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それから、上峰さんを探しながら見回りをする。
と、
『あそこ、なんか様子がおかしくねーか?』
如月さんが言う。
如月さんが見ている先に…
男がいる。
近づいて見てみると。
『あっ!』
そこに、
包丁を持った男がいた。
その包丁の刃が、
小さな女の子の首元に突きつけられていた。
『まずい、あの女の子を助けないと!でも、どうすれば…』
島田さんがそう言った。
どうやって?
人質がいるので下手に近づけなかった。
『こんな時、どうすりゃいいんだ?』
如月さんも、
いや、皆がどうすればいいかわからないようだった。
『・・・』
方法は、なくはない。
僕にしかできないかもしれないが。
『僕がこの銃で、男の右腕を撃てば助けられるかもしれません。』
右腕を撃てば、包丁を落とすかもしれない。
だけど、それは、
賭けである。
『それは…大丈夫なのか?』
最悪、腕に当たらず、女の子が殺されてしまうかもしれないし、女の子に弾丸が当たるかもしれない。
でも、他にいい方法は思いつかない。
『とりあえず、無線で伝えよう。』
島田さんが無線を取り出し、今の状況を伝えた。
そして、複数の隊が向かってくれることになった。
だが、
様子を見て判断するしかないとのことだった。
この状況では、どうすることもできないのだろう。
相手が油断をしない限り、チャンスはない。
でも、そんなのを待ってはいられない。
『どうすれば…』
岡野さんも心配そうだ。
まずい、移動しようとしている。
車で移動されたら追いつけない。、
最悪、もう見つけられないかもしれない。
でも考えても、いい案は浮かばない。
ん?
包丁…
『僕、とりあえず行ってきます。』
『銅!大丈夫なのか?』
皆が心配そうに見てくる。
『わからないです。だけど、行かないと。』
あの子が怖がっている。
僕は、向かう。
『琥珀さんは、そこに隠れてて。』
僕は琥珀さんに、近くの自動販売機に隠れるよう言った。
『おい!近づくなと、言っただろ‼︎』
包丁を持った男が、近くにいた人たちに怒鳴る。
僕は、近づいた。
試してみるか…
と、
男が、こちらに気づいた。
『おい!コイツが殺されたくなければ、それ以上近づくな‼︎』
僕はその場で止まる。
『お前、剣士かよ!今すぐ、持ってるもの全てを捨てろ!』
・・・
僕は、剣をその場に置いて、銃に手をかける。
そして、
銃もその場に置いた。
『それで全てか?』
僕は、手をあげて何も持っていないことをアピールした。
『剣士ごときが俺を止められると思うなよ!コイツの命がかかってんだ!下手なマネはすんなよ。』
男は、女の子を乱雑に扱った。
僕は気づかれないよう、ゆっくり深呼吸をした。
『君は、何が要望でこんなことをしたのですか?』
男がサッとこちらを見た。
『喋るな、お前には関係ねぇよ。』
・・・
『じゃあ、なぜそんなに悲しそうなんで…』
『喋るなと言ってるだろ‼︎』
男が怒鳴る。
その目に、悲しみが見えた。
男が近づいてきた。
『お前、調子に乗るなよ。剣士だからってヒーローぶるなよ。お前に、何がわかるんだよ!』
男の様子が気になる。
やはりだ。
やはり、この男は悲しいんだ。
僕は黙ったまま、悲しそうな顔をする。
『なんだよ、なんなんだその顔は!俺をおちょくってんのか?舐めてんのか!ああ⁉︎』
『辛いから、そんなに悲しそうなんじゃないのですか?僕には君の辛さをわかってやれないけど、でも…』
『そんなことはどうだっていいんだよ!黙れよ。悲しくなんてねぇんだよ!』
『こんなことをしたら、君が損をすることになる。そんなことをさせたくないんだ。』
『損をするなんて、んなことはわかってんだよ!でも、させたくないなんて嘘なんだろ?お前みたいなの、信じられるわけねーだろ!』
そうだ。
僕も、
『僕も、人を信じられない。人は嘘をつけるし、簡単に騙せる。人とはそんなものなんです。』
僕もまだ、心から信じられる人は…
琥珀さん、
あの子なら、信じられるだろうか。
『俺を!あんな奴らと一緒にするな‼︎』
男が大声をだした。
『今、君がしていることがどういうことかわかって…』
『だから、黙れよ!お前に何がわかるんだよ‼︎』
相手は、なかなか引き下がらない。
でも、
僕も引き下がらない。
『黙ってなんかいられません。関係のないその子を苦しめてしまったら、君を苦しめた人と同じことをしているのと変わらないんですよ!君がその子を殺してしまったら、もっと苦しむことになるんですよ!それでもいいんですか!』
『っ!わかってんだよ、そんなことは…でも、悔しかったんだよ!俺の全てをバカにされて!全てを取られて…辛かったんだよ……』
男が、涙を流しながら言った。
『僕には、君がどれほど辛かったのかはわかりません。僕が体験したわけではないですし、辛さの感じ方は人それぞれですから。でも、それがとても辛いことは僕にもわかります。今までよく頑張りましたね。』
僕は、優しく言った。
男は、女の子をはなしてしゃがんだ。
そして、泣いていた。
後ろから、島田さんと如月さんが来た。
『大丈夫だ。まだ、君ならやり直せる。』
島田さんが男に言った。
『スゲーよ銅!』
如月さんは僕の頭をガシガシと撫でてくる。
『あの人が持っていたものがナイフではなく包丁だったので、本当に悪い人ではないんじゃないかなって思ったんです。』
今までの多くの人はナイフを使っていた。
だが、この人は違った。
それが、少し気になっていた。
『それだけで行ったのか?』
正直、そうだった。
でも、
剣士として、人を守る以上…
『あの女の子が怖い思いをしている以上、早くあの場にいないといけない気がして…試してみようと思ったんです。』
最悪、近づいただけでってこともあるかもしれない。
今回のようになってくれなかったら、
それこそ詰みだ。
そう考えると…
今になって、安心した。
その途端、足の力が抜けたような感覚がした。
僕はそのまま、尻もちをつく。
『銅!大丈夫か!』
如月さんが心配してくれた。
遠くから岡野さんも心配そうな顔をして近づいてきた。
『だ、大丈夫ですか?銅さん…』
『はい。安心したらちょっと、腰が抜けてしまって…』
頭をかきながら笑って言った。
こちらの方はなんとかなった。
だけど…
『すまん、俺が1人にした方がいいなんて言って止めたから…』
その後も上峰さんは見つからなかった。