テラーノベル
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__記憶を消しても、残るものがある。
クラピカはついに、幻影旅団の一人として動いていた“赤い瞳の少女”の正体にたどりついた。
クラピカ「君は……なぜ、僕の前で“赤い瞳”を使った?」
夢主「……使ったんじゃない。隠しきれなかっただけ。
あなたを見たら、思い出しそうになった。
名前も、声も、家族のことも、全部、思い出してしまいそうで、怖かった」
クラピカ「君は……クルタ族、なのか?」
夢主は答えず、ただ静かにクラピカに近づく。
そして、小さく微笑んだ。
夢主「クラピカ。
あなたは、どうか“復讐”だけで終わらないで。
誰かを許す力を、いつか持てますように──」
次の瞬間。
夢主の瞳が、白く輝いた。
特質系能力《記憶封じの鎖(ラチェット・オブ・サイレンス)》。
自分自身の“過去の記憶”を封印し、旅団員としての人格だけを残す念能力。
強力だが、二度と取り戻すことはできない。
シャルナークが遠くからそれを見ていた。
彼は拳を握りしめたが、止められなかった。
クラピカ「……君は、今……何をした?」
夢主「…………? あなたは……誰?」
彼女の瞳はもう、クラピカを知らなかった。
ただ、どこか寂しげな光だけが宿っていた。
クラピカ「…………いや、こっちのセリフだ。
どこか……懐かしい香りがする」
そう言って、彼は微かに笑った。
それが、今の彼にできる精一杯の“救い”だった。
数週間後
幻影旅団の一員として、新たな任務に就く少女がいた。
名前は、もはや“コードネーム”だけ。
仲間たちは彼女を“ユメ”と呼ぶが、その本名を知る者は誰もいない。
マチ「なんだか、最近のユメ、静かになったね」
ユメ「そう? 自分では、変わった気がしない」
シャルナーク「……そっか。まあ、いいさ」
空に、雲が流れていく。
白く、静かに。
記憶のように。
クラピカはそのころ、一人で旅をしていた。
ノートの中には、ある“赤い瞳の幻影”の絵が描かれている。
その隣に、小さくメモがある。
「彼女は、もう僕を知らない。
でも……あの瞬間だけ、確かに“誰か”だった」
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