芸能記者

記事が出た。場所も、分からず、老婆も遠目で後ろ姿。

渡辺ー結局、記事出たじゃないか！

目黒ー場所は分からないし、お婆ちゃんも誰だか分からないでしょ？

渡辺ーでも！

目黒ーこれが、精一杯の妥協案。

渡辺ーう〜。

目黒ーもう、取材されることないし、そっとしといてくださいって言っといた。

渡辺ーんっ・・。

あそこは渡辺にとって、特別な場所で、老婆は特別な人。踏み込んでこられると困るし、嫌だ。

もう記事が出ないならいい。

渡辺ーどんな、交渉した？

目黒ー俺が買い物している店が、◯◯区の北の方にある。

渡辺ー実際、ファンが探し当ててやって来たら？お前とばったり会ったら？

目黒ー別に気にしない。挨拶するし。

渡辺ーごめんな。

目黒ーあそこと、お婆ちゃんは翔太くんには特別でしょ。そっとしておきたいでしょ？

渡辺は目黒に抱きついて泣き出した。自分を犠牲にして、渡辺の大事なものを守ってくれる。

渡辺ーごめん、ごめんなさい。

目黒ー気にしない。俺は大丈夫だし。

渡辺ーんっ・・んっ・・。

目黒ーその店から取り寄せた海鮮で鉄板焼きしよう？

渡辺ー海鮮の店なの？大事じゃん！

目黒ー聞いてた？取り寄せたって。行かなくても大丈夫なんだよ。

渡辺ーんっ〜んっ。

コアラのように離れなくなった。渡辺の大事なものを守るため、自分を犠牲にする目黒。渡辺はどうすればいいか分からない。

しばらくは引っ付いていたが、急に服を脱ぎ出した。

目黒ー翔太くん！どうした？

渡辺ーお前に迷惑かけて、返せるものないから。

目黒ー愛させてくれるの？

渡辺ー好きにしていい。

目黒ー嬉しいけどだめ。そんな自分を安売りしちゃだめ。

渡辺ーんっ・・んっ・・だって！

目黒ー晩ご飯にしよ？

上半身をはだけていた渡辺にきちんと服を着せて、晩ご飯の準備をする。そこへ、渡辺の携帯に電話が入る。

渡辺ーはい。

老婆ー坊、この前の人がまた来たけ、連絡した。

渡辺ー何て？

老婆ーエアコン付けてもらって、携帯買ってもらって、どういう関係か、聞かれた。

渡辺ーお婆ちゃん、何て言ったの？

老婆ー婆の家には何もないし、熱中症で倒れたけ、エアコン付けてくれた。携帯は、来るとき連絡するためにくれたけ、それだけじゃ言うた。

渡辺ー次に来たら、話すことはない、って言って？

老婆ー坊に迷惑かけてるかの？

渡辺ー違うよ、お婆ちゃんに迷惑かけて、ごめんね。

目黒は、2人の会話を聞きながら電話している。約束が違うじゃないか。また取材に行ってる。関わらないようキツく言ってくださいと。

渡辺ー目黒、また・・

目黒ー電話した。関わらないようキツく言ってくださいって言っといた。

渡辺ーありがと！

目黒ーお婆ちゃん、大丈夫？

渡辺ーん、次に来たら、話すことないって言ってもらう。近いうち、行きたい。迷惑かけて・・。

目黒ー行っておいで。俺はしばらく、時間作れないから。

渡辺ー俺も、ちょっと時間がないんだけど、作って夕方でも、行ってくる。

目黒ー運転気をつけて？

渡辺ーん。

晩ご飯、渡辺は箸が進まない。目黒が、口に運んで食べさせている。食べなくなることは避けたい。渡辺は、少しずつだけど食べている。ただ、表情は暗い。

目黒ー翔太くん、お婆ちゃんに迷惑かけて申し訳ないけど、ああいう人ってしつこいから、気をつけて。

渡辺ーあの海であったこと、言ってもいい。

目黒ーだめ。

渡辺ーお婆ちゃん、心細い思いしてる。

目黒ーでも、言っちゃだめ。

渡辺は、とうとう箸を置いて、顔を覆い泣き出した。

目黒が渡辺の椅子を回して前に跪き、手を掴み顔から退けてキスをする。

目黒ーお婆ちゃんは俺たちが守る。

渡辺ーんっ・・んっ・・。

目黒ー記者になんか負けない。

渡辺ーんっ・・。

目黒ー翔太！泣いてる場合じゃない。もっと強くならなきゃ。

渡辺ーん・・頑張る。

食事を済ませ、ソファで老婆に電話している。どんな小さな事でも何かあれば電話してほしいと。

老婆は「坊たちがおるから、安心じゃ」と言ってくれた。

渡辺ー目黒、大丈夫かな？

目黒ーまた、知り合いにキツく言ってもらう。安心して？

渡辺ーふぇ〜ん・・。

目黒ー変な泣き方しない。

渡辺ーありがと、何でもするぅ〜。

目黒ーふふふ。