テラーノベル

テラーノベル

テレビCM放送中!!
テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

君との関係値

一覧ページ

「君との関係値」のメインビジュアル

君との関係値

5 - 熱量

♥

193

2025年05月10日

シェアするシェアする
報告する

【米将軍side】

思いを確かめた数ヶ月後、俺は人生最大と言っても過言でないほどの悩みを抱えていた。


到底一人で抱えきれず、ルザクくんに《いまひま?》と通知を送れば、《おもしろそうだからいいよ》などと返ってきた。


正直相談するのをやめようと思ったが、背に腹はかえられぬ、他にこんなこと言える相手もおらず諦めて通話ボタンを押した。



『おつかれー』


「お疲れ様。で、雨栗さんがどうしたの?」


まだ何も言っていないというのにこれだ。

俺がわかりやすいのか、ルザクくんが聡すぎるのか。

でも、内容が内容なだけに今回ばかりは素直に感謝することにした。


『いや、これね、結構ガチで思っとるんやけど



雨栗って、EDなん?』




「にぇ、」



シンと静まり返るモニター。

ルザクくんからの応答がない。


『あのー、ルザクくーん?』


「……あぁ、ごめんねこめしょー。なんだっけ?雨栗さんがそういう病気だって話?」


『あ、いや、そうと決まったわけじゃねぇんだけど……、全然手ぇ出してこねぇんだよな……』


付き合った日の朝は結局何もせず解散したし、北の国からこっちへ来た時は、デートらしいことも何度かした。


もちろんそれなりにそういう雰囲気にもなったりしたし、なんなら男同士のアレそれだって調べた。……できるかどうかはさておいて。



「もしかして俺ってそんなに魅力ない?」


だいぶ昔、同じようなことで雨栗が凹んでいたなと現実逃避を始めようとしていたところ


『んふふ、ないない、それだけはないよ

見てるこっちが恥ずかしくなるくらいだもん』

コロコロと鈴がなるような笑い声と共にあっさり否定された。


「だったらなんで…」


『遠慮してるんじゃない?』


間髪入れずに返ってきた言葉に、首を傾げる。


『こめしょーのことだから、どうせ好きとか言わないし照れ隠しで距離とったりしてるよね?そりゃあ相手も困るでしょ。ましてやあの雨栗さんだよ?慎重にもなると思う』


グサグサグサ。


きっとマイクラの世界だったら、俺のスキンはスケルトンの矢だらけだったろう。


それくらい思い当たる節が多すぎたのだ。


というか、ルザクくんの中の俺の解像度が高すぎてそっちのが驚きだったかもしれない。


「こめしょーから押せば一発だと思うから。頑張って」


お礼は焼肉でよろしくと一方的に切れた通話の先のルザクくんがあまりにも自信たっぷりで、何だか勇気を貰えた気がした。




某日、打ち合わせで雨栗が東京を訪れた。

二日間かけて行われるということで、今回も東京に泊まっていくという雨栗を飯に誘うことはそう難しくはなかった。


『ここのトンカツうめぇんだよなぁ!』


「ふふ、こめしょーがっつきすぎ。まぁ美味しいのは認めるけど」


毎回と言っても過言でないくらい来ているとんかつの店。

誘ったらなんだかんだ来てくれるものだから、付き合う前からここに来る時は大抵雨栗と一緒。


「こめしょー」


『んぁ?』


「ついてる」



ぺろ。



頬に着いていた米粒を掬い上げられ、目の前で意味ありげに口に運ぶ。


一瞬の間、俺の顔は火が噴きそうなくらい熱く真っ赤に染まっていただろう。


『なっ、おま、』

口をパクパクと動かすことしかできない俺を見て、ふはと吹き出す雨栗を軽く睨む。


せめて何か仕返しでもできないかと思考を巡らせれば、ルザクくんからのアドバイスを思い出し、閃く。


『……なぁ、アイス買って帰ろうぜ』



とんかつ屋を出てコンビニに向かう。

もう夜もいい時間だというのに、まだまだ人の波は収まりそうにない。


これだけの人がいれば、多少くっついた所で気付かれまい。


俺は一度目を閉じ、意を決して手を伸ばした。




【雨栗side】


ふわり


冷たい手に暖かな温もりが重なる。

それがこめしょーの手だと気付くことにそう時間はかからなかった。


(やばいやばいやばい)


ドッドッと心臓が爆音を響かせる。

滅多にないこめしょーからの好意にニヤける顔を必死で抑える。


『なぁに、こめしょー』


それはそれは甘く響く自分の声に呆れながら彼の手をそっと握り返す。


「……ん、触りたかった、だけ」



あぁもう!なんて愛しいんだろう!

耳だけならず首元まで真っ赤なこめしょーを眺めていればコンビニなんてあっという間に着いてしまった。


「ほら!着いたぞ!」


パッと離れる温もりに少し寂しさを感じながらその少し高い背に着いていく。




家までの帰り道、二人並んでアイスを食べながら帰る。

恋人になる前にもあった光景だが、雰囲気は段違いに甘い。



「なぁ、それひとくちくれよ」


珍しい恋人からのお願いに首を傾げながら手渡そうとした。


瞬間。


「……ん、」


サラリと耳に髪をかけ、唇にアイスが触れる。

バニラアイスにつやりとした赤い唇が映え、多少の照れがあるのか頬が赤く目が潤む。


正直に言おう。我慢の限界だ。


『今日、こめしょーの家行きたいんだけど』


余裕のない声に察したのか、控えめに頷く彼の手を取り足早に帰路に着く。


触れ合った手が徐々に熱くなるのは、一体どちらの熱量だろうか。

この作品はいかがでしたか?

193

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚