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この想いが貴方に届くように

この想いが貴方に届くように

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この想いが貴方に届くように

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2023年07月13日

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──あらすじ──

中学1年生の夏、友情はいじめによって引き裂かれた。

雨宮 唯羽(あまみや ゆいは)と仲が良く、幼馴染だった。

なのに、唯羽はいじめっ子の味方をした。

はじめての親友に裏切られた八雲 恋乃羽(やぐも このは)。

そんな恋乃羽は、親友にひどい言葉を投げつける。

けれど、実は唯羽がいじめっ子の方にいたのは、恋乃羽を守るためだった。

それを知った恋乃羽はある行動に出る。

複雑な友情だけれど、真っ直ぐな友情ストーリー。


この想いが貴方に届くように

はぁ、今日もだ。

下駄箱を開いてため息をつく。

私は、中学1年生の夏からいじめられている。

下駄箱に入っていた紙くずの中身を見ずに、近くのゴミ箱に放り投げた。

教室に入ると、コソコソと囁く声が聞こえた。

多分、私への悪口だろう。

何も考えず、うつ向いたまま席についた。

机の上が自然と目に入る。

ペンで、暴言が殴り書かれていた。

その文字を見たら、舌打ちをしたくなった。

机の中も、紙くずで埋まっていた。

少しだけ顔をあげると、唯羽と目があった。

心配そうな顔をしていた。

けど、なぜか唯羽はパッと視線をそらした。

どうしたんだろう、と思ったとき

「ねーねー恋乃羽〜」

と、いじめっ子の声がした。

ゆっくり振り向くと、クスクスと笑っている女子が4人いた。

「手伝って欲しいことがあってぇー」

クスクスと笑いながら、私の肩に手をポンッと置いた。

「4人いるなら、手伝わなくてもいいんじゃない?」

そう言うと、いじめっ子は、

「は?なに?偉そうに。」

と言って、そのまま私を連れ去った。


「なんなの?さっきの態度!!」

いじめっ子のリーダーが、私をバンッと壁に押しつけた。

「そんな生意気な恋乃羽ちゃんにお知らせでーす!!」

いじめっ子がニコッと笑った。

「雨宮 唯羽ちゃんが、私たちのチームに入りました〜!!」

その瞬間、心臓がドクッと嫌な音を鳴らした。

いじめっ子の後ろから、唯羽が姿を現した。

唯羽は、うつ向いていた。

「ゆい、は…?」

「雨宮 唯羽ちゃんは、朝の紙くずをやったんだよ〜」

私は焦りや、怒りが止まらなかった。

「唯羽…友達、だよね…?」

私は震えながら唯羽に言った。

けれど唯羽は思いもよらない言葉を放った。

「友達じゃないよっ!!!」

ハッキリと、目を見て言われた。

もうだめ。

死にたい。

唯一の友達にも裏切られた。

私はその場に崩れ落ちた。

いじめっ子はクスクスと笑いながら去っていった。


お昼休みのチャイムが鳴った。

いつかな、唯羽に何かしたかな。

そんなことをグルグル考えていたときだった。

「八雲さんっ!!!」

聞いたことのある男の子の声がした。

「こんなところにいたんですか…」

「仲柳くん…」

仲柳くんは、唯羽の幼馴染。

仲柳くんは、私の隣に腰を降ろした。

「知らないと思います。」

仲柳くんが、急にそんなことを言った。

「僕、先月から唯羽と付き合ってるんです。」

「え…」

喜べる気力もなかった。

唯羽はなんで、こんなにも大切な事を教えてくれなかったんだろう。

あ、友達じゃないからか。

私が一方的に友達だと思っていただけだった。

「僕、唯羽の事、全部知ってます。だから、八雲さんに伝えます。」

真剣な顔で、空を見上げながら言った。

「唯羽は、本当のことを言うのが苦手なんです。伝えられたとしても、言葉

が足りなくて相手に伝わらない事が多いんです。」

知らなかった…。

唯羽は、自分の意見をしっかり言う子だったから。

「だから、まだ八雲さんに伝えきれてないことがあるんです。」

仲柳くんには分かるんだ。

小さい頃から一緒にいる唯羽の事を。

「今から、唯羽に会いに行ってあげてください。2人きりならきっと、唯羽も伝

えたい事を伝えられます。」


仲柳くん、ありがとう!!

仲柳くんがいなかったら、唯羽と一緒にいられなくなったかも。


「唯羽!!!」

私は、勢いよく屋上のドアを開けた。

「恋乃羽…?」

唯羽はポロポロと涙を流していた。

私は唯羽に思いっきり抱きついた。

「唯羽、ごめんね。唯羽の言いたいこと、言って?伝えたいことは遠慮なく言

って欲しいの。」

唯羽は、私を抱きしめ返した。

その手は少し震えてるような気がした。

「ごめんね。友達じゃないなんて言って…」

「言わされてたの?」

唯羽は横に首を振った。

私は、本当に友達じゃないなんて思われてたんだ、と内心怖かった。

「恋乃羽は、友達じゃない…”親友”だよ。」

唯羽の言葉でポロポロと涙をこぼした。

「それにね、いじめっ子の方に行ったのは、恋乃羽を助けるためだよ。」

私は、え…と声を漏らした。

「ロッカーのくしゃくしゃの紙くず、本当に私がやったんだ。でも恋乃羽、中

見ないから…」

と唯羽は少し小さな声で笑った。

「紙くずの中は、何も書かれてない。1つだけ、書いてある。」

唯羽は私に微笑んで

「助けることは無理そう。だから、一緒に学校生活やり直そう?」

と、そっと手を握りながら言った。

「田舎って、こんな都会とは違う。」

唯羽は急に語り始めた。

田舎のことを聞いて、田舎に行くことにしたんだ。

後悔なんてしない。



番外編 貴方に届いた想いを。

「唯羽〜‼」

恋乃羽が、私を呼ぶ声が好きだ。

ふわふわしてるのに、ハッキリと聞こえる。

「どうしたの?恋乃羽。」

私は、駆け寄ってきた恋乃羽の横に並んで歩いた。

「あのね、あのね。」

恋乃羽は少し顔を赤くして、

「か、彼氏ができたの…」

と言った。

「え!おめでとう!!」

私は、本当に嬉しくて、飛び上がりながら喜んだ。

私たちのは、田舎に引っ越した。

いじめのせいで恋をしてこなかった恋乃羽は、中3から好きな人ができた。

自分からアタックして今年、見事に両想いになったのだ。

「唯羽だって〜今年から、仲柳くんと高校一緒になるじゃん。」

恋乃羽はニヤニヤしながら言った。

そう。

私の彼氏の仲柳 冬真くんが田舎の高校に引っ越して来る。

それが楽しみで、毎日のように恋乃羽に喋っていた。

「そ、そんな事より、恋乃羽のこと聞かせて?」

私は、「両想いになったんだから‼」と笑いながら言った。

「私と唯羽も両想いだよ?」

そう笑った恋乃羽にキュンとした。

なんか、恥ずかしくてエヘヘと笑った。

「あのね、告白してきたのはあっちからなの‼」

恋乃羽は真っ赤な可愛い顔で言った。

「え‼良かったじゃん‼」

「うん‼」

そんな話をしていると、後ろから「恋乃羽‼」と男の子が駆け寄ってきた。

恋乃羽の彼氏だ。

「一緒に帰れる?」

「もちろん!」

ラブラブだなぁ。

私は冬真くんとまだキスすらできていない。

「あ、雨宮さん。すいません、あの…」

遠慮気味に私に声をかけてきた。

「恋乃羽ならあげますよ。好きに使って下さい。」

そういうと、恋乃羽の彼氏は少し顔を赤らめて「ありがとうございます…」と

言った。

「唯羽‼また明日‼」

私は、恋乃羽に笑顔で手を振った。

あぁ、いいなぁ。

私は遠距離だからなぁ。

それに、恋乃羽が取られた気がしてヤキモチ妬いちゃいそうだな。

恋乃羽は一生の親友だよ。

そんなことを思っていたら、冬真くんから電話がかかってきた。

もう引っ越しはじめるって。

幸せだな。

私。

生まれてきて良かった。

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