いるまと何となく目を合わせるのが怖くて俯く。
俯けばふかふかの布団と目が合って、この布団の持ち主がいるまのものだと、昔からよくいるまの部屋で遊んでたから直ぐにわかった。
『あれ?いるまってどこで…!』
思わず顔を思い切り上げて彼の瞳を見つめる。
あの後彼の胸元で寝たあとの記憶なんて当然残っていなくて、彼がどう行動をとったのかなんて俺に分かる訳がなかった。
「ん?」
『どこで…寝た…の?』
「ソファ」
淡々と1言。それだけが返ってくる。
途端一気に顔が青ざめた。
俺にベッドを譲って自分はソファで寝る。
寒さも増してきた最近、ソファで寝るだなんて相当しんどいはずだ。
『ご、ごめん。俺がベッド取っちゃって…』
「謝る必要ある?俺がやったんじゃん、」
『で、でも…今日からは俺がソファで…』
「じゃあ一緒に寝れば良くない?」
「俺別に気にしないし、」そう言いながらいるまの視線は外れていく。
『え、でも…』なんて言葉は喉から溢れ出るが、家主である彼に何か逆らうなんて出来なくてわかったと言うようにゆっくりと頷いた。
「…学校には暫く行けないって勝手に伝えた。今朝俺の母親に連絡したら、お前ん家の父親の葬式準備手伝ってくれるって。あと病院から、母親が退院するにはまだ時間が掛かるってさ。」
視線は外れたまま、淡々と物事を話して行くいるま。
昨日の今日で俺のために沢山の事をしてくれたんだと有難く思う一方で申し訳なく思う自分が居た。
『ご、ごめ』
ほぼ無意識に癖みたいな謝罪の言葉が溢れると、それを遮るようにまた彼が口を開いた。
「謝罪はいらん。謝ることじゃないって」
ぶっきらぼうで少し怒っても聞こえるいるまの言葉。
近くで聞いてたなつは何処か嬉しそうににやにやしながらも口を開く。
「いるまはらんに早く元気になってほしいんだってさ。そのために色々やってるから「ごめん」じゃなくて「ありがとう」が欲しいんよ…w兄ちゃん可愛いとこあるやろ?w」
「なつ、うるさい。お前だって似たようなもんだろが。」
「へへ、似てるからわかんだよw」
目の前で行われる兄弟らしいじゃれ合いを見ながら、俺は自然と笑みが溢れた。
こんな風に俺を思ってくれる人がいる。
その現実が微かに痛み続ける心と皮膚を癒やしてくれる気がしたから。
コメント
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兄弟が似てて、仲良いっていいな…✨続き楽しみです