いつものように朝妹に起こされ、リビングで家族で朝ご飯を食べる。
妹と父を見送り、部屋で早めの昼寝をして家を出る。
電車を乗り継ぎ、大学の最寄り駅で降りる。いつものようにコンビニで
ココティー(心の紅茶の略称)のストレートティーを買って、講義室を目指す。
開け放たれた扉から講義室の中に入る。すぐに白髪ピアスマンが目に入った。
そして、いつものように扉側、壁側に音成、妃馬さんがいた。
妃馬さんと目が合い、いつものようにパッっと笑顔に変わり
胸の辺りで控えめに手を振る妃馬さん。慣れたが慣れない。ドキッっとしつつ手を振り返す。
音成も僕に気づき、手を挙げる。僕も手を挙げる。白髪ピアスマンに近づき、隣に座る。
「来たな」
「来たよ」
「鹿島来るかな」
「来ないだろ」
「来ないよな」
「来ないに千円」
「じゃあオレは来ないに1万円」
「こーゆーとき同じほうに賭けないけどな」
「それな」
「まだStrange My Lifeの3作目やってんの?」
「そ」
「だいぶ時間かかってるよな」
「あーすいません。彼女との時間が増えたのでやる時間が前より少ないんでね」
「ウザっ」
「えへへ」
「えへへて」
バッグからサティスフィーを取り出し、あつまれせいぶつの森の日課を行う。
少しすると前の扉から講師の方が入ってきて
「じゃっ…あぁ〜…ちょっ…とだけ早いですが前回からの続きをと思います」
と講義始まりの合図を告げた。しかし、匠と僕は変わらずサティスフィーでゲームをし続ける。
しかし一応講師の方に見つからないように
テーブルで隠れる太ももの辺りにサティスフィーを持ってきてゲームをする。
講義中はさすがに静かだったので匠とはあまり喋らず
ゲームをしながらたまに妃馬さんとLIMEをしてあっという間に
「えぇ〜っと?おぉ。えぇ〜今日は少し早めに始めたので少し早めに終わろうと思います。
次回もこの続きから行います。お疲れ様でした」
と講師の方が講義を締めた。締めた途端に講義室内が騒めき始め
即座に出口に向かう人、友達と話す人、本を読む人、ゲームをする人、寝る人、様々いた。
「この後は?」
「この後ね、ちょっとお茶して帰る」
「はあ〜。付き合うと変わるね」
「まあね、なんか、より大事になるよね」
「まあ、そうなるか。どこで降りるん?」
「決めてないけど、まあ、大吉祥寺だろうな」
「まあ、そうね」
そんな話をし、匠が一旦ゲームをセーブし、2人で荷物をまとめて、出口のほうへ歩いて行く。
「お疲れ様です〜」
「お疲れ様です」
「恋ー」
「たっくん」
もう何度も聞いているがまだこの呼び方にどこかむず痒く、ぞわぞわっとしてしまう。4人で講義室を出る。
「バカップル感がスゴい」
「わかります」
「妃馬さん、わからないでください」
「ほんとだよサキちゃん」
「そんなバカップルじゃないよな?」
「違うと思うけど…。ねぇ?」
「ねー?」
「うん。バカップル」
「バカップルですね」
「「違うって」」
妃馬さんと僕が笑い、音成と匠も続いて笑った。
「恋ちゃん、小野田さんの話多くて多くて」
「あ、そうなんですね。まあ、言われれば匠も前より圧倒的に音成こと話すこと増えましたね」
「あ、やっぱり?」
「言われてみればですね」
「この後も2人でどっか行くらしいですよ」
「らしいですね。さっき聞きました」
「今も2人で楽しそうに話してるし」
匠のほうを見ると音成と楽しそうに笑ってイチャイチャしていた。
「ほんとだ。イチャイチャしてる」
「ちょっと前までは考えられないな」
「ほんとですねー」
「あれ?いつから聞いてたんですか?匠のことが好きってのは」
「あぁ〜、えぇ〜と、どれくらいだったかな。
1年で仲良くなって、1年の終わり…かな?2年の夏には知ってましたね」
「あぁ、どっちにしろ大分早いですね」
「好き…っていうのか、ずっと忘れられない人がいるって感じで聞いてました」
「なんかリアル」
「リアルですからね。でもまさか同じ大学にいるとは」
「驚いたでしょうね。まあ、僕も中学からの同級生が匠の他にいるとは思いませんでした」
「ね!私もまさか怜夢さんと恋ちゃんが同級生とは思いませんでした」
「んで、匠が音成好きとか」
「思わないですよねぇ〜」
「なにが?」
匠が入ってくる。
「ん?いや?別に」
「なんだよ。秘め事か?パパが漫画家とか?」
「違ぇわ。オレの父さんの職業知ってるくせに」
「いや、妃馬さんのお父さんとか」
「違いますよ」
妃馬さんが笑う。
「いや、隠してるかもだからな」
「たっくん。それあれでしょ?」
「わかる?」
「見てたもん。大泣きした」
「オレもオレも!めっちゃ泣いた。涙枯れるかと思った」
「なんかあれか、アニメネタか」
「「そ」」
匠と音成がハモる。
「仲良いこって。あとアニメネタはほぼわからんから」
「わからんくていいのよ。自己満ネタだから。
あぁ、オレこんな日常会話からもアニメ、マンガネタ発掘できるんだって自己満だから」
「オレさすがって?」
「そうそう。さすがオレって」
「たっくん激ヲタだからね」
「たっくん…」
どうも慣れずに思わず笑う。
「なにさ」
「いやごめんごめん。まだ慣れないわ」
「わかります。私も小野田さんが恋って呼んでるの聞くと、おぉってなります」
「妃馬さんもですか」
4人でそんな話をしていると駅につく。改札を通り、ホームで電車を待つ。
「お、それが噂の?」
匠のトートバッグの持ち手の部分にあるアクリルキーホルダーを手に取る。
「あ、そうそう。てか今?大学でもずっとあったがな」
「今気づいた。かわいーな」
「だろ?」
「匠はなんでこのキャラなん?」
「んー。いや全キャラ好きなんだけど、京弥がメインキャラ買って、森本さんがヒロインキャラ買ったから
まあ、主人公の親友の1人のこのキャラをと」
「あぁ、2人に配慮した上でね」
「そゆこと」
「ちなみにー全何種あんの?」
「6」
「帰ったらでいいから、鹿島と森本さんと匠と音成が買ったやつじゃないやつの写真送って」
「あぁ、なるほど?いいよ」
「あざっす」
駅にアナウンスが響き、電車が入ってくる。4人で乗り込み、大吉祥寺駅で降りる。
「じゃ、オレらはここで」
「ん。楽しんで」
「じゃ、またねサキちゃんも暑ノ井くんも」
「おう。またな音成」
「恋ちゃんまたね明日ね!小野田さんもまた」
「はい。また」
音成と匠が笑顔で楽しそうに駅から出て行った。妃馬さんと僕で改札を通り、ホームで電車を待つ。
「あ、そうだ。あの例のアクキー、今週末までだそうです」
「え!あ、そうなんですか?じゃあ今週末行かないと。ちなみに怜夢さん…」
「空いてますよ」
「お?安心してください?」
「空いてますよ!ってなにやらすんすか」
妃馬さんが笑う。それを見て僕も笑う。アナウンスが流れ、電車が入ってくる。電車に乗り、電車が動き出す。
「念のため土曜日に行こうと思うんですけど大丈夫です?」
「はい。時間はどうします?」
「どうしよ。さすがに時間制限というか、ないですよね?」
「さすがにないんじゃないですか?「その日まで」って感じだ…と…思いますけど」
「たぶん大丈夫ですよね」
「たぶん…」
「じゃあ、土曜日の昼頃で」
「わかりました。お昼ご飯は食べてからで?」
「そ う で す ね?お昼ご飯食べてからで」
「わかりました」
その後なんでもない話をしながら笑い、気づけば妃馬さんの降りる駅に近づき
電車が止まって、妃馬さんと降り、いつもの道を歩く。
「月曜から土曜って長いですよね」
「そうなんですよ。まあ当たり前っちゃ当たり前ですけど」
「まあ日曜だけですからね、挟んでるの」
「そうそう。でも、気づけばあっという間」
「わかりますわかります。あぁ、月曜終わり、明日火曜か。
火曜も終わって水曜、木曜、金曜。あ、もう明日土曜だ。ってね」
「そうそう!あ、もう明日なのか。って思うときめっちゃあります」
「今週もそうなのかな」
「今週もきっとそうです」
きっと土曜日が楽しみで、間の火曜日から金曜日まであっという間だろうということは言わなかった。
「そうだ。冷袋(ヒエブクロ)での雑貨屋さんも調べておかないと」
「そうですね。ついでにスマホケース旅もね」
「ですです。調べときますね」
「じゃあ、お願いします」
「お願いされます」
顔を見合わせて笑う。
「そういえばこないだフクロウのスマホケース
nyAmaZon(ニャマゾン)で調べてみたんですけど、そこそこあるんですね」
「そうなんですよ。まあ、あのnyAmaZon(ニャマゾン)ですからね。
大概は出てきますけど、意外とあるんですよ」
「しかも結構可愛かったです」
「そうなんですよ。ステンドグラスみたいな感じのデザインのやつとかあって」
「あ、それ私も見ました!可愛かった!」
「でね、これ意外なんですけど」
「なんですかなんですか?」
「nyAmaZon(ニャマゾン)で「スマホケース フクロウ」と「スマホケース 猫」で調べてみたんですよ」
「ほうほう」
「そしたらね「スマホケース フクロウ」が6万件
「スマホケース 猫」が4千件だったんですよ」
「ん?え?フクロウのほうが多い?」
「そうなんです。結構圧倒的に多かったんですよ」
「えぇー!それは意外!お店で探すと猫のばっかなのに」
「ね!でもそれが原因かもですよ」
「あぁ、マエダ電気とかでも買えるからnyAmaZon(ニャマゾン)では少ないみたいな?」
「そうそう」
「それかあんま知られてないお店が出してるとか」
「それもありますね。nyAmaZon(ニャマゾン)ならいろんな人に見てもらえるし
気に入ったらボタン1つで買えますからね」
「たしかに。便利な時代になりましたねぇ〜」
「二十歳(ハタチ)のセリフじゃないですよそれ」
「たしかに」
2人で笑う。そんな話をしてるとあっという間にエントランスが見え、エントランス前に着いていた。
「あ、そうだ」
僕はバッグからDVDのケース2本を取り出す。
「これ」
「あ、ホリー・パッターだ」
「昨日言ってたので」
妃馬さんがDVDの裏面を見る。
「懐かし~。…え?こんな長かったんだ」
「そうなんですよ。昨日妹とその話になって、約1日?合計でそんくらいかかるそうです」
「えぇー!長い!」
「そうなんですよ」
「返すのに時間掛かりそう…」
「全然全然!あのぉ〜ね?自分のペースでっていうか、そんな焦らなくて全然いいので」
「じゃあ、お言葉に甘えさせていただいて、土日とかに姫冬と見ます」
「はい。返すのはほんといつでもいいので」
「はい。ひさしぶりに見るの楽しみです」
「じゃ、そろそろ行きますね」
「はい。これありがとうございます」
「いえいえ。じゃ、また明日&LIMEで」
「はい!また明日&LIMEで!」
笑顔で手を振る妃馬さんに心臓を騒がせながら手を振り返す。
ドキドキがなかなか治らず、音楽と共に駅についた頃には平常に戻っていた。
電車に乗り、家に戻る。家の扉を開く。
「ただいま〜」
父も妹はまだ帰っておらず
「おかえり〜」
と母の声がリビングから聞こえる。洗面所で手洗い、うがいをし、部屋に行く。
部屋着に着替え、洗濯物を持って1階へ行き、洗面所の洗濯籠に入れて、また部屋に戻る。
テレビをつけ、ニュース番組を垂れ流す。16時57分。
ダラダラしているとあっという間に2分過ぎる。16時59分。あ、もうすぐ17時になる。
なぜかニュース番組などの時刻が変わる瞬間が好きだったりする。
しばらく時刻表示を見つめる。たった1分、60秒。
なんなら気づいたら59分だったし、60秒マックスはないのに、やけに、妙に長く感じる。
やっと表示が「17:00」に変わった。なぜか少し嬉しい。
寝っ転がりながらスマホをいじったり、ニュースを眺めているといつの間にか眠っていたらしい。
妹に叩き起こされる。妹と一緒にリビングへ行き、父は遅いらしく、母、妹、僕の3人で夜ご飯を食べる。
夜ご飯を食べ終え、キッチンで母がお皿を洗い
お風呂ができるのを待っていると父が帰宅した。お風呂ができて、妹が入る。
父が部屋着でリビングへ来て、夜ご飯を食べてる間に妹がお風呂から出てきて母が入る。
母がお風呂に入ってる間に、父が夜ご飯を食べ終え、ちょうど母がお風呂から出てきて、食器を洗う。
父がお風呂入って、僕は最後にお風呂に入った。
その後、各々のタイミングで部屋に戻った。部屋の明かりをつけ、扉を閉める。
ベッドに座り、テレビをつけ、スマホをいじる。
その夜は鹿島から実況のお誘いもゲームのお誘いもなく
ただただバラエティー番組などを眺めながら、スマホをいじって、ある程度の時間になったら眠りについた。
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