「……30」
そう静かに呟くと、尾山はアリスを見つめた。
「はは……。負けた」
言うとアリスは柔らかく微笑んだ。
「すみません、尾山さん。実はこの勝負、尾山さんが僕に1を譲ってくれた時点で、勝敗は決まっていたんです」
「え?」
「このゲームは、運じゃない。計算力でもない。ある法則があって」
アリスは人差し指を立てた。
「30を回避するためには、25を言えばいいんです」
「―――?」
尾山は頭の中で考えた。
25を自分が言う。
①相手が26の場合→27、28、29を自分が言い、相手が30を言う。
②相手が26、27の場合→28、29を自分が言い、相手が30を言う。
③相手が26、27、28の場合→29を自分が言い、相手が30を言う。
「本当だ。25を言った方が勝ちだ」
「同じ原理で」
アリスは人差し指をクルッと回した。
「25を自分が言うためには、21を言います。
21を言うためには17を、17を言うためには13を。13を言うためには9を、9を言うためには5を。5を言うためには―――」
「……1か」
言いながら雅次は吹き出した。
「そうです。まあ、この技が使えるは」
アリスは立ち上がり背を向けると、歩き出した。
「二人の時、限定ですけどね」
「――――?」
雅次が見守る中、彼はドアノブに手をかけた。
「―――え」
ドアが開く。
暗い廊下だったはずの底は、真っ白な光に溢れていて、途端にアリスの顔が見えなくなった。
かろうじてアリスの黒い前髪がフワッと靡いているのが見える。
「―――何を……。最後の人間は、自殺で処理されるはずだ。いや、そうでなければ困る……!」
雅次は叫んだ。
「私は、翔真がいない世界では生きていけない。だから……だから自分の命を引き換えに、花崎を生き返らせたんだ!事故なんかで済まさないために……!ちゃんと法の下、裁かれるように!だから―――」
「尾山さん」
アリスは振り返った。
「大変、残念なお知らせがあります」
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