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お久しぶりです。
こちらはお友達に貢いだものです。
タイトルは適当です。
「なぁスタンリー。ダメか?」
そう言って指差されるのは目を疑うような金額の、己には良くわらかない科学道具。買えないほどの値段でもないが、今月すでに幾つか道具を買ってしまっているのでこれ以上は流石にダメだろう。
そう決めていたのに潤んだ瞳と上目使いに決意が揺るぎそうになる。
「うっ…ダメだ」
ダメだ。これは直視してはいけない。
虫眼鏡で太陽を見るよりも有害だ。と後ろを振り向くようにして目を反らすが、千空は反対に己に重心を寄せ目を合わせようとしてくる。
「どうしてもか…?」
飼い主に置いていかれた子犬のような切ない声に胸を鷲掴みにされるが、毎回この手で色々買わされているので今日こそは心を鬼にしなくては。
「っ、あぁ」
少しの沈黙のあと、ぱっと体が軽くなり不機嫌そうな声が聞こえてきた。
「ッチ、行けると思ったのによ」
「残念だったね。っ!?」
耐えきれたことにほっと胸を撫で下ろし、千空の方を向こうとすると顔を引き寄せられ唇に暖かいものが当たる。
「次は期待してるぜ、Darling?」
コンマ数秒思考が停滞する。
遅れて理解した現実に嬉さと呆れが同時に押し寄せ、溜め息と共にしゃがみこんだ。 これらを無意識でやっているとは、流石と言うべきかなんと言うか。
「どうした?」
「…いや、なんでも。とっとと帰ンぜ」
「?おう」
「誕生日おめでとう。センクー」
「?あ”ー、そういや誕生日だったな、今日」
「アンタ…流石に自分に関心なさすぎじゃね?」
「テメェがいうのかよ」
中略
「ん、これ」
渡した箱の中を覗いた瞬間、効果音がつきそうなほど千空の顔が明るくなり、ばっと顔を上げキラキラとした瞳に己を映す。
「っ!すたんり、これ!!」
「アンタがほしいっつってたやつ。ここまで喜んでくれるとは思わんかったけど」
「俺も買ってくれるとは思わなかったわ、ありがとな!スタンリー」
ニカッと笑った顔が眩しい。とても、
この笑顔のためなら何でもできそうになる。恋とは恐ろしいものだ。
「っと。センクー、?」
思いっきり抱きつかれ、警戒心も何もない行動に少し心配にすらなる。
(いつかワルい狼に喰われちまうぜ…アンタ)
もう手遅れかもしれないが、
「礼のハグだ」
嬉さといたずらっ子ような笑みの混ざった顔、
やはりこの顔には弱い。猫のようにすり寄ってくる。
不味い、欲が、
今日くらいはいいか、とそっと千空の頭を撫でる。
「明日、覚えてろよ」
その言葉は声になることはなく、心の中に沈んでいった。