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その後も昼に起きて、夜までギター練習をして、夜ご飯を父と母と食べて
夜、真新宿で弾き語りをして、終電間際で七幡山へ帰り
いつものファミレスでいつものメンバーと会い、くだらない話で盛り上がり
作詞作曲が進まなかったり、運利月(ウリツ)さんのタバコに付き合い
公園へ行ったり、たまに朝の匂いに苦しくなったり
「NSSP」さんの動画に癒されたり、そんな日々を過ごしていた。そんなある日の昼間
李冒艿(りもに)「今日遊べる人ー」
という珍しいLIMEが来た。
夕雪星(ゆせせ)「どしたんすか」
夢芽灯(ゆめあ)「たしかに」
夕雪星(ゆせせ)「うりさんは?」
李冒艿(りもに)「うりはいるよ。もちろん。 でも、みんなと遊んだことないからせっかくなら?」
夢芽灯(ゆめあ)「たしかに。ちゃんと遊んだことはないか」
紗歌(サカ)「ないね」
夕雪星(ゆせせ)「今日はバイトないからいけるっすけど」
李冒艿(りもに)「お!ゆせせーいいねぇ〜。他は?さかとかバイトしてないんだし暇でしょ」
夕雪星(ゆせせ)「暇ww」
紗歌(サカ)「失礼な。毎日暇だけど毎回暇じゃないんじゃ」
夢芽灯(ゆめあ)「右に同じく」
夕雪星(ゆせせ)「夢追い人だからね。気持ちはわかる」
李冒艿(りもに)「じゃ2人は来れないのね」
紗歌(サカ)「行けないとは言ってない」
夢芽灯(ゆめあ)「右に同じく」
李冒艿(りもに)「なんじゃい!じゃ、5時にファミレス集合」
紗歌(サカ)「ガスイドかい。りもさん家(ち)かと思った」
夢芽灯(ゆめあ)「大丈夫ですかね。混んでないですかね」
夕雪星(ゆせせ)「たしかに。夜しか行ったことないからな。最近」
弾きたい曲のコードを確認しながらスマホ画面も確認する。
李冒艿(りもに)「前も言ったけど、激狭だから」
夕雪星(ゆせせ)「その言い様だと部屋は片付けたんですね」
運利月(ウリツ)「エスパーかよ」
夢芽灯(ゆめあ)「あ、うりさん出てきた」
紗歌(サカ)「じゃ、オッケーってことでー。ファミレス前行くんでりもさん案内してー」
夢芽灯(ゆめあ)「お願いしまーす」
夕雪星(ゆせせ)「おなしゃーす」
李冒艿(りもに)「なんか決まってる…。じゃ変わらず5時にファミレス前集合」
夕雪星(ゆせせ)「オーライ」
夢芽灯(ゆめあ)イケメンのキャラクターが「OK!!」と言っているスタンプ。
私も「おっけ」と打ち込んで予測で出てきた
ギターを持った女の子が「Yeah!!」と言っているスタンプを送った。
16時頃までギターの練習をして、着替えて財布とスマホだけを持って家を出た。母には
「今日予定入ったから夜ご飯いらない」
とだけLIMEしといた。ファミレス前に着くともう夢芽灯(ゆめあ)ちゃんがいた。
「おっすー」
「おっすっすー」
夢芽灯(ゆめあ)ちゃんともだいぶ仲良くなったものだ。
「珍しいお誘いでしたね」
「だねぇ〜。ま、考えたら私たち、ファミレスで会うだけだったもんね」
「それですね。りもさん家(ち)行くの楽しみー」
「わかる。てか人ん家(ち)行くの何年振りかな〜」
「たしかに。私も…あ、最後いつかもわかんないや」
「夕雪星(ゆせせ)ん家(ち)は?行ったことないの?」
「あぁ。私も夕雪星(ゆせせ)ちゃんも実家なので」
「なるほどね。ま、そーゆー私も実家ですが」
「そうなんですね」
「だから溜まり場として機能するのはりもさんうりさん家(ち)くらい」
「機能するって」
夢芽灯(ゆめあ)ちゃんが笑う。そんな話をしていると夕雪星(ゆせせ)が合流し
最後に李冒艿(りもに)さんが合流した。
「お2人とも今日バイトないんすか?」
「あぁ、私とうりがバイトするカラオケ店改装入ることになって、1週間ほどお休みなんです」
「ほおぉ〜」
「今日なにするんすか?」
「ゲームでも?」
「なんのゲームですか?」
「まあ5人でできるのっていったらぁ〜。スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)?」
「お、スパファミかぁ〜いいですね」
「やってた?」
と言われて父、弟、妹とやった記憶が呼び起こされ、少し苦しくなる。
「私は少し」
「私はーちょっとやったことあるかなーくらいですね。ファッションとかメイクとかで時間割いてたんで」
「夕雪星(ゆせせ)はぽいわ」
「紗歌(サカ)姉は?」
「私はまあまあ。強かった気がする」
「ほお?私に勝てるかな?」
「りもさんつえーんすか?」
「つえーほうだと思うよ?」
「うりさんは?」
「あぁ、うりは弱い。はっきり弱い。あやつはゲームからっきしだね。パズルゲームさせたら強いけど」
「へぇ〜」
「ふにふにあるじゃん。パズルゲームの」
「はいはい」
「あれ最初一緒にやったとき、2回目までくらいはボコボコにしてたんだけど
要領掴んだ彼奴(きゃつ)はみるみるうちに腕を上げて私なんて足元にも及ばないレベルに…」
「うりさんカッケー」
「なんかタバコ吸いながら無感情にやってるイメージです」
「その1枚絵ほしいわ」
そんな話をしながら歩いていると
失礼だが見るからに家賃の安そうなアパートの敷地へ入っていく。
2階建アパートの1階の真ん中ら辺の部屋のドアを開く李冒艿(りもに)さん。
「はい、どーぞー。ようこそ我が家へ」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔しまーす」
「お邪魔しまーす」
言っては悪いが狭い玄関に靴が並ぶ。玄関入るとすぐ左手にお風呂場があり、その隣には恐らくトイレ。
そして奥へ進むとリビングにキッチンがあった。運利月(ウリツ)さんはベランダのスライドドアを開けて
足だけを外に出した状態でタバコを吸っていた。背中姿の運利月(ウリツ)さんが振り向く。
「おぉ〜ほんとに来た」
運利月(ウリツ)さんはベランダの灰皿にタバコを押し付けて捨てた。
「想像より全然広い」
「しかも想像より全然綺麗」
「たしかに」
「片付けたからね」
「そっか。2人ですもんね。あ、もっと狭いの想像してた」
「あぁ、なるほどね。そうね。1人暮らし用より少しは広いかも」
「マンションとかじゃなくてオートロックとかもないから家賃安いし」
「でも駅へのアクセスまあまあじゃないですか?」
「まあぁ〜…全然不便ではないけど近くはないから」
「あと陽当たりもあんま良くないし」
「そうそう。借りるときに不動産の人とまあまあ話し合ってさ。そしたら陽当たりってマジ重要らしい」
「売買だと100万単位で変わるらしいよ」
「マジっすか」
「だから、まあ。陽当たりとか贅沢言ってらんないし、家賃安いこの部屋にしたってわけ」
「へぇ〜」
「ま、座って座って」
「うーす」
「あざまーす」
「ありがとうございます」
テレビの前のローテーブルを囲んで座る。
ラグが敷いてあるとはいえ、人の家の床に座るのは少しだけ抵抗があった。
「りんごアレルギーの人ー」
誰も手を挙げない。
「よし。じゃ、りんごジュースで」
テレビ前を見る。HDDレコーダーにサティスフィーもあった。
その下の棚にはサティスフィーのソフトが並んでいた。
「あ、金太郎電鉄」
「ほんとだ。最新版」
「でも金鉄長いからなぁ〜」
「それは長い。あと4人だし」
と言いながら李冒艿(りもに)さんがりんごジュースを入れたグラスをローテーブルに置いてくれた。
「あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
「どいたまー。さてスパファミやりますか」
と言いながら李冒艿(りもに)さんはテレビに近づく。サティスフィーを取ってソフトを変えて
「あ、コントローラー3つしかないや」
とこちらを見て言った。
「なんやねーん」
「うちの持ってくればよかった」
「たしかに。うちのも持ってくれば5個だったのにね」
「でもなぜに3つ?」
「あぁ、たまに同期の芸人とかが来て遊ぶから」
「なるほど」
納得したところでとりあえず3人で対戦しようということになった。
「あ、待って。実況撮っていい?」
「実況?」
すると李冒艿(りもに)さんはパソコンを取り出し作業を進める。
「いいとは言ってないっすけどね」
「え、夕雪星(ゆせせ)声出しNGな人?」
「いや、いいんだけど」
「いいんかーい。なら進めまーす」
「え、うりさん。なんかMyPipeでもやってんすか?」
「うん。やってる」
「やってるんだ?」
「知らんかった」
「言ってないからね」
「今芸人は大概やってるよMyPipe」
「MyPipeで人気出たらバイトしなくて済むし、ネタも見てもらえるからね」
「なるほど」
「ま、でもたまにね、「元芸人」って肩書きで
怪談とか心霊系MyPiperになって、あの手相の芸人さん知ってる?」
「あ、知ってますよ」
「知ってる知ってる」
夕雪星(ゆせせ)もうんうん頷く。
「あの方、今MyPipeチャンネルめっちゃ人気なんだけど、あ、怪談のチャンネルね。
そこの話題の心霊系MyPiperとか怪談話してる人をゲストで呼んでーみたいなのあるんだけど
そこに「元芸人」ってので後輩面で出たりするんだよ。あれあんま好きじゃないんだよね」
「わかる」
パソコンをいじっている李冒艿(りもに)さんが振り返る。
「なんか芸人目指してくるんじゃなくて「元芸人」って肩書きが欲しくてみたいなのも多い気がする」
「でもさーあれだよね。極端じゃない?若手でもめっちゃ「芸人」を頑張るって子たちと
「元芸人」って肩書きでMyPipeで人気出して稼ごうとしてるやつ」
「わかったからりもさん進めて」
「あーはいはい」
その後、運利月(ウリツ)さんがベランダへのスライドドアを開けて
タバコを吸う隣に夕雪星(ゆせせ)が座って2人で話をしている中、録画の準備が完了して
「挨拶とか説明とかは後録りするからとりあえずやろ。あ、別に名前とかピーかけなくていいよね?」
「別に私はいいですよ」
「私も大丈夫です」
「おっし!ほんならいくでぇ〜」
李冒艿(りもに)さん、夢芽灯(ゆめあ)ちゃん、私がキャラクターを選択して
「スリー…トゥー…ワーン…」
とカウントが始まって
「ファイト!」
という合図でバトルが始まった。ひさしぶりに握ったコントローラー。
サティスフィー本体の左右についているコントローラーを取って使う。
このガッツリ1つのコントローラーという感じではなく、右、左に1つずつ持つこの感じ。
弟は負けず嫌いでちゃんとしたコントローラーを買ってもらい、それを使っていた。
弟は友達ともやっていたこともあって強かった。
父と弟と妹と私で対戦したときも、父や妹には勝てたが弟にはあまり勝てなかった。
両膝の上にそれぞれ、右膝の上には右手を、左膝の上には左手を置いてコントローラーをカチャカチャする。
李冒艿(りもに)さんと夢芽灯(ゆめあ)ちゃんのダメージが増えていく。
「待って!紗歌(サカ)強くね?」
「紗歌(サカ)さんだけダメージ低い!」
「ゆめちゃん!協定組も」
「ですね!」
「ま、ドヤ顔王子に腕磨かれたので」
私に勝った後の弟のドヤ顔が浮かぶ。そのドヤ顔に腹が立ち
「待って。もう1回。今のは運が悪かった」
と私も少なからず負けず嫌いなところがあり、弟に頼むと
「別にいいけど?」
と小生意気な言い方で言われて何回も挑んだのを思い出す。
「ゲームセット!」
私の勝ち。
「待って。紗歌(サカ)強すぎ」
「ボコボコのボコですよ」
「ハンディキャップマッチやります?」
「おぉ?余裕かましてるねぇ〜」
「ハンディキャップマッチいってみます?」
「いいよ?」
その後ハンディキャップマッチをすることになった。
「ゲームセット!」
「ドヤ顔腹立つぅ〜」
弟得意のドヤ顔が感染ったらしい。嬉しいような、寂しいような。
「夕雪星(ゆせせ)〜、紗歌(サカ)と交たーい。この人強すぎー」
「へ〜い」
「あ、じゃあうりさん私と交代してください」
「ん?いいよ」
夢芽灯(ゆめあ)ちゃんと私は運利月(ウリツ)さんと夕雪星(ゆせせ)にコントローラーを渡す。
「あ、コンビニ行ってきますけどなんかあります?」
「あ、じゃあ私も行きます」
「お、そお?」
「あ、じゃあ私チョコミントのアイス」
「私はーレモンティー」
「ココティーでいいっすよね?」
「うぬ。あとタバコ」
「それは自分で買ってください。買い方もわからんし」
「私はなんかポテイチ買ってきて」
「なんかって何味でもいいってことですよね?」
「うん。あ!新味あったらそれで」
「飲み物はいいんですね?」
「あ、じゃあ四ツ葉サイダー」
「へいへい」
と言いながら夢芽灯(ゆめあ)ちゃんと玄関へ行って
ぎゅうぎゅうに靴が詰まっている中から自分たちの靴を履き、外へ出た。コンビニへ向かう。
近くのヘブン イン ヘブンへ入った。ヘブン イン ヘブン♫天にも昇る気ぶ〜ん♫
頼まれたチョコミントアイス、心の紅茶、愛称ココティーのレモンティーと
四ツ葉サイダー、そこへ夢芽灯(ゆめあ)ちゃんの飲みたいソラ・オーラと
私の飲みたいオレンジジュース、そしてお菓子コーナーへ行き、ポテイチを眺める。
王道のうすしお、のり塩、コンソメパンチがあり
ポテイチではないがピザの味があったり、筒状のものもあった。
「お、新発売って書いてある。これでいいか」
「いいんじゃないんですか?」
ということでカゴにそのポテイチを入れてレジへ。無職貧乏夢追いバカの所持金でも払えた。
「あ、紗歌(サカ)さん、これ」
夢芽灯(ゆめあ)ちゃんが私に175円を手渡してくれる。
「すいませんねぇ〜これくらい奢ってあげる懐の深さがほしいんですが」
「それは歌手として売れたらでお願いします」
「あざっす」
175円をポケットにしまう。
「ゆめちゃんはさー」
「はい?」
「どんな話を描いてんの?」
夢芽灯(ゆめあ)ちゃんと2人になったことがないので聞いてみた。
「マンガ的なやつですか?」
「うん。うん?マンガ的なやつ?うん。まあ、それかな?」
「ギャグ?…ギャグっていったらギャグマンガに失礼か」
「失礼って」
「ギャグマンガ的なセンスはないんです。
でもなんか、こうクスッっと笑えるような感じの描いてます。…日常コメディー?」
「へぇ〜。だからファミレスとかで人間観察してるんだ?」
「そーですね。半分は」
「もう半分は?」
「家だと集中できないんで」
「わかるー」
「やっぱり?」
「テレビとか見ちゃうしね」
「そうなんです。でもファミレスでもスマホで動画見ちゃいますけどね」
「あぁ〜…まあ、わからんでもない」
「そこは共感薄めですね」
「いやさ、スマホの楽器アプリってかギターのアプリがあるんだけど
そのギターの音を確認しながらメロディー作ったりしてるから、あんまスマホで動画ってタイミングがない」
「なるほどですね」
「…そっか。ゆめちゃん、作業タブレットだからか」
「そうなんです。あと資料資料ーって調べて脱線とか」
「うわぁ〜誘惑のオンパレードだ」
「です」
そんな話をしながら暗くなり
街灯と人々が暮らす家から漏れ出る明かりで照らされた街を夢芽灯(ゆめあ)ちゃんと歩く。
「ただいまー」
「戻りましたー」
狭い玄関で靴を脱ぐ。
「おかえりー」
「おかえりー」
「おつかれーい」
人から「おかえり」と言われたのはいつ振りだろう。朝帰っているから自業自得なのだが
ひさしぶりの「おかえり」に妙に胸がこそばゆく、嬉しい気持ちになる。
「なにニヤけてんの紗歌(さか)姉」
「ん?いや、なんかいいなぁ〜って」
みんなの顔を見る。なんかいい。レジ袋をローテーブルの上に置く。
「後で料金徴収しますので」
「え〜紗歌(サカ)姉の奢りじゃないんすかー」
「バイトもしてない夢追いニートにそんな余裕ない」
「バイトすりゃええんに」
「死ぬわ」
それぞれがガサゴソとレジ袋の中お漁る。
「あ、これ」
李冒艿(りもに)さんがレジ袋からポテイチを取り出した。
「新発売」
「これ食べたわー」
新発売と書かれた「濃厚香るチーズ味」。
「いや、新発売には違わないから」
「たしかに?」
その後も夕雪星(ゆせせ)はチョコミントアイスを食べたり
そのアイスを貰って「歯磨き粉じゃん」と李冒艿(りもに)さんが言い
ちょっとした論争が起きたり、ポテイチを食べて「チーズくせー」と騒いだり
バラエティー番組を見て笑ったりした。
「ファミレス行かん?お腹減った」
「いいっすね」
「でも今の時間から行って大丈夫です?」
まだ時間は21時過ぎ。ドラマが始まったばかり。
「このドラマ見終わってから行きます?」
「いや、この後10時からのドラマも見てから行きましょう」
ということでみんな22時のドラマが終わるまでポテイチでお腹を繋いだ。
なんだかんだ言いながらみんなドラマを楽しんだ。
「みんなー出るよー」
「「はぁ〜い」」
「家族か」
まるで家族のように仲良く一緒の家からファミレスへ向かった。