テラーノベル
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まず、ことの経緯を説明したいと思う。
俺らは明日午後から仕事というスケジュールで
、その後俺が地方で撮影のため3日間開けることとなった。
その壮行会を仁人がしてくれるということで、適当にアルコールとつまみを買って机に並べた。
確かに今日やたらテンポ早いな、とは思っていた。
でも…。
「はーーーやーーーとぉ〜〜〜〜〜〜〜〜」
現にこうしてベッタリと首に絡みついている。
…酒飲みはマトモな人間のいうことなんぞ耳に入らないんだ。
何度もうやめとけと伝えたことか。
首を避けて嫌そうにしても全く離れる気配はない。
「………お前近えよ…」
「いつもありがとぉ〜〜〜んはやとーーー」
「5回目だよそれ…」
べりっと引き剥がして卓上の空き缶をかき集め、キッチンへ向かった。
「ねえどこ行くの勇斗ぉ〜〜〜」
「お前が飲み散らかしたやつを片してんだよ。水持ってくるから今度こそ飲めよお前」
ソファで寝そべって溶けてやがる。
俺の座る席を見事に奪われてしまった。
キッチンの前に立ち、蛇口のレバーを上げた。
缶の中に吸い込まれていく水を見ながら、想像以上に飲んでいたことを実感した。
…こんなに飲んでいたっけいつも。
メンバーの前ではむしろサポート側にまわっていたように思えたけど…流石に久々の酒で思った以上に酔いが回っちゃった可能性もある。
あと……と一つの考えがよぎり、反射的に缶をグシャリ、と握りつぶした。
……俺の理性が持たない…………!!
仁人が酔いすぎると蕩けた顔で名前を呼んだりベタベタ触ってきたりするの、本当に俺以外にやってないのか心配になる。
例え俺だけだとしても絶対にやめさせないといけない。
パーソナルスペースの近さが苦手だから…という理由に加えて、今このような関係になったからこそ、このようにニコニコでベタベタ触ってきたりそんな艶かしい目で見られると、いずれ俺の理性と何がとは言わないがスタンドアップする己の爆弾が爆発するのも時間の問題なのだから。
…しかも最近忙しくてご無沙汰だし。
はあ、と深いため息をついて、意を決してグラスを手に取った。
「…仁人、おーい仁人ー」
ソファですっかり眠りこけていた仁人の肩を揺さぶると、仁人は眩しそうに瞳を開いた。
「んん…ここどこ…」
「私は誰?…じゃねえよ、酔いすぎだっての」
頭を軽く叩いて肩を支えて体を起こさせた。
瞳はまだぼんやりとしている。
「はい水。ちゃんと飲んで」
「ありがと…」
「マジで今日特に飲んでたね」
苦笑しながら言うと、口に含んだ水を飲み下した仁人がフッと笑った。
「飲まないとやってらんないよ」
「え、なに…なんか嫌なことでもあった?」
「勇斗がここからいなくなる以外になんかある?」
あーあ、さらっとそういうこと言って。
グラスの水面を見ながらそういうもんだから、本気なんだろう。
「もしかして寂しいの?仁ちゃん」
「はあ?寂しい以外にある?」
おお…やけに素直だ。
「そ、そう…」
なぜか耳が熱くなるのを感じて返答に窮してしまった。
代わりに仁人が続けた。
「前と変わんなくなるってだけなのにね…。…向こういって誰かいい奴いても良い雰囲気になったりすんなよ?」
「ならねえよ」
「なるだろーーーお前イケメンなんだからさ…まあでも勇斗が決めたんなら止めないけど……」
はは、と渇いた笑いを浮かべながらまた水を飲んだ。
「…それ冗談だとしても面白くないわ」
低い声でしっかり睨みつけて言ったが、酒を飲んだ相手はマトモなことなど通用しない。
仁人はそれに対して反応することもなく、軽く笑って受け流して、
「ごめんて、そんな怒んないでよ。…先風呂入ってきな。明日早いんでしょ?あとは片しとくから」
そう言われて渋々とその場を離れた。
翌朝、早朝の街をキャリーケース引き摺りながら歩く。
…ふと思い立ってスマホを取り出し、とある人に電話をかけた。
「…おはよ、もう出かける時間じゃないの?」
『……はよ……なんかごっつ飲みすぎた気がするんだけど…』
「そうだよ飲み過ぎだよ。よかった電話して。早く起きな」
『んん…ありがと……勇斗も気をつけて…』
「うん」
『ちゃんと飯食って…ちゃんと寝て…』
「お前はママかよ。わかってるって。仁人もな。みんなによろしく…あ、あとそうだ」
『ん?』
にやっと笑った。
わからなければ、わかるまで言えばいい。
「向こう行っても仁人が1番だから。それはずっと変わらないから安心して」
『あ?何の話…』
「あと帰ったらお前覚悟しとけよ。わかるまで教え込ませるから、そのつもりでよろしく。じゃーねー」
『え、何、何の話…』
ブツッとボタンを押して強制終了させた。
…まあ実際はそう思っても結局加減しちゃうんだけどね。
早朝の街中、大きく伸びをした。
…帰った後の楽しみができた。
連絡も出来るだけしてあげよう。
確かに寂しいけど…仁人がいるから頑張れるんだよなあ。
コメント
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こんな、ハイペースでさかなさまの作品が拝見できるなんて幸せ… 今回も、こういう2人、好きだなぁ…と噛み締めながら読ませていただきました これからも、楽しみにしています