知らずめ」
声は静かだが、耳を刺すような威圧があった。
「は? お前らは人間じゃないのか?」
カイラが口を開く。だが、その声すら心もとなく震えている。
「不愉快だ……人間に見えるか? 私は人間よりも遥かに高次の存在、いわば神だ」
その言葉が、脳を鋭く貫く。
神……神が、目の前に……?
「神、だと……?」
俺の声は震え、喉が締まる。
「そうだ」
低く、確かな声。
「お、おい……お前たちは、一体何なんだ! 本当にお前たちが……運命を作っているのか!」
怒りと恐怖が、胸の奥でぐちゃぐちゃに絡み合う。
「なぜそんなことを知っている……だが、まあ、その通りだ」
声は冷たく、確信に満ちていた。
「な、なんだと……」
言葉が喉に引っかかる。
「お前たちの世界における主人公を作るのが、我々の役目だ。一人一人の運命を定め、導く」
言葉の重さに、全身が痺れる。
俺の胸に、怒りと屈辱、理解できぬ恐怖が一度に押し寄せる。
「ふざけるな……運命が決まっているだと? 主人公? 導くだと……?」
声が震え、指先は硬直する。
「はあ……もう良い。お前は知ってしまった。返すわけにはいかん」
神の言葉は冷酷で、容赦がなかった。
俺は殺されるのか——胸の奥が締め付けられ、吐き気と屈辱が混ざり合う。
ああ……ユノン。
死を思い出す瞬間、頭に浮かぶのはあいつのことばかりだった。
「ごめん……ユノン……」
「お前はもう、この世界の外へ追放だ」
意識がさらに眩しくなり、光が溶けて黒に染まる。
「そこには意識も時間もない。運命から外れたお前は、一生そこに閉じ込められる」
その言葉とともに、体が消え去るような感覚に襲われた。
ここは……地獄のようだ。全てが薄れ、俺はもう、終わりかもしれない——
目を閉じ、覚悟する。
そのとき、闇の奥から、小さな光が差し込んだ。
「カイラ、みぃつけた!」
聞き慣れた声が、耳の奥で響く。
瞬間、全身の感覚が戻るようだった。温もり、鼓動、懐かしい声。
ユノン……あいつだ。あいつが、ここに——