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夜更けのスタジオは音がすべて眠ったあとだった
残っているのは空気と二人分の呼吸だけ
涼ちゃんはキーボードの前に立ったまま動けずにいた
背後にはひろぱがいる
振り返らなくても分かる距離
💙「…今日、帰る?」
ひろぱの声は低くて優しくて それだけで胸の奥が熱くなる
💛「もう少しここにいたい」
涼ちゃんは正直に言った
その瞬間ひろぱの気配が一歩近づく
ほんの一瞬肩が触れる
それだけで心臓がうるさく鳴る
💙「涼ちゃん」
振り返った瞬間目が合う
ひろぱの手が涼ちゃんの頬に伸びる
触れる直前で止まる
💙「……だめ、だよな」
その言葉が優しくて残酷だった
💛「だめ」
涼ちゃんは震える声で答える
ひろぱの親指がほんの少しだけ頬に触れる
触れてしまったことに二人とも息を止める
近い
近すぎる
唇と唇の距離は指一本分もない
ひろぱの視線が涼ちゃんの唇に落ちる
その視線だけで体が熱くなる
💙「…今キスしたらさ…笑」
ひろぱは小さく笑った
💙「俺多分戻れくなる」
涼ちゃんの喉が詰まる
💛「…僕も」
本当は今すぐしてほしかった
触れて確かめて特別だって証明してほしかった
ひろぱの額が涼ちゃんの額に触れる
唇じゃない
それでも限界だった
呼吸が混ざる
ひろぱの息が涼ちゃんの唇にかかる
あと少し前に出れば唇が当たる
💙「涼ちゃん」
名前を呼ばれて 涼ちゃんは目を閉じた
💙「ごめん」
その一言ですべてが終わる
ひろぱはゆっくりと距離を取った
触れていた手が離れる
その温度だけがまだ頬に残っている
💙「…ありがとう」
何に対する「ありがとう」なのか分からなかった
踏みとどまったことか それとも好きでいてくれたことか
💛「ばか」
涼ちゃんは笑って泣きそうな声で言った
💛「こんなのいちばんずるい」
ひろぱは何も言わなかった
ただ切なそうに微笑むだけだった
キスはしなかった
しなかったからこそ その距離は永遠に胸に残る
唇の手前で止まった想いは 音にも言葉にもならず 二人の間で静かに呼吸を 続けていた
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続き書こうかな
いいねが50いったら多分書きます
いかなかったら多分書きません