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紫桜。@低浮
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【真の愛にナイフを】
Prolog
はじまりは、たった一つの違和感だった。
画面の向こう。
いつも通り流れていくコメント欄の中に、それは紛れていた。
――この不穏なアイコン、いったい誰?
誰かがそう打ち込んだ。
ほんの軽い疑問だったはずなのに、その一文だけが妙に引っかかって、消えずに残る。
スクロールしても、流れていかない。
目を逸らそうとしても、視界の端に居座り続ける。
知らないはずなのに。
関係ないはずなのに。
どうしてか、その存在だけが“邪魔”だった。
最初に気づいたのは、きっと一人じゃない。
同じように、どこかで同じ違和感を抱いた人物が、何人も見ていた。
言葉にはしない。
けれど、同じタイミングで、同じ方向を見ている。
それだけで十分だった。
――なんとしても止めなきゃ。
誰かの中で、はっきりとした輪郭を持った感情が生まれる。
理由なんて、後からついてくる。
ただ、その瞬間に確信していた。
これは、見過ごしてはいけないものだと。
あたしの推しが、穢されてしまう。
そんな大袈裟な言葉ですら、もう過剰とは思えなかった。
むしろ、それ以外に表現のしようがないほどに、胸の奥がざわついている。
――あたしが守ってあげないと。
その言葉は、誰のものでも無い。
けれど同時に、全員のものだった。
同じ配信を見てる。
同じ声を聞いている。
同じ人を、見ている。
なのに。
“あたしだけが、特別に分かっている”
そんな感覚が、確かにあった。
少しの違和感。
ほんの些細な異物。
それだけで、ここまで心が乱れるのなら。
――排除すればいい。
思考は、驚くほど滑らかにそこへたどり着く。
だって。
節操がないのは、向こうの方だ。
勝手に近づいて、勝手に触れて、勝手に奪おうとしている。
そんなの、許せるわけがない。
アンタには渡さない。
誰かの指が、そう打ち込む。
その言葉に、誰も反論しない。
むしろ、安心する。
やっと、同じものを見ていると確認できたから。
――ねぇ、これって罪?
ふと、そんな考えが過る。
けれど、その疑問はすぐに塗り潰される。
だって、悪いのは向こうだから。
騙されやすいだけで、あの人は何も悪くない。
近づいたあいつが悪い。
壊そうとしているあいつが悪い。
だから。
――消えてもらうしかないよね。
その結論に、迷いはなかった。
心の中が、ぐちゃぐちゃに混ざり合っていく。
嫉妬も、執着も、独占欲も、全部が溶けて一つになる。
それでも、不思議と不快じゃない。
むしろ。
やっと“本物”に近づいた気がした。
どこまでも、ついて行く。
誰よりも近くで、誰よりも正しく。
あたしがいれば、きっと大丈夫。
あたしがいないと、ダメなんだから。
だから。
――離さないよ。
この先も、ずっと。
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡10