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戻ってくれば、先程のフードの男が変わらず石に腰掛けていた。
「戻してきたよ」
フードの男「…すまんな、」
彼の後ろ姿は、フードも相まって真っ黒な人型。
俺と同じ七色の羽。
「君はさ、どこか行かなきゃ行けないとこないの?」
フードの男「…ない」
「…そっか、」
フードの男「お前こそ、いいのか?」
「うーん…戻りたくても戻れないかなw」
フードの男「送ってってやるよ」
「えっ、でも危ねぇよ、あそこ今ヤバいの分かるだろ?」
フードの男「…別に、向こうの世界に入っちゃえばいい話だ」
「簡単に言うけどさぁ…」
フードの男「こい」
「ねぇ」
立ち上がった彼に、ひとつ声をかける。
「どうしてそんなに優しくしてくれんの?」
フードの男「さっきも言っただろ。恩があるんだ。」
「……俺自身にしてどうするの、その人にしなきゃ。」
フードの男「…そりゃ
「っ、!?」
大きな怒鳴り声が彼の言葉を止めた。
「っ、なんだ…?」
フードの男「…とりあえず行ってみるか」
「俺も行く」
フードの男「…勝手にしろ」
彼が一つ地をければ
生えていた草がなびいて土が舞う。
月に輝く透明な宝石が放つ反射
美しい直前を描き俺に突き刺さる。
何となく、懐かしいと感じる夜の香り
そんな感傷に包まれる俺に轟音は重ねて俺に呼びかける。
たすけて!
おねがい!
いたい、いたいよ!
死にたくない!
そんな声が、轟音からかすかに漏れ出る。
「…っ、いかなきゃ、」
フードの男「…こりゃ酷いな、」
そう呟く彼の隣に浮いた時
目に入ったのは死体の海
フードの男「…もう、喧嘩を通り越して戦争だな…」
「歴史書にも乗るレベルだな」
フードの男「このままじゃお前は危ない、急いで戻るぞ」
「…俺はもう戻れない。ここまで酷くなってしまっては…」
フードの男「…知り合いの所にでも行け。ここは…お前はここにいちゃダメだ。」
「…でも…」
フードの男「ッ!危ない!」
「っぇ、、?」
掴まれた手、温もりが肌に伝う頃。
俺の背に、炎が燃えているような、熱い感覚
振り返ったと同時。
一気に後ろに手を引かれ、俺の和の衣が波打つ。
…大砲だ
唸るような爆発音
遠くで弾ける真っ赤な果実
「っ、!」
俺を守ったその人は、マントが少し燃えたほどで済んだみたいだ。
「っ、ご、ごめん大丈夫…っ、?」
フードの男「…気にすんな」
「…!」
少し見てる範囲が広がったのか。
彼の頬には、今ので傷ついたであろうかすり傷。
いや、抉り傷の方が正解だろう。
血が、滴っている。
「…!今すぐ手当をしなきゃ…」
フードの男「俺に構うな。」
「ダメだ…俺のせいなんだから手当させてくれ」
フードの男「いいって!」
「俺は医者だ!」
フードの男「…!」
「…話したいことも聞きたいことも山ほどある。」
フードの男「…頼む。頼むから放っておいてくれよ。」
「…初対面で悪いけど、そこまで言うなら無理やりにでもやらせてもらうよ」
フードの男「初対面…初対面か、関係ないよ。」
俺が掴んでいる腕から、段々と冷気が溢れ出る
少し、握る力を強めていく。
フードの男「…ッ、」
その度、血の溢れる量も増えていく。
段々マントの面積が狭まっていく。
黒から、赤へ変わっていく。
段々弱ってきた彼。
冷や汗が、地面の方へ落下していく。
フードの男「……っ、」
力も無くなってきた彼を引っ張り、地面に下ろせば、地べたに座り込んでしまった。
「…とりあえず、消毒とガーゼ…」
彼のフードから見える頬に、処置をしていく。
終わる頃には、彼の体力も回復していた。
「…はい、ほんとごめん…」
フードの男「…俺がやった事なのに。」
「…でも、そのせいで怪我させたんだもん」
彼は立ち上がって、歩いていく。
「…なんか、君を見てると昔仲良かった人思い出すんだよね、w」
フードの男「…」
木々からこぼれる月の光
彼の後ろ姿にも、月の光が注がれる。
そんな彼は、ゆっくりフードに手をかける。
そうして、一秒一秒経っていく。
その度に、茶色い髪が現れていく。
艶やかな、ダークブラウンの髪が風によって揺れている。
美しいその髪が、ゆっくり後ろを向いていく。
「……ッ、!!」
彼の顔が横を向いた時
濃い紫の瞳が、小さな唇が、白い肌が
そうして、そのアメジストが俺を捉えた時
「…ッぁ…ぇ………」
「……す、すまい……る…?」
sm「…久しぶりだな、きりやん」
気が付かなかった、声も低くなっていて、顔も見えなかった。
「まさか…気づいてた…の、……」
sm「あぁ、気づいてたさ」
なんで、
なんで、……
すぐ言わなかったんだ…?
俺は今すぐにでも抱きつきたいくらい、嬉しさを感じているのに、
そんな気持ちも、彼の圧によって押されていく。
でも、そんな彼の頬を傷つけてしまった、
そんな旧友に、気を使わせてしまった、
じゃあ、恩っていうのは…
でも、…
sm「…きりやん、」
彼は俺に向き直して、静かに言った。
sm「…どうだ、向こうの世界は」
「…お前、その前に言うことあるだろ…?」
sm「…」
俺は、何故か泣いていた。
会えた嬉しさ、でも何故か悲しくて
混沌とした感情の結果、泣くということしかできなくて
「…なんで、なんで!」
「なんで今まで
俺に正体を明かさなかったんだッ!!」
気づけば、彼の胸ぐらを掴んで叫んでいた。
「知っていれば…ッ知ってりゃ…もっと…もっと……ッ、!」
守ってやれたのに…
sm「…もう、守られるほど弱くは無い…」
そう呟いて、俺の手を解いた。
sm「……明かすべきじゃない、そう思ったんだよ。他の奴もいた。それに、本当は会えていなかった。会ってはいけなかったんだ」
sm「…それに、今はゆっくり話せる状態じゃない。これを、どうにかしなきゃいけない。」
そう言って、彼は空を見上げた
ゆっくり、フードのマントを脱ぎながら。
そうれば、ベストにスーツという、闇の世界ならではの律儀な格好をした彼が目に入る。
「…ちゃんとしてんじゃん」
sm「そりゃどうも」
sm「ここは境界からずーっと離れているから害はない。けど、もう時期攻められるだろう。 」
「…俺にもできることあるかな」
sm「…当たり前だ」
そう言って、俺の頬をぎゅっとつねる。
sm「助けてやったんだから、力貸してくれよ」
そう言い、俺に彼が来ていたフード付きのマントを投げ、子供のようにニヤッと笑った。
「……w、おう、」
やっぱり、彼は俺の扱いが得意だ。
滅多にしないのに、時々見せる幼い姿。
「どっかに願いの石みたいなのあるよね」
sm「あぁ、それをどうにかして…… 」
ただ、その石は恐らく色んな人の死因にもなる。
つまり、止めようとした人々は過激派の人達によって殺される、ということ。
「…よし、一か八か行ってみよう。」
sm「そうだな、なんとかなるだろう」
彼がくれた衣服を着て、彼の後に付いて行った。