テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
洋食派‼︎
18,839
1,492
#雑談、お知らせ
めだまやき🍳
34
7
※ 蘇独
「 …ねぇ、ぼーっとしてるけど生きてる ? 」
昼下がりの公園で肩を叩かれ少し身体が跳ねた。
振り返るとそこには、さっきまで遊んでいたせいか服をどろどろに汚している親友が居た。
遊具から落ちたのか…それとも転んだのか。
彼は血の滲んだ腕を押さえていた。
自分が見ていない間にこうも怪我をして…全く、面倒な奴。
そこまで大した怪我では無いのが幸いだった。
傷口を押さえる手の隙間から少しだけ見える。擦り傷だろうか。
慌てて絆創膏を取り出すと、彼はへらっと笑って手を振った。
「 大丈夫だよ、これくらい。 」
いつもそんな事を言っているくせに内心痛がっているのだって分かっている。
幼稚園の年少さんからずっと一緒だったから、分かる。
「 もう … 大丈夫じゃないだろ。 」
溜息を吐いて絆創膏を彼の腕にぺたりと貼った。
平気だって、なんて言いながら首筋に汗を伝わせている。ばか。
血が自分の手に垂れた時、とくんと甘い匂いがした。
なんだろう。近くで何か売っていた記憶は無い。
多分、花とか、チョコとか、生クリームみたいな。
…甘いって感じたのは、かなり久しぶりな気がした。
自分は所謂、”フォーク” という人種だった。
フォークは後天的なもので、自分だったら彼と出会ってすぐ発症した。
家や小学校で食べたものが何一つ美味しいと感じられなかったから、気付いてしまったのだ。
彼には何一つ言っていない。
自分が世間で予備殺人鬼なんて言われている存在だと知れば、きっと離れて行ってしまうから。
例え彼がケーキでもフォークでもなんにもない人でも。
彼はきっと、フォークだったとしても仲良くしてくれるだろう。
そんな優しさは将来、ほぼ100%の確立で仇になる。
だから一生貫き通すと決めた。
「 ああ、ごめん…洗ってくる ? 水道、あったよ。血の味とか匂いってなんか嫌だよね。俺めっちゃやだ。 」
彼に手を引かれて水道まで来る。
蛇口を捻ると、じゃあ、と水が出て下へ落ちていく音が辺りに響いた。
それでも消えない甘い匂い。
自分は何を思ったか、彼が花に止まっている蝶を見ている隙に手に付いた血をぺろりと舐めた。
( __ 甘い。 )
涙がこみ上げてきて、危うく意味も無い泣き顔を彼に見せてしまうところだった。
さっきの甘い匂いとは比べ物にならないくらいの感覚。
幼稚園の頃から途切れて、数年ぶりに感じた味覚。
それだけで心が折れそうだった。
ケーキだ。彼は。
ケーキがどういうものかなんてそこまで詳しくは知らないけれど、本能的に悟ってしまった。
「 … ねぇ … 」
「 ん ? 」
彼が蝶から顔を上げて、赤い瞳でこちらをじっと見つめた。
手に付いた血みたいに、真っ赤な瞳。
こちらを覗く顔が不思議そうにしていた。
話しかけたはいいものの、何を言えばいいか数ミリも考えていなかった。
どうしようか。「 君と俺はもう一緒に居ちゃだめだ 」 って言わなきゃ駄目なのに。
彼を失うのがどうしても怖かった。
生まれつき俺と彼は一緒になれる運命じゃなかったのに。
この友情が、いや…この恋心が体質のせいで無くなってしまうなんて想像すらしたくなかった。
「 … なんでもない 。 」
目を逸らして手を洗った。
申し訳なさと、甘味への…どうしようもない興奮がごちゃごちゃに混ざって。
もう目を合わせられる気もしなかった。
彼はこちらが慌てて何かを隠しているのを察したのか察していないのか、何も言わず笑っていた。
なんでか此処に居てはいけない気がしてその後はすぐ帰ってしまった。
彼はぽかんとしていたけど。それにかまっていられるほどの余裕は無かった。
怪我をしていた腕。
赤くなったところ。
そして、あの甘味。
その招待を整理出来ないまま早足で帰った。
「 … 変なの 、 」
そう言う彼の声が微かに聞こえて、遠ざかって行った。
こうやって知ってしまったことが地獄の始まりだとはまだ、考えていなかった。
コメント
1件
読ませていただきました…。正直、すごく心臓がギュッてなりました。フォークとケーキの設定、すごく好きです。友達の血を舐めて「甘い」って気づく瞬間の絶望と抗えない衝動、よく描けてるなって思いました。彼を失いたくないって気持ちが痛いほど伝わってきて…これからどうなるんだろう。続きがすごく気になります。素敵なお話をありがとうございます🤍🥀