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るぅ。
#めておら
ゆうなほ
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#ご本人様とは一切関係ありません
シャオ🦎🔰@がんばり中
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⚠️ATTENTION⚠️
※モブが出てくるしちょっと喋ります※
前回の続きです。今回も1万字超えです()
前回のお話が思ったよりたくさんの♡を頂けて嬉しい限りです。私の性癖に素直に書き殴っているだけなのですが、みなさまの性癖にも刺さったのなら幸いです。
一応このファンタジーパロはこれで終わります。
カーテンから差し込む日差しに瞼をくすぐられ、ゆっくりと意識が浮上する。視界に飛び込んできた見慣れない天井に一瞬困惑して、ああそうだ昨日はここに泊まったんだったと思い直す。と同時に、昨夜のあれやこれやを思い出して、かけてあった毛布を口元まで引き上げた。
毒のせいとはいえ、とんでもない痴態を晒した気がする。最後の方はあまり記憶もないが、トルテさんに抱きしめられていた心地よさだけはやたらと鮮明に覚えていた。
(トルテさん……いい匂い……だったな……)
香料の類ではなさそうだったが、あれはなんだったのだろうか。そんなことを考えていたら、扉が開く音がして、慌てて身体を起こした。途端、腰に走る鈍い痛みに少しだけ顔を歪める。
「あれ、ごめん、起こした?」
「う、ううん。大丈夫、もう起きてた」
扉を開けたのはもちろんトルテさんだ。井戸に行っていたらしく、手には水の入った木桶を持っている。
「……そ?」
明らかに不審な俺の挙動に突っ込むことなく、トルテさんは調理台の近くに桶を置き、かまどに薪を焚べはじめた。
直前までいい匂いだったなぁなどと考えていた手前、まともに顔も見れず、もちろん話しかけることもできず、コトンコトンと薪を焚べる音だけが室内に響く。
最初に沈黙を破ったのはトルテさんだった。
「身体は、大丈夫?」
「えっ、あっ、う、うん!ちょっとお尻に違和感はあるけど、大丈夫!」
平静を装おうとしたけれど余計に挙動不審になってしまった。そんな俺の様子に、トルテさんの肩が震え出す。
「俺が聞きたかったの、毒が抜けたか、なんだけど……っ」
口元を抑え、笑いを堪えるようにしながら言われて、その意味を噛み締め、顔に熱が集まってくる。
最悪だ。トルテさんのあれはあくまで毒が抜けやすくするための”処置”だ。その”処置”がうまくいったかどうかを知りたいのだ。なんだお尻に違和感はあるけど、って、そんな報告いらないだろ普通。
「あっ……毒……もう抜けてる、と思う……」
尻すぼみで声が小さくなっていく俺に、堪えきれずにトルテさんが吹き出した。
「あっははは、お前、本当に面白いね。毒も抜けたしケツも大事ないならよかったよ」
ひとしきり笑ったトルテさんが、かまどの脇に空いた穴に石のようなものを嵌め込んだ。途端、かまどが少し光り、中に焚べられた薪に火が灯る。手品のような仕組みに、恥ずかしさも忘れて燃え盛る火を見つめてしまう。
「すご。俺、火ってすごい苦労しないとおこせないものだと思ってた」
「魔具の一種ね。魔力があれば多分誰でも使えると思う。もうすぐ昼だけど、遅めの朝飯にするからとりあえず外で顔洗っといでよ。桶に水張ってあるから」
タオルを投げて寄越される。指示に従って外に出ると、軒下に水が張られた桶が置いてあった。上を見ると、なるほど、開けた木々の隙間から見える太陽は、すでに真上に近いところに位置していた。相当眠っていたようだ。
(まぁでも……あんなことがあったからなぁ……)
つい、昨夜の出来事に想いを馳せてしまい、再び顔に熱が集まる。起きてから赤面しかしていないが、これは不可抗力だと思う。毒のせいとはいえ出会って数時間の人間に尻を弄られ、善がり、最終的に自ら抱きしめたのだ。思い返すだけで頭を抱えたくなる有様だが、最後に抱きしめ返された時のふわふわした高揚感と心地良さがやけに鮮明に記憶に残っているのだ。それが恥ずかしさに輪をかけていた。トルテさん視点でも、介抱しているだけの男にあんなふうに抱きつかれるなんて思ってもいなかっただろうし、引かれていてもおかしくない。
(よし、忘れよう)
あれは介抱だった。そう割り切らないと、最後の心地良さを再び求めてしまいそうだ。俺は煩悩を振り切るように勢いよく顔を洗うと、乱暴に拭って家の中に戻った。
調理台で何やら作っているトルテさんはチラリと俺を一瞥すると濡れたタオルの置き場所だけ指定して、また調理台に視線を戻す。朝食の香りに空腹を刺激されながら、指定通りの場所にタオルを置いて、食卓に腰掛けた。そうすると自然と調理するトルテさんの背中が視界に入ってくる。調理のためか、ボブヘアーは後ろでちょこんと一つにまとめられていた。柔らかな金髪と黒い衣服に挟まれた白い首筋のコントラストが眩しくて、目を逸らす。そんなことをしているうちに、目の前に昨日と同じ器が置かれた。
「どーぞ。おんなじオートミールだけど、味付けは変えた」
「あ、ありがとう。いただきます」
昨夜と同じく湯気を立てるオートミールを口に運ぶ。昨日より少しだけスパイシーに味つけられたそれは、変わらず美味しくて、あっという間に器は空になった。顔を上げると、こちらも昨日と変わらず、トルテさんはまだ食べている。昨夜と違う結ばれたままの髪が何故だか妙に落ち着かなかった。
「弐十くんは、この後どうするの。まだ休んでても良いし、もう帰るなら、出口まで案内するけど」
オートミールを頬張ったトルテさんに聞かれて、少し思案する。消したい記憶はあるけれど、体調は万全だ。もう休む必要はないし、一度受けた依頼の破棄もしたいから、ギルドには近々戻らないといけない。でも、こんなにお世話になったトルテさんに、何もお礼をしないままこの場を去るのも違う気がした。何より、このまま帰ってしまったら、多分トルテさんと2度と会えない気がする。出会って1日しか経っていない相手ではあるが、なんとなく、それは嫌だった。
「……トルテさんは?」
「俺?街まで買い出しに行く予定だけど」
質問に質問で返されたことに対して怒るでもなく、トルテさんは最後の一口を口に運びながら答えてくれる。優しい。そして買い出し。とてもいいことを聞いた気がする。
「じゃあ、買い出し、手伝わせてよ。色々……お世話になったお礼、てことで。一応冒険者だから、街までの護衛くらいにはなると思うし、荷物持ちにもなるよ」
食べ終わり、律儀に手を合わせて”ごちそうさま”をしたトルテさんは、俺と2人分の食器を片付けながら、チラリと外を確認する。
「いいけど……今から買い出し行くと、帰ってくるの夕方なんぜ?お前帰れなくなるけど大丈夫?また泊まんの?」
そうだ。もう昼近いのだ。トルテさんの言う”街”がここからどのくらいの距離かは分からないけれど、最初に俺がここに来た時に通った街だとしたら、帰宅が夕方になるのは間違いないだろう。そうしたら、また一晩お世話にならなければならない。お礼のつもりの申し出が、さらにトルテさんに手間をかけることになってしまう。でも何かお礼はしたい。あいにく日銭を稼いで生きている冒険者なので、お礼として差し出せる金品は持ち合わせていない。
ぐるぐると考えていたら、トルテさんがくすくすと笑い出した。
「ごめん、ちょっと意地悪言ったわ。買い出し付き合ってくれんなら助かる。今日も泊まっていきなよ。いい加減毎日の1人飯にも飽きてたところだしね。先準備してて」
昨日に比べて揶揄われる頻度が増えた気がする。少し悔しいような、距離が縮まったようで嬉しいような、そんな複雑な気持ちで、出かける身支度をするのであった。
◇◇◇
トルテさんの案内で森を出発し、街までの道を並んで歩く。途中何かモンスターと遭遇でもすれば護衛らしいこともできたのだけれど、そんなこともなく、雑談をしているうちに気付いたら街に着いてしまった。
「買い出し、って何買うの?」
「んー?色々。とりあえず今日の夕飯は確保したいかな」
そう言いながら、喧騒と人に満ちた昼の市場を、トルテさんは慣れた足取りで歩いて買い物を済ませていく。
一方、普段はギルドと依頼地と自分の寝床、料理屋に行く程度で、市場なんて数えるほどしか来たことのない俺は、その人の多さに呑まれかけていた。少しよそ見をしただけで誰かと肩が触れそうになる。
荷物を受け取りながら、はぐれないようによろよろと後ろをついて回っていたら、少し呆れたような顔をしたトルテさんがこちらに手を伸ばしてきた。
「行くとこあと一個だけだから。はぐれないでよ」
「う、うん……」
トルテさんに手を引かれながら、最後の店を目指す。少し気恥ずかしく感じるのは、子供のように扱われたからなのか、それとも別の理由からか。
歩くたびにふわふわと揺れる金髪を見つめながら、変に意識していることが繋いだ手から伝わりませんように、と祈った。
◇◇◇
最後の店は薬屋のようだった。市場の大通りの端っこにこじんまりと構えられた店の軒先には何かの木の実と思わしきものが干されており、天幕の下に並べられた薬草からは薬草特有の青臭い香りが漂っている。奥には何やら液体が入った硝子瓶が並んでいるのが見えるから、調合済みの薬なども売っているのかもしれない。自然と離れた手に残る温もりが妙に名残惜しい。そんなふうに思った自分が急に気恥ずかしくなって、なんとなく手をポケットに隠した。木箱の上に並べられた、ぱっと見全く違いのわからない薬草たちを吟味しているトルテさんに合わせるように、俺も薬草に視線を落とす。
「治癒魔法があるのに、薬草買うんだね」
「まぁね。魔法も万能じゃないし。たまにお前みたいに迷い込んでくるやつって大体怪我してっから」
「……ふぅん」
過去に、俺の他にもいるんだ、助けられた人。トルテさんの優しさを感じる反面、俺以外の人にも手を差し伸べていると思うと、少し心の奥がモヤモヤした。
人命は大事だし、これでトルテさんが俺みたいなやつを見捨てる人だったら、俺もここにいないのでそこはトルテさんの優しさに感謝してもしきれないのだが、どうしても、胸の奥に何かがつかえるような感じがする。
そんな気持ちを紛らわせるために軒先の薬草から視線を逸らすと、店の奥から人影が現れた。先ほど中を見た時には気づかなかったが、どうやら先客がいたらしい。首から十字架が下がっているので教会関係者のようだ。邪魔にならないように少し避けると、その男は俺を一瞥したあと、何かに気づいたようでその場で目を見開いた。
「キルシュトルテ!?」
「あ?」
名前を呼ばれて顔を上げたトルテさんの表情が固まる。少なくとも、旧友との再会を喜んでいるような顔ではなかった。
「いやー久しぶり!」
「そうだな」
俺を押し退けて肩を叩く男の手を振り払い、トルテさんは商品に視線を戻す。どう見ても会話を続けようという態度ではないのに、馴れ馴れしい男は1人でぺちゃくちゃとトルテさんに話しかけ始める。
「教会抜けた、って聞いてびっくりしたんだよ。馬鹿だなーと思って。まだ悪魔とか言ってんの?ガキの頃から頑固だよなー、お前。『悪魔を見たとか嘘でしたすみませんでした』って素直に認めて教会戻れば、こんな貧相な護衛付けて街に来ることもないのに」
表面上は心配しているようで、腹の底では全く心配していない。むしろ面白がっている。言葉の節々から感じるトルテさんを小馬鹿にしたような空気に、反射的にポケットに入れた手を握りしめた。
「そうだね」
トルテさんは慣れた様子で商品から視線を外すことなく適当に受け流している。その様子が、さらに俺の心をざわつかせた。
「あ、そうだ、俺から司祭様に言ってやろうか?『キルシュトルテを教会に戻してやってほしい』って。流石にあれだけ悪魔とかなんとか言ってたら自分から戻りたいですとは言いにくいよな。俺、司祭様と仲良いからさ。取り持ってやるよ」
トルテさんが視線を合わせようとしないからか、周りをうろちょろしながら言葉を並べ立てるそいつに、いい加減限界で口を挟もうとした瞬間、トルテさんに目で制される。いいから、動くな。そんなふうに言われた気がしてグッと留まると、初めて男の方を向いたトルテさんははっきりと言い放った。
「お気遣いありがとね。お前が賄賂で司祭のお気に入りになってること、賄賂の収入源の違法行為含めて周りにバラしていいなら戻ってもいいぜ。あと、お前が馬鹿にした俺の護衛、見た目より全然強いから、そこんとこよろしく」
「ぐ……っ」
それまでニヤニヤしていたそいつは、トルテさんの言葉にわかりやすくイラついた様子を顔に出し、あとから俺に泣きついてきても知らないからな、などとこれ以上ないくらいの捨て台詞を吐いて去って行った。
「帰るよ」
男が走り去った先を呆然と見ていると、いつの間にか会計を済ませたらしいトルテさんに声をかけられる。
「う、うん」
曖昧に頷いて、トルテさんに続いた。行きと同じ道だけれど、空気は行きよりも重い。先ほど男の言葉が頭から離れなかった。一歩先を歩くトルテさんの表情は見えないが、恐らく彼は、俺が考えるよりも遥かに沢山の悪意の中で生きて来たのだろう。あの男は子供の頃のトルテさんを知っているような口ぶりだったのも気になる。近所に治癒魔法の適性がある人間がそう何人もいるとは考えにくいので、きっと子供の頃から教会で生活していたに違いない。孤児院を併設している教会もあるから、孤児としてそこで育ったのか、或いは治癒魔法の適性があると分かって親に売られたのか。
治癒魔法が使えるだけで安泰だと思っていた昨日の俺をぶん殴りたかった。少なくとも彼にとっては全然安泰な人生ではなかったはずだ。
何か彼に声をかけたい。安易に触れていい話題ではないのかもしれないけれど、俺から切り出さなければ、彼からはこの話題には触れてくれない気がした。
「……さっきみたいなの、よくあるの?」
たっぷり考えて、結局こんな直球の切り出し方である。我ながら頭を抱えたくなるが、他に思いつかなかったのだから仕方ない。
「まぁ、たまに」
トルテさんの返事は素っ気ない。嘘だな、と直感的に思った。
「……絡まれても、いつもあんな感じでやり過ごしてるの?」
「変に騒ぎになると面倒だからね」
それはまぁ、そうなのだろう。騒ぎになって衛兵でも来てしまったら余計に話がややこしくなる気がする。だからと言ってあの状況を見て見ぬふりはできない。
「……俺、もっと鍛えるよ」
「は?」
驚いたトルテさんが立ち止まって振り返る。俺も立ち止まって薄青の瞳を見据えた。
「そしたら、もう舐められないから、トルテさんも絡まれないと思う」
あの男も、俺が貧相だと言っていた。確かにお世辞にも屈強とは言い難い体格をしている自覚はある。逆に言えば、屈強な男が隣にいれば、怖気付いてトルテさんに絡みに来ないかもしれない。
「ちょっと、時間はかかると思うけど。ちゃんと、トルテさんの護衛として機能するようにするから」
「……」
トルテさんは何も言わない。薄青の瞳は何かを考えるように揺らぎ、たっぷり30秒ほど間が空いてから開いた口から飛び出したのは、俺が予想もしなかった言葉だった。
「……それ、俺を一生守ってくれる、っていうプロポーズ?」
プロポーズ?プロポーズってなんだ。プロポーズ……。
「……あっ!?」
意味を理解し、顔が熱くなる。トルテさんと一緒に過ごす時間があまりにも心地よくて、俺が一時的に転がり込んでいるだけの存在であることを忘れていた。確かにどう聞いても一生添い遂げる気がある奴のセリフでしかない。どうしよう。でも気持ちに嘘はない。
そこまで考えて、自分が無意識に”これから先”のことを当然のように思い描いていたことに気付く。
(ああ、そうか。俺、トルテさんが好きなんだな)
催淫毒というイレギュラーなことから始まった関係ではあるけれど。きっと催淫毒がなくても、結果は同じだったと思う。これを恋だと呼ぶんだとしたら、多分俺はとっくに手遅れだった。それこそ、無意識のうちに一生守りたいと思ってしまうくらいには。
「……うん。プロポーズ、で間違いない、かな。あっ、でもあの、トルテさんが嫌だったら全然断っていいし、断られたらこっそり護衛するだけなので本当にこっちには気を遣わず……!」
プロポーズになってしまったことを認めたものの、途中でトルテさんが他人からの好意なんて迷惑だと思っていたとしたらどうしようと急に不安になった。でも断られたからといってトルテさんを守るのは諦めたくなくて、あたふたと付け足すうちに、なんだかとんでもないことを口走った気がする。
案の定トルテさんはちょっとポカンとしたあと吹き出した。
「……っ、ふは、断ったらストーカーになるって断言されたプロポーズ、やばすぎ。流石弐十くんというか、面白いね、やっぱり」
ひとしきり笑って、笑いすぎたのか滲んだ涙を拭った彼は、くるりと俺に背を向けた。
「鍛えなくていいよ。今の弐十くんで十分」
そのまま足早に歩き出す。少なくとも、嫌だとは思われていないらしい。離れていく背中を慌てて追いかけた。
追いついて横並びになると、そっと手を握られる。なんだか気恥ずかしくて流れる沈黙の中、夕暮れに伸びる影法師だけがやたらと仲睦まじく歩いていた。
◇◇◇
買い出しから帰宅して、夕飯には市場で買ったパンとトルテさんが作った美味しいシチューを頬張って。それでもなんとなくぎこちない俺らは、昨夜と同じ問題に行き当たった。
「だから、俺はその辺で寝るからいいって!」
「嫌だ!トルテさんの家なんだからトルテさんが使って!」
一つしかないベッドをどっちが使うか問題である。
昨日は、俺が発熱していたのもあって、トルテさんのお言葉に甘えてベッドを使わせてもらった。でも今日は状況が違う。昨日の毒が嘘のようにピンピンしているのに、来客だから、みたいな理由でベッドを使わせてもらうのは嫌だった。
「俺はもう元気なんだって!昨日使わせてもらったし、トルテさんが使って、よ……!!」
「お前……、っ案外、強いね……!?」
「これでも、冒険者、だからね……っ!?」
昨日と同じように力ずくでベッドに転がされそうになるが、力の限り抵抗した。昨日は熱のせいで弱っていたが、本来俺は冒険者だ。流石に単純な力比べなら、俺に分がある。客観的に、大の男が2人ベッドの前で腕を引っ張りあっているのは、だいぶ頭を抱えたくなる構図であるが、こればっかりは譲れない。
何度か力比べを繰り返して、無理だと悟ったらしいトルテさんは小さくため息をつく。
「はぁ……わかったよ」
そう言ったくせにトルテさんはその場を動かない。
そして何かを逡巡するように視線を揺らし、露骨に俺から視線を逸らしたまま、こう付け加えた。
「……好きなやつを、床に転がしときたくないんだけど」
蚊の鳴くような小さな声であったが、やたらと鮮明に耳に届いて、温かいものが込み上げてくる。逸らされた瞳と赤い耳がいじらしくて、思わず俺が折れてしまいそうになるが、ここで折れるわけにはいかない。好きな人を床に転がしたくないのは俺だって同じだ。でもベッドは一つしかない。色々と考えをめぐらせた俺の中に一つの名案が浮かぶ。
「……一緒にベッドで寝ればいいんだ」
「……え?」
「だってそうじゃん。ベッドは1つしかないし……。だいぶ窮屈だと思うけど、俺は狭くても寝られるし、トルテさんがよければ、それが一番いいかなって」
これで狭いところでは寝られないと言われてしまったらまた振り出しに戻ってしまう。そうなったら、今度は俺が力ずくでトルテさんをベッドに転がすしかないかな。
そんなことを考えていたら、明らかに動揺したトルテさんの瞳が俺を見つめ返してくる。
「え、本気……?」
「うん。トルテさんが狭いのが嫌じゃなければ」
本気も何も、こうしないと埒が開かない。大袈裟ではなく、ベッドの譲り合いをしているうちに朝になっている、なんてことにもなりそうだ。
しかし何をそんなに迷っているのか、トルテさんにしては珍しくキョロキョロと瞳を彷徨わせ、何度も俺を見てくる。
「……狭いところで寝られない……?」
「いや、そうじゃないんだけど……まぁいいか……弐十くん頑固だもんな……」
結局俺の案が採用される形で、男2人、シングルサイズのベッドに並んだ。ちょっと狭いが、トルテさんも細身なので思ったより窮屈ではない。
「……おやすみ」
「おやすみ」
暗闇の中で、外の木々が風に揺れる音を聞きながら瞳を閉じる。隣から衣擦れの音がして、ベッドが軋んだ。トルテさんが寝返りを打ったらしい。その瞬間、ふわりとトルテさんの香りがして、一気に意識が覚醒した。
(……っ)
トルテさんと、同じベッドで寝ている。改めてその事実を実感し、そこで初めて、自分がいかにとんでもない提案をしたのかを理解した。理解してしまうと、突然感覚が研ぎ澄まされる。
狭いせいで肩に少しだけ触れているトルテさんの背中、すぐ近くで聞こえる呼吸、トルテさんの香り。慌ててトルテさんと逆方向に寝返りを打った。やばい。何が名案だ。全然名案ではない。眠れる気がしない。触れたい。触れてほしい。
はやる鼓動を抑えようと、自分の身体を抱き締めるようにしながらぎゅっと目を瞑っていたら、再度衣擦れの音がして今度はさっきより近くでベッドが軋む。と同時に、身体に腕が回されて、背中にトルテさんの体温を感じた。
「……ねぇ。自分の言ったこと、やばいって理解した?」
先ほどよりもトルテさんの吐息が近い。ぶわっと一気に熱が湧き上がってきて、必死にコクコクと頷いた。トルテさんが耳元で笑う気配がする。
「……そ。別に俺はこのまま寝てもいいんだけど……どうする?」
意地の悪い質問である。そんなの眠れるわけがない。ただでさえ、背中に感じる体温と耳元をくすぐる吐息に心臓が口から飛び出そうなのだ。俺は自分の身体を抱き込むようにしていた腕を解くと、そのまま身体に回されたトルテさんの腕に重ねた。骨ばった手の甲を撫でて、上から握るように指を絡める。背後で小さく息を呑む気配がして、トルテさんの腕が抜かれると同時に仰向けにされた。頬に触れる彼の髪が少しくすぐったい。
「……いいの?」
自分から意地悪く聞いてきたくせに。肝心なところで気弱な彼に思わず笑みがこぼれる。カーテンの隙間から薄く差し込む月光に照らされた彼の輪郭を両手で包んで、ゆっくりと引き寄せた。
「んむ……」
啄むように、何度も唇を重ねる。そのうちに、どちらからともなく舌を伸ばして、口付けが深くなる。絡めて、吸って、角度を変えてもう一度口付けて。唇同士が触れ合うたび、頭の芯がじんわりと痺れていく。ようやく唇を離した時にはお互いすっかり息が上がっていた。
「は……っ、随分、熱烈だね……」
「昨日は、あんまりできなかった、から……」
「……そ」
シャツの中に彼の手が滑り込んでくる。肌の感触を楽しむかのようにゆっくりと腹筋を撫でられ、ぴくりと身体が跳ねた。
「……っ、」
毒は抜けているはずなのに、彼の手が肌の上を滑るたびに昨日よりも身体が反応してしまう。胸の飾りを弾かれれば、反射的に腰が浮いた。
「気持ちいい?」
「わ、わかんな……、なんか、くすぐった、い……」
嘘である。気持ちいい。でもまだわずかに残る理性が、女の子のようにそこで感じることを認めたくなくて、わざとはぐらかした。快感を逃すように、枕元のシーツを握りしめる。
「ふぅん」
途端、シャツが捲り上げられ、少しザラついた温かいものが触れる。それがトルテさんの舌だと理解する前に思わず声が漏れた。
「……っ、ひ、ぁ……ッ」
片方は指で、もう片方は舌で。触れられるたびに、彼の柔らかな髪が肌に触れるのも相まって、甘い痺れが身体を支配する。昨日の暴力的な快感とは違い、じわじわと侵されていく快感はそれこそ遅効性の毒のようだ。下半身がずくりと重たくなるけれど、トルテさんは胸をいじるばかりで、それより先には進んでくれない。
「ん、く……っな、んでそこば、っか……ぁ」
「んー?昨日あんまりできなかったから」
なんだか、意地悪をされた気がする。自分はこんなにも快感に溺れさせられているのに、トルテさんは余裕そうなのが少し悔しくて、少しだけ膝を立ててトルテさんの下半身を押し上げてみた。
「ん……っ」
ぴくりとトルテさんの身体が揺れる。ちょっとした仕返し、くらいの気持ちだったけれど、トルテさんの鼻から抜けるような声と想像以上に硬く張り詰めた下半身に、俺の方が面食らってしまった。
そんな俺の心境を察しているのかいないのか、今度はトルテさん側から押し付けてくる。
「……っ」
「先に煽ったのは、弐十くんでしょ……」
「そ、だけど……、こんなだと思わなくて……っ」
服越しにでもわかる熱量の原因が自分にあると思うと、恥ずかしさと嬉しさで頭がおかしくなりそうだった。
「……煽った責任、取ってよ」
低く掠れた声と一緒に、腰骨のあたりに指先が触れる。そのまま下着ごとズボンを取り払われ、脚を肩に担がれた。小さく何かの栓を抜く音がして、昨日暴かれた後孔に、少し冷たい液体が塗り込められる。
「ん……っ」
昨日ほどの異物感はなく、むしろ昨日の快感を拾いにいくかのように勝手に腰が動いてしまう。そんな俺の動きを無視するかのように、トルテさんの指はその一点を避け、ナカを拡げるように動く。
その丁寧な動きがやたらと焦ったく感じられた。でもそれをトルテさんに言うにはまだ羞恥心が勝って、シーツを握りしめながらじわじわとした快感に耐える。
どのくらい耐えただろうか。小さく息を吐いた彼が指を引き抜き、脚を抱え上げ直す。
「いくよ」
ちゅ、と触れるだけのキスを額に落とされ、指よりも質量のあるモノが身体を割開いた。
「ん、は……ぁ、あっ!」
「……、きつ……痛くない?」
コクコクと頷く。丁寧に拡げられたお陰で全く痛くはないけれど、圧迫感がすごい。
(トルテさんが、俺のナカに、いる……)
思わず息を詰めていると、シーツを握りっぱなしだった片方の手に、トルテさんの手が添えられる。
「動いていい?」
いいよ、と言う代わりに自ら指を絡めた。しっかりと握り返され、トルテさんが動き出す。指では散々避けられたところを擦りながらギリギリまで抜いて、潰すように奥まで入れられて。
「ぁっ、ひ、あ……っ、あっ」
「……っく」
ナカを抉るトルテさんのモノと、繋がれた手から感じる体温と、ベッドが軋む音に合わせて時折聞こえるトルテさんの抑えきれない吐息。その全てが快感として頭の中で混ざり合い、溶けていく。
もっとトルテさんに包まれたくて、シーツに縋りっぱなしだったもう片方の手で彼の頭を引き寄せた。
「ん……っ、ふ、ぅ、ぁ……ッ」
引き寄せた彼に口付ける。絡めた舌越しに熱い吐息が混ざり――徐々に強くなる快感の波に、身体を震わせた。
「と、るてさ……っ、も、いっちゃ……っ」
「ん。俺も。一緒に、ね」
呼吸の合間に限界を訴えると、トルテさんの動きが早くなる。嬌声はキスに呑まれ、繋がれた手をしっかりと握りしめながら、甘い毒のような快楽を受け止めた。
「ん……」
身体の奥が熱い。
苦しいくらい満たされているのに、もっと触れていたいと思ってしまう。
ぐずぐずとトルテさんの肩口に額を押しつけると、抱き込む腕に少しだけ力が込められた。
「……甘えた」
呆れたみたいに笑う声が、どうしようもなく優しい。嬉しくて、また胸の奥がいっぱいになる。このままずっと離れたくない、なんて考えているうちに、意識はゆっくりと眠りへ沈んでいった。
◇◇◇
遠くに鳥の囀りが聞こえて、ゆっくりと意識が浮上する。瞼を持ち上げて、目の前に広がるトルテさんの顔に思わず息を呑んだ。
「……っ」
すぅすぅと規則的な寝息を立てて眠る彼は、まるで彫刻のようだ。朝陽を受けてキラキラと輝く金糸の髪が眩しい。ついその頬を撫でると、瞼が小さく震えて慌てて手を引っ込める。
「ん……、はよ」
「お、はよ」
頬に触れていたことがなんとなく気恥ずかしくて歯切れの悪い挨拶をしていたら、彼は、ふ、と悪戯っぽく微笑んだ。
「俺の顔、そんなに好き?」
「……っ!」
バレていた。恥ずかしすぎる。
キョロキョロと視線を迷わせ、それでもまだ柔らかく微笑み続ける彼に根負けした。
「……好き、デス……」
「そ」
満足そうに口元を緩めた彼は、俺を抱き込むように腕を回す。
「もう一寝入りしよ。どうせ今日は予定ないし……」
そう言いながら、すでに夢現なトルテさんにこちらからも腕を回した。
本当は、受けていた依頼の破棄をしにギルドに戻らなければならないのだが、そんなことに朝のこの幸せな時間を取られたくはなかった。
「うん……」
柔らかい日差しの中で、トルテさんの匂いに包まれながら、ゆっくりと微睡の中へ意識が落ちていくのであった。
コメント
1件
読み終えました……。もう、胸がいっぱいで言葉にならないです。弐十くんがトルテさんの過去とか優しさに触れるうちに、自然と「守りたい」「一緒にいたい」って思うところ、すごく綺麗でした。「好きなやつを床に転がしときたくない」ってトルテさんが言った瞬間、こっちまでドキドキしました。朝の微睡みの中で終わるラストも温かくて、ずっとこの世界に浸っていたい気持ちです。素敵な物語をありがとうございます🥀