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地球に帰還した俺達は、今から出来ることを手分けして行っていた。
俺はもちろん砂糖の瓶詰めだ!
聖奈さんは顧問税理士に連絡を取ったりしていて、忙しくしている。
あれ?俺はバイトだったっけ?
世の中適材適所だっ!虚しくなんかないっ!ない……
「聖くん。終わったよ。話はミランちゃんも含めて、一緒にしよっか?一度で済むしね」
「ああ。もう少し待ってくれ」
意外に砂糖の瓶詰めは熱中したら止まらない。これが1瓶80,000ギルになると思えば尚更だ。
あれ?…俺バイトでいいんじゃね?
宿に戻ってから、聖奈さんにミランを呼んできてもらった。
大金を持っているのは怖いから預かり金を返すと言われたが、金貨に慣れてもらうためにも預かったままにしてもらった。
毎回渡すのが面倒だからだとはバレていないはずだ!
「悪いな。ミランには退屈だと思うし、理解が難しい言葉も出てくると思うけど、仲間だから一緒に聞いて欲しい」
「はい。頑張って理解できる様になります」
ええんやで。君はおってくれるだけで。
「じゃあ報告するね。顧問税理士の人に会社設立の為に色々動いてもらっていたんだけど、まだ別にお願いしていたことがあったんだ。
私達は異世界にいることが多いでしょ?だからバイトの面接と採用を一手にお願いしてて、今日二人のバイトが決まったの!
ちなみに作業内容は梱包と配送準備で募集したよ。
運送会社さんとも話をつけてくれたから、もういつでも始められるの」
「おお。流石!凄いな」
他に言うことがない時は、とりあえず褒めとけ!
「いつから始めようか?」
「全部任せてばかりで申し訳ないけど、それも任せるよ」
俺は余計なことを言わない主義なんだ!
「そう言ってくれると思って、バイトの人には明後日初出勤してもらうことにしているんだ」
なんやそれっ!先回りするとは生意気な!
「ん?こっちはどうするんだ?」
「それも決まってるよ。今から伝えると明日が憂鬱になるから明日教えるね。さよなら…私の異世界…」
気になるが、どうやら聖奈さんはしばらく異世界ライフを満喫出来なくなる様で、かなりショックがデカそうだ。
「ミランちゃんも明日は手伝ってね。もちろんお給金はそこのセイさんが弾んでくれるから」
「もちろんです。セイさん。お給金以上に頑張るので、よろしくお願いします」
だめだ・・ミランはブラック企業体質だ・・・止めなくては・・・
その日は結局、男女に別れて寝た。
翌朝、朝食を食べた俺達は、大部屋へと戻ってきていた。
「まずはこの砂糖を納品に行きます」
と、いうことで、着きました商人組合。
部屋に通された俺達は、先ずミランを紹介した。
「セイさん。美人のセーナさんだけでなく、こんな美少女まで…」
なんかおもっくそ勘違いされている気はするが、敢えて否定はしない。
なぜならすでにこのやり取りが面倒くさいからだっ!
「今日の納品分です。よろしくお願いします」
「無視ですか…」
おいっ!聞こえてるぞ!
「では、今日までの売り上げと預り証を持って来ますね」
俺が唯一、聖奈さんより前に立ち会話が出来る商人組合だったのに……俺のイメージが崩れた……
俺が落ち込んでいる間にハーリーさんは戻ってきた。
320万ギルのお金と新しい預り証を受け取って、俺達は裏手にある馬車を引き取りに向かった。
「トムさん、馬車を引き取りに来ました。利用料はいくらですか?」
馬番のトムさんに利用料の1,000ギルを払い、馬を馬車に繋いでもらった。
一泊、馬と馬車を預かってもらってこの値段は安いが、ここはあくまでも商人組合員の為のサービスの場所だからだ。
俺達は初めての馬車に乗り込んだ。そして気付いた。
「聖奈って、馬車操れるんだね」
「セイくんこそ凄いね。知らなかったよ」
俺達は罪をなすりつけ合った。
「あのー。一応操れますよ?」
流石、俺たちの先輩冒険者だ。
「ミランちゃん。ごめんね。セイくんが見栄を張るから…」
おいっ!待てっ!
「いえ。父に習っていて良かったです」
どこが何も出来ない、取り柄がないだ!
そんな嘘は大歓迎だ!
俺達の馬車は、ミランの操縦で街中を行く。
「父の工房は街の外にあります。もちろん魔物なんていない安全な場所ですので、ご心配なく」
これも大きな誤算だった。
俺と聖奈さんはてっきり街中に工房があると思っていた。そうなってしまうと転移するための往復が大変だし、門の兵士に積荷の量が多くて怪しまれると話し合った。
一応、街の外で仲間の馬車に積み替えているなんていう言い訳は考えていたが、嘘は少ない方がいい。
街を出た馬車は、俺がこの街に来た方角とは反対の方へと向かう。
どうやら俺がやって来た方は、大地に魔力が豊富で、いくら抜いても雑草が生えてくるところの様だ。
その為、開拓はしないし出来ない、人も住めない土地らしい。
暫く進むとログハウスのような形の、大きな家(?)があった。
その後ろには森がある。
馬車はログハウスの前で止まると、ミランが下車を促した。
「ここが父の仕事場です。行きましょう」
ミランを先頭に工房の入り口へと向かう。
木材加工の工房は大きな音がするので、街中には建てられないようだ。
今回はその制度に感謝した。
「お父さん!セイさん達を連れてきたよ!」
ミランが大きな声でバーンさんを呼ぶ。
「待たせたな。入ってくれ」
出てきたバーンさんに促され、俺達は工房へと足を踏み入れた。
「凄いな。ここまで来ると、何かのセットみたいだ」
俺の呟きを拾ったのはもちろん聖奈さんだ。
「うん。やっぱり腕が良いんだね。あのチェストなんか、異世界物のアニメの貴族の家とかにありそうだもん」
工房はファンタジーで溢れていた。
「それで?今は何を持っていく?」
「それなんですが、今は持っていけません。
今晩中に全部持っていく予定です。代金はいくらになりますか?」
「こ、今晩中!?全部!?」
聖奈さんの言葉に驚き、語彙力を無くしたバーンさんに、娘であるミランが諭す様に伝える。
「お父さん。セイさん達がすることに、一々驚いていたら疲れるだけだよ」
娘は達観していた。
かく言うミランも、さっきの砂糖の代金を見て倒れそうになっていたが。
そのお陰で達観できたともいえる。
「そ、そうか。今あるものは古くはないが以前に作ったものだから800,000ギルでいい。これからは正規の値段を頂くから気にせず持って行ってくれ。
夜に俺はいない。鍵はミランも持っているから好きな時に運んでくれ」
俺は金貨8枚を取り出して、バーンさんに渡す。
「こちらが代金になります。またよろしくお願いします」
「こちらこそ。頑張って売ってくれ」
俺達が満足していると、聖奈さんがとんでもないことを告げる。
「まだまだ全然足りませんので、お父様も頑張って作ってくださいね!
7日置きくらいで買い取りにきますので、その予定でよろしくお願いします。
量は多いほど助かりますね。具体的には仕入れ価格で最低20万ギル分は欲しいです」
聖奈さんの言葉を聞き、バーンさんは顔を青くさせていた。
俺は知らん!皆の幸せが誰かの犠牲の上で成り立つなんて、俺は知らん!
工房を出た俺達は街に帰っても暇な為、聖奈さんの希望でスライムを探す事にした。
「懐かしいな」
「この森を通って来たんだよね?私なら夜に一人でこんな所通れないよ」
「夜にこの森を通ったのですか?」
珍しくミランが質問して来た。
「そうだけど何かあるのか?」
「ここは夜行性の魔物が徘徊している森です。冒険者組合でも、Dランク以下は夜には近づかない様にと注意喚起されています」
激ヤバなとこだったー!良かったぁ死ななくて。
暫くすると森を抜けて草原に出た。
「この辺に結構居たんだけどなぁ」
ふらふらスライムを探していると、懐かしくもキモいアイツはいた。
「おっ!いたぞ!」
俺の15m程先にぷるぷるゼリーがいた。
「ホントだ!スライムだよっ!…でもリアルだと可愛くないね……」
聖奈さんのテンションが爆下がりした。
「どうやって倒すのです?移動速度が遅いので逃げるのは私でも簡単ですけど、倒すとなれば難しいです」
ここは大人の力を見せてやろう!
ミランも大人だけど。
「二人とも見ていろよ」
俺は蜂撃退スプレー2号(1号は無くなった)を構え、スライムに近づく。
「カムチャッカファイヤー」
掛け声と共に火炎放射をスライムに浴びせた。
スライムはすぐに溶けていなくなった。
「すごいですね。火魔法が使えるとは」
感心するミランに、聖奈さんがネタバラシをした。
そして俺の恥ずかしい掛け声についても説明した。
や、やめて……
そんな事をしていると、すぐに夕方になった。
宿で食事をとってから再び工房へと戻り、月が出るのを待つ。この日は地球時間で8時以降にならないと月が出ないので、結構待たされた。
「出ました」
ミランの見張り番の時に、月が現れた。
正直いつ出るかは知っていたんだけど、ミランが役に立ちたいオーラを出していたので、任せることにしたのだ。
「ミランありがとう。また馬車を頼むな」
「はい!」
ミランは役に立てるのが嬉しい様子だ。
やはりブラック体質……
「ミランは馬車の中で待っていてくれ」
工房に着いてからは、万が一にもバーンさんを死なせられないので、隈なく工房内を探索した。
いないことが確認できたので、ミランに待つのは工房と馬車のどちらがいいか聞いたところ、馬に何かあってはことなのでと、馬車で待つと言った。
「じゃあ、行こうか」
工房に差し込む月明かりの元、聖奈さんが密着してくる。
ここまで恋・・・以下略。
寝室に戻った俺達はすぐに着替えて、タクシーに飛び乗った。
「◯△×□△へお願いします」
聖奈さんが運転手に目的地を告げた。
「ミランは大丈夫だろうか?」
「ミランちゃんなら大丈夫だよ。セイくんは過保護だよね」
運転手にはペットの話にしか聞こえんだろうな。
目的地に着いた俺達は敷地に足を踏み入れた。
ちなみにタクシー代は経費で落とせるかもしれないということで、聖奈さんに預けている会社の資金から出してもらった。
「ここが俺達の会社か。ただの倉庫だな」
「仕方ないよ。まだ起業して1週間も経っていないんだよ?
はい。これ鍵ね。私は持っているから聖くんの分だよ」
俺の前には倉庫(会社)があった。
正面のシャッターは、四トントラックくらいならそのまま入れるモノが付いている。
横には一階の入り口の扉と、二階への外階段がある。
敷地は高さ2メートルくらいの塀に囲まれていて、倉庫と塀の間に乗用車を何台か置ける駐車スペースがあった。
俺は渡された鍵を使い、一階の扉の鍵を開けて中へと入った。
「あれ?聖奈。電気のスイッチは?」
「ごめんね、聖くん。電気は明日なんだ。だから携帯のライトを使ってね」
なるほど。
契約したばかりで電力会社に連絡できてなかったんだな。
そんな時間もないくらいに働かされて可哀想に。
俺?俺は砂糖詰めるのに忙しいんだわ。
ライトで照らされた倉庫はガラガラだった。
当たり前か。
「よし。この辺りでいいだろ。戻ろう」
そう告げると、聖奈さんが後ろから抱きついて来た。
いや、それ必要か?
残金
円 =1,440,000
ギル=1,744,500(預け金200,000ギル含む)+3,200,000-800,000-1,500=4,143,000