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世利里🗝️🫧🖤(サブ垢)
チャクラ宙返り
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夜の森、あの封じられた記憶がよみがえる。
過去は血に縛られ、未来は霧に覆われていた。
けれど、その狭間で私は選択する。
“何を守り、救うのか”を──
月明かりの下、私は息を潜めていた。
闇の奥で近づこうとしている二つの影。
彼が辿り着くその瞬間を前に、胸の奥であの日の記憶が静かに目を覚ます。
━━雪の残る、寒い冬の朝。
病床の祖父は、自らの死期を悟っていたのだろう。
母、姉のイズミ、そして当時9歳の私を自室へと呼び寄せた。
静まり返った部屋。
皆の視線が集まる中、祖父はゆっくりと口を開く。
「……お前たちに、伝えておかねばならぬことがある」
その言葉の後、祖父は母に視線を向けて静かにうなずく。
そして部屋から下がらせた。
残ったのは祖父、姉と私だけ。
私達は祖父の言葉を待つ。
一拍の沈黙。
祖父は深い皺の刻まれた指で布団を握りしめ、低く続けた。
「お前たちには、初代火影・千手柱間様の“血”が流れている」
その名を聞いた瞬間、部屋の空気が一気に張り詰める。
「我らの始まりは…千手柱間様の姉上だ。……姉上の子が、お前たちの曾祖母。その曾祖母から生まれたのがお前たちの祖母…キリコだ」
祖父の言葉を聞いたイズミは息を飲み、膝の上で握りしめた拳が小さく震える。瞳が大きく見開かれ、信じたいのに信じきれない。
そんな葛藤が表情に現れていた。
私も頭では言葉の意味を理解しているのに、心が追いつかない。視線は自然と膝の上へ落ち、心臓の鼓動だけがやけに大きく響いている。
私たちが戸惑っている間も、祖父の話は続く。
──第二次忍界大戦の頃のことだった。
かつて千手一族と争っていたうちは一族、祖父シグレ。
そして千手一族であり、変化術やチャクラ制御、医療忍術に長けたキリコは、敵地に潜入していた特殊任務中に祖父と出会った。
互いの素性を知らぬまま、祖母は自分を庇って傷ついた祖父を救った。
その後、お互いの正体を知ってしまう。
しかし、惹かれ合った二人は駆け落ち同然で結ばれたという。
「……だが、当時はまだ千手とうちはの溝が深かった。
しかし、キリコは自身の正体を隠し通して…私と生きていく事を選んでくれたのだ」
祖父の声が少し震える。
「この事実を知った柱間様は…すでに病に伏し、死期も近い中であった。
それにもかかわらずあの方は…キリコは戦死したと記録を改ざんし、我らをかばってくださった。
…最後まで姉上の血を…自分の家族を守ろうとしてくださったのだ」
「この事実を知るのは、我ら家族と柱間様、そして二代目火影の扉間様のみ。決して生涯、他言してはならん」
祖父は私たちを静かに見つめた後、ゆっくりと話を続ける。
「ミズノ、お前が三歳の頃のことだ…」
その記憶は、私には残っていなかった。
しかし祖父の声と共に、当時の情景が浮かび上がる。
━━桜が舞い散る春の日。
座敷の片隅で、家で飼っていた白猫の”ハク”が家族に見守られ、静かに息を引き取った。
誰もが別れを受け入れようとしていたその時──
幼い私は、小さな指で印を結んだ。
誰にも教えられていないはずの印。
そして手のひらから淡く緑の光が溢れ、空気がかすかに揺れる。
白い花が咲いた枝がすっと手の上に現れた。
ハクと同じ色の白い花。
それをそっと亡き骸に供え、小さな手でその身体を撫でると──
ハクの体がぴくりと動き、呼吸をし始めた。
閉じられていた瞼がゆっくりと開き、金色の瞳が再び光を灯す。
その光景を見た父は息を呑み、母の瞳は驚きで震え、姉のイズミは声を発することすらできなかった。
「ミズノ…」
祖母は震える声で私を呼び、小さな身体を抱きしめた。
祖父は、震える祖母の肩に手を置く。
──その力に心当たりがあったからだ。
初代火影柱間の血継限界・木遁、そして命を呼び戻すほどの回復の力。
千手とうちはの血が混ざったことで、あまりにも特別な力を宿してしまった。
その日から祖母は、私に厳しくチャクラの制御を教え込み、祖父は二度とその力を使わぬよう私に言い聞かせたという。
祖父の声が、低く重くなる。
「ミズノ……お前は柱間様から受け継いだ木遁を使うことが出来る。
そして、命すら呼び戻す力がその身に宿っている。
その身に宿る力が、万が一…うちはに伝わる“瞳の力”と結びついてしまえば、忍界の秩序そのものを揺るがすやもしれん。……この事、決して忘れるな」
私は唇を噛み、身体を震わせながら視線をおとす。
隣のイズミが私の手をそっと握ってくれた。
「もし…その力を知られてしまえば、お前を利用しようとする者が必ず現れる。木ノ葉すら例外ではない。
場合によっては、災いの火種となりうる」
するとイズミが私を握る手に力を込めながら、口を開く。
「そんな事、絶対にさせない。私が…絶対にミズノを守る」
その声は震えていたが、眼差しは強く揺るがなかった。
祖父はイズミを見つめ、静かに頷く。
「もちろんだ、イズミ。ミズノを頼む。
そしてミズノ…今後も一切、木遁とその力は使わないと約束してくれ」
返事を待たずに祖父は私の方へ手を伸ばし、冷たい掌で額に触れる。
その瞬間──何かが胸の奥深くへと沈み込み、冷たく重く絡みついた。
「不測の事態に備え、その力が発動した時に反応する封印術を施した。これは…お前を守るためだ。
ミズノ…多くの重荷を背負わせ、自由まで奪い…本当にすまない」
祖父の声はかすれ、呼吸が浅くなっている。
「だが…これが…私にできる、唯一の守り方だ……」
最後の言葉が、白い息とともに消える。
祖父の手が、ゆっくりと私の額から滑り落ちた。
──障子の外で、雪が風に舞う。
赤く光る私の瞳から頬をつたったのは、悲しみだけではない。
どうして……私の意志を確かめてもくれなかったのか。
イズミは私を抱き寄せた。
その温もりが、凍りつくような私の心をかろうじて支えてくれた。
祖父が危惧していた通り、私の特別な力は万華鏡写輪眼と結びつき、大きな術を宿した。
大地を再生し、死した魂を呼び戻す力──。
発動条件は、対象の人物の身体が残っていること。そして私がその死の瞬間を見届けていること。
しかし、術を発動すれば封印の大樹が私を絡め取り、共に年月を重ね、やがて朽ちはてる。
雲間から覗いた月光が、髪を淡く照らす。
私は目を開き、遠くの気配を見据えた。
「術は、まだ未完成……。
だけど必ず完成させる。その為に全て見届ける」
──たとえ、この命が樹に囚われるとしても。