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涼しい気候が続く季節。春に入り何もかもが変わったように見える。自分はここから再スタート……今まで培えなかったものを今回こそは、と心の中に留め今日の日を終える。この日々は一体いつまで続いて、またいつ終わるのかなんて予想がつかない。
だから、一瞬一瞬を忘れたくない_____。
朝。「喜兎、そろそろ起きて。今日は入学式でしょ」
(この声はお母さんの…)
そういえばもう、その日が来たんだ。
「はーい、何時に家出る?」
「もう準備出来たらすぐ行くわよ」
「了解」
急いでまだ新品の制服を出し、糊の匂いがするな…なんて考えながら制服に身を包む。これから高校一年生。自分は果たしてやっていけるのか、本当に不安ばかりでやってられない。
「ん!用意できたよー。お母さん」
ここから学校までは正直そう遠くない。学校が始まれば徒歩で通うつもりだ。歩いて20分ほど。ほぼ家を出て一本道でまっすぐ行き右に曲がると右手側に校舎が見える。意外にも洋風な造りでこの辺りでは少し有名だ。
何よりこの学校はこの辺りで唯一窓からでも海が見えるという事で進学者も多い。
俺は家から近いってだけで選んだだけだけど。
それはそうと、学校に着くや否や思ってた以上の人の多さに圧倒された。入学式は無事に進行され終わりを迎えた。クラスも割りふられ確認してみると7組あるうちの4組だった。
(明日から……頑張ろう、ぜったい)
友達なんて出来なくても勉強はしようなんてこんな考えは後々虚言になる。
翌日の学校。「行ってきます」とお母さんに家に言い、飛び出す。足は軽いようで学校に近付くにつれて重くなっていった。(大丈夫…)と自分に言い聞かせながら自分の新しい席まで急いだ。
────席に着くとどこか懐かしい感じを脳が掠める。
自分の席は窓側の1番後ろ。窓の外には水平線が見える。 毎日ここで水平線を拝むのが日課になりそうだった。
隣の席の子がチャイムが鳴る寸前くらいにきた。(…名前なんだっけこの人)
昇降口に貼られていた名簿を思い出してどの人だと記憶を辿る。でも中々思い出せそうじゃない。
ガラッ、先生が入ってくる。
「今日からこの1年4組の担任の東(あずま)だ。何かあったらいつでも俺のとこに来てくれたら最善を尽くす。よろしく」
短い挨拶だな、俺はなんとなくそれ以外考えなかった。
「なあ、今日から俺と友達になってよ」と急に隣の席の子が言ってきた。
「え、」と俺はたどたどしくなってしまう。
「俺、神島誠(かみしままこと)。よろしく」
「あ、俺は早河喜兎。俺でよければ友達になって欲しい」
「何そっちがお願いしてんだよ(笑)ありがと」
それから俺たちは趣味やらなんやらで気が合い、いつの間にか帰りも一緒に帰ることになった。
(俺にこんな入学早々友達できるもんなんだな…)
少々今日一日の出来事に緊張を覚える。こんな事が自分にあっていいのか。家に着く頃には今日起きたことが夢のように思える。そういえば最後に見た夢はなんだっただろうか。
どこか遠い記憶のように思いを馳せる。きっと自分は大丈夫だろう、なんて根拠のない安心を自分に与える。可もない不可もない高校生活を願ってその日の俺は床に就いた。