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なんか小学校の頃に、教室にあったある絵本を読んでて泣きそうになったのを思い出したのでちょっと似た感じのを書いてみた。
⚠️虐待表現あり
街中にある動物病院にて、その猫は産まれた。
___ミャーッ…ミャーッ!
頑張って産声を鳴くその猫に、医者も看護師も酷く喜びあっている。鳴けば母親は優しく身体を舐めてくれる。
おぼつかない足どりで、先に産まれた兄弟と見られる数匹の子猫たちが母親のおっぱいを必至に飲んでいる中に入っていった。
それが、俺が産まれた暖かい環境だった。
俺が産まれた動物病院は貧困だった。
母親が産まれるもっと前に、親から借金を背負われたと聞いていた。長い年月を経て、なんとかお金を貯めて全て返済を終えても、 手元にある金は全てなくなってしまい、治療道具や生活するのに必要なお金しか残っていなかった。
でも、どんなに重い病気や怪我をした動物を連れて来ても、医者は徹夜をしてまで治す方法を探し、客が感謝し大金を持って来られても貰おうとしない。そういうとこが鼻につくけれど心優しい彼に、ご近所さんや常連さんは野菜やご飯を分けてくれているとこを俺はゲージ越しで見守っていた。
俺はなつ、とそう呼ばれていた。俺の事なのか分からなかったけれど、鳴くだけで微笑みかけてくれたから、多分合ってるんだと思う
「___なつ、ご飯だよ?」
そう言って小さなお椀に入れられたご飯をくれて、齧りつきたくて必至に手足を動かす。でも、歩けなくてすぐに転けてしまう。そうしてる間にも、俺の兄弟達はみんなご飯を食べていた。
何故なのか、俺は産まれた時から手足が動かなかった。歩けない俺を医者は見かける度に、困った顔をしていた。毎日脚を診てもらっては、治療もして、頑張って歩く練習をしなきゃならない。
だから、他の猫たちよりも何倍も努力しないといけないのに、何回も転んでは、何回も俺は置いてかれてばかりだった。
そんな手足の成長だけを置いて1歳になった頃、俺は買い取られた。ゲージに入れられ、格子越しに医者と客の会話を眺めていた。
買い取ってくれたのはスーツ姿の男性と、キラキラした服を着こなしてる女性。前に来ては俺のことを見て甲高い声で、可愛いと眺めながら言っていた。
「___じゃあ、元気でな?」
首に何かを巻かれたような気がする。首の下からジャラジャラと鳴るそれに、意心地が悪くて頭を振っていると、手を差し伸べられては医者の手を嗅ぐと、口元から頭へと撫でるように触られた。
その時の医者の手は、とても暖かかった。
家に招き入れられて、また別のゲージに入れられる。勿論、警戒心の強い俺は2人に威嚇をしてゲージの奥へと潜り込んでいた。
「何、この猫?ずっと唸ってんだけど」
「警戒してんだよ、そのうち慣れるさ」
俺が入っているゲージの傍で、名前を変えていた。名前は吾郎、嫌いだったおじいちゃんの名前にしようとか言いながら笑う姿。俺から、なつという名が消えてしまった。
それからなんだろうか。
俺の生活が変わったのは。
朝と夕方にはご飯をくれていたが、水も数日変えてくれないしご飯の量も少なければ、夕方にはあげない日もあった。
お腹が減ってしまいゲージの中で鳴いていると、ソファでスマホをいじっていた女は分かりやすくムカついてる顔を見せた。
「うっさい猫ね!静かにしてくんない!?」
男にも鳴いてみせたがこちらを見ては無視をし、女が座ってるソファの横に座りスマホを見て笑っていた。 甲高い声で怒鳴られる毎日に嫌になり、俺は何時しかご飯の要求をしなくなった。
そんな生活が始まって数ヶ月が経った頃、女の友人らしき人が家に訪れた。俺の姿を見ては、ゲージを開き、俺の身体を鷲掴みするように捕らえられて、気づけば目の前には知らない女がいた。
可愛いと甲高い声で、 俺の腹や頭を触ってくる。2人分の香水が俺の鼻を刺激し、今にも吐きそうになってしまう。そのままリビングに戻り、俺は床に投げるように置かれた。早くゲージに帰りたい気持ちで手足を動かすが、転んでしまう。
「この子、歩けないの?」
友人が俺を見たのだろう、 そう言われて思わず悲しくなった。後ろからは歩けない俺を馬鹿にするように笑う声が聞こえてきた。 それから帰ったあとに、恥ずかしい思いをしたと女から罵声を浴びては蹴られ、1晩中男にチクる声が聞こえてきた。
深夜になってから帰ってくる事が増えたこの家族は、 女性が身につけてる物がどんどんキラキラしていくばかりだった。 俺は、狭く暗いゲージの中で動かない手足を頑張って動かしては転び、少しずつ体は衰弱していった。
それくらいなら、死んだ方がマシなのかもしれないと、薄いカーテンから覗く夜空を見ながら、俺は2歳を迎えたのだった。
俺が2歳になってから、久しぶりに朝から少なく美味しくないご飯を貰い、必至に食べていた時、チャイムが鳴った。 その音で女は嬉しそうに玄関へと走って行く姿を眺める。
すると、ゲージの扉が開けっ放しなのを気づいてしまった。玄関からはまだ嬉しそうに話す女の声が聞こえてくる。思わず、俺は手足を頑張って動かしてゲージの外へと出た。
リビングらしき部屋を見回していると、よく夜空が見える窓は換気がされてあり、そこからはベランダに繋がっていた。戻ってくるまでのタイムリミットに追われながら、転びつつも必至に動かす。ようやく着き窓からベランダへと出る。でも、マンションは二階建てに住んでるため、地面までが遠く高かった。
飛ぶか躊躇っている時、玄関から扉の閉める音が聞こえた。近くには小さな木が生えてある、悩んでる時間もなく俺は意を決して、ベランダから木に向かって飛び込んだ。
ガサガサと木の音が耳に聞こえ、身体はチクチクと木の枝が刺さって痛いが目をつぶって我慢をする。そして背中にぶつかったような痛い衝撃が走るが、意識はあった。起き上がればコンクリートの感触がある。
「は!?おいッ!!どこ行ったッ!!」
上からはあの女の叫び声が聞こえてきて、俺は見つからないように必死に逃げて行った。
時間をかけて逃げれば俺は知らない場所へと彷徨った。逃げる事ができたけれど俺には行く宛てがない。
あの場所には絶対に戻りたくない、でも医者がいた病院の場所も分からない。 オマケに2歳になっても手足が動かない俺なんて、カラスに食われて死んでしまうのだろう。
それでも、死にたくない。
そう思って、俺は必死に遠くまで歩いてる時に見つけたゴミ捨て場を隠れ場所として使った。誰かが捨てたコンビニ飯や生物をゴミ袋をちぎって出して食べては、カラスの鳴き声が聞こえたらゴミが埋まってできた穴場に隠れては身を潜める毎日。
辛いけれど、あの場所よりかはまだマシな生活だった。
ここに住み始めて数日が経ったある日、その日は雨だった。雨に打たれながら、またゴミを漁っては食い物を見つけ、雨で濡れてドロドロになってるそれを食べていた。
「___…猫?」
後ろから男の声が聞こえて思わず振り向くと、あの場所にいた男と違う人が立っていた。黒い傘をさして片手にはゴミが入った袋を握りしめていて、ゴミを捨てにきたのだとわかった。
ああ、今日の夕飯の分の飯だ。
そう思って心の中で喜んでいると、男はしゃがみこんでは俺に傘を差し出してくれた。
「お前ボロボロじゃん…うわ、痛そ」
俺の身体をゆっくり触りながらジロジロと見てくるコイツ。 俺を可哀想に見つめる黄色い瞳、 また馬鹿にされてるのだと思った俺はその男に威嚇した。
「ちょっ、悪かったって…痛てぇよな…」
すると、片手で持っていたゴミをゴミ捨て場に投げ出して俺を持ち上げた。びっくりしてまたその男に威嚇をするが、いつの間にか黄色い瞳が柔らかくなって俺を見つめていた。濡れてるにも関わらず、俺を抱いている。
「急いで病院行こうな?」
男の腕に抱かれてたその時は、久しぶりに暖かいと感じた。
「ただいまー」
帰ってきても1人しかいない部屋に挨拶をし、廊下の電気をつける。傘を脇に置いて腕の中で温まる猫を見た。 茶色のボサボサの毛並みをしたその猫は大人しく俺に抱かれていた。
リビングに行き、傷が開かないように優しく地面に置いてやったら洗面所へ行きタオルを取り、寒そうに凍えてるその猫にタオルをかけて軽く拭いてやった。
動物など触れてきてない俺は、片手でスマホを触れては『猫 怪我 対処』と検索をしては書かれてる情報を頼りに動く。
拭いたタオルを包ませて持ち上げ、今度は風呂場へと移動させた。滑りやすいから下にタオルを敷いてから猫を乗せ、温めにさせたシャワーを出すと勢い良く出たのに驚いたのか威嚇された。
「シャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
「ごめんごめん、嫌やったよな」
シャワーを緩ませて猫の身体にかけながら、濡らしたタオルで汚れを落としていく。
「うわ、マジで痛そ…いててててッ!」
引っかかれる覚悟をして長袖を着て、前足を抑えながら洗っているが、その猫は噛んでくるだけで引っかきはしなかった。
「ミャア゙ア゙ア゙ア゙ア゙…ミャアアア……」
俺の腕を噛んでいた口は、今度はか細く弱々しい鳴き声をあげている。痛いはずなのに、大人しくしてるこの猫に悲しくなってくる。
「…ごめんな?もう少し頑張ってな」
なんとか汚れを取り終え、新しいタオルで拭きながらドライヤーで乾かしてあげる。ドライヤーは嫌ではないのか大人しそうに座り込んでるため、嫌がり始める前に終わらせる。数分すると固まっていた毛並みが綺麗な茶色の柔らかさを取り戻してきた。
「…よし、終わり。ええ子やったね」
猫を抱き上げ、 またリビングに戻りカーペットの上に置いては、 次にキッチンに行き冷蔵庫から牛乳を取り出した。鍋で作るなんて手間も光熱費もかけてらんないため、皿に入れ電子レンジで温めてやる。
温めてる間にキッチンがある廊下に繋がるリビングを見ると、猫はこちらに歩み寄ろうとして転ぶ姿が見えた。
「お前ッ、あんま動くなって…!」
そう言っても聞かないその猫は、また立ち上がっては前足を出すが、また転んでしまう。タイミング良く、電子レンジから機械音が聞こえ、 温めた牛乳を出しリビングに持っていき、床に置いてあげる。
すると、俺の元に歩もうとするその猫はまた転んだ。明らかに歩き方がおかしい。
これ以上見てらんない俺は、猫を皿の近くまで移動させてやると牛乳の匂いを嗅いだ後、1口舐め、その後は必死に飲み始めた。
食欲がある事に一安心し、俺も昨日買ったコンビニ飯を温めてミルクを飲む猫を見守りながら食べ始めた。
ご飯を食べ終え、雨が少し止んできた後に、また猫をタオルで包ませて近くの動物病院へと足を運んだ。
受付を済ませると、すぐに呼び出され説明をする。医者は怪訝そうな顔をしながら、俺の腕に抱かれてる猫を見つめている。 医者と話し、検査をしたいと言われ猫は3日間入院する事になった。
ニャアアアァ…… ___もう、行くの?
そう言われた気がして後ろを振り向くと、こちらを見つめる瞳と目が合った。どこか寂しそうな紅い瞳に、俺は頭を撫でた。
「大丈夫、また迎えに来るから」
そう言うと、小さくゴロゴロと鳴きながら俺の手を顔に擦り付けてくれた。そんな姿を見て、飼おうか悩んでた気持ちが晴れた気がした。
それから3日後、俺は昨日の練習の疲れもあり眠っていると、病院の出入口から音が聞こえた。
眠たくて重い瞼を開けて見てみると、そこには俺を拾ってくれたアイツが立っていた。
「ミャアアアアァァ…」
「!元気だったか?」
男は病室に入ると、ゲージに入れられてる俺を見つけては嬉しそうな顔をしていた。医者からゲージを出され、座っている男の膝の上へと乗せられる。
久しぶりのソイツの暖かい体温に思わず擦り付けてしまったが、男は嬉しそうに俺の頭から背中へと撫でてくれた。
男らしいボツボツとした手が何処か気持ち良くて堪能していると、 医者と彼の声が上から聞こえてきた。
「この子、スイマー症候群かと…」
「スイマー症候群?」
俺も初めて聞くその言葉に耳を傾けた。筋力の発達不足や神経の未発達、親の遺伝にも関わってる可能性もあると。その為に、この3日の間に痛い治療を受けては練習をしていた。
「きっと、この子は練習もおぼつかないまま外に出されたのでしょう」
「…そっ、すね」
俺を見下ろす黄色い三白眼を俺も下から見つめる。またどこか心配するような目で見てくるコイツに、俺は撫でてくれた手に頭を擦り付けてやった。男は、ハッとした顔をして俺の頭を撫でてくれる。
「…リハビリすれば、治るんですよね」
「そうですね。でも、この病気ですと猫の成長期で治るものでして、遅くても生後1年がキープなんですが、この子はもう2歳でして…」
そうなんだ、初めて知った。
頑張って歩く練習をしてきたはずなのに、まだ歩けていない自分が嫌になる。もうこのまま、歩けない面倒臭い猫として生きるしかないのだろうか。
「…大丈夫っす、ここまで生きてきたこの子なら歩けるので。俺が面倒見ますんで」
上から聞こえた声と同時に、俺を抱く腕が少しだけキツくなった気がした。医者も驚いた顔から、嬉しそうな笑顔でこっちを見た。
「良かったね、優しい飼い主さんで」
俺も嬉しくて鳴き声をあげると、上からクスリと笑う声が聞こえた。
それからも受付を済ませては、久しぶりの外へと出た。この日は雲1つもない快晴であり、日向ぼっこをしたくてゲージに入れずに、またタオルと彼の腕に包まれながら帰って行った。
「そういえばお前、なつっていうん?」
久しぶりに呼ばれたその名前に、無意識に耳がピクリと反応してしまった。
「風呂に入れる時首輪も汚れてたから取って後で洗ってたんだけど、そこになつって書いてあったんよね」
「だからお前の名前、なつでいい?」
俺の大好きな名前を呼んでくれることに嬉しくて、俺を見下ろすその顔に、俺は濡れた鼻先を彼の唇にひたりとつけて鳴いた。
赤「ミャアアアアァァッ…!」
「!…じゃ、決まりな?」
俺を持つ腕が疲れたのか、持ち替えながら帰路を歩いてく。上を見上げれば目線はまっすぐを向けて歩いてくソイツ。
歩けなくて色んな人に心配や馬鹿にされて、生きにくいこの世界で汚物ばかり食べていた、もう死んでもいいやと絶望していた俺を拾ってくれた彼が眩しくてしょうがない。
赤「ミャアアアア…ミャアァァァ…」
___ご主人様、名前を教えてよ。
「?どうしたぁ?…んー…」
紫「……いるま、って呼べな?」
コメント
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初💬失礼します !!!!!!!! ログインする前から少し拝見させて貰ってましたが 、 りんご様の書く小説が 、 私大好きで 、 この小説も感動で泣いてしまいました ✨️🥲 りんご様の小説これからもたくさん拝見させて頂こうと思います 🙌🏻🙌🏻🙌🏻