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桜と梅宮が手を繋ぐようになってから――
少しずつ、少しずつ、二人の間にあった壁が壊れ始めていた。
「――ねぇ、桜」
梅宮の声が、いつもより優しく響く。
「ん?」
桜は、手に持ったマンガを読んでいたけど、その目はどこか落ち着かない。
梅宮の声に反応して、ちらりと顔を上げた。
「お前さ、これからも俺と一緒にいるつもりなのか?」
その言葉に、桜は驚いたように目を見開く。
そして、少しの間、黙って梅宮を見つめた。
「……お前、何言ってんだよ?」
「だから……」
梅宮は、顔を真剣にして言った。
「お前のこと、放っとけないんだよ。俺、桜と一緒にいたい。」
桜は言葉が詰まったように、何も言えなくなる。
でも、その心の中では、梅宮が何を言いたいのか、なんとなく分かっていた。
桜は思い切って、梅宮をじっと見つめる。
その顔に、少しの照れを感じるけれど――
「……だったら、オレもお前と一緒にいたいけどな」
桜はやっぱりツンとした顔で、そう言った。
その言葉が、梅宮の心にしっかりと届く。
「でも……」
桜の顔が少し赤くなる。「でも、オレが言うのもなんだけど……お前、意外と優しいんだな?」
「ん?お前、今さらそれを言うか?」
梅宮が笑いながら桜の頭を軽く撫でた。
「だって、お前のこと、嫌いになるわけないだろ?」
桜は、ふっと目を伏せた。その瞬間、梅宮が桜の手を引き寄せ、そっと近づく。
「……お前、俺が好きだよ」
その言葉に桜の心臓はまた一瞬で跳ねた。
「……っ!バ、バカッ!!!」
桜は顔を赤くして、梅宮を突き放すけれど、その手はしっかりと梅宮に掴まれていた。
「なっ……」
「お前も、俺のこと好きだろ?」
「……ち、違うっ!」
桜は顔を背ける。でも、その口元には、明らかに笑みが浮かんでいる。
「そうか……じゃあ、こうしていい?」
梅宮は、桜の顎を軽く持ち上げると、そのまま、静かに、ゆっくりと――
桜の唇にキスをした。
桜は完全に硬直して、最初は動けなかった。
でも、梅宮の温もりが伝わると、少しずつその心もほぐれていく。
気づけば、桜も少しだけ目を閉じて、キスを受け入れていた。
キスが終わると、梅宮が、ほんの少し照れくさそうに笑った。
「……あぁ、もう、バカ……」
桜はしばらく梅宮の胸に顔をうずめたまま、ただ静かにその温かさを感じていた。
「お前がいると、なんか安心するんだよな……」
「お前も、そうだろ?」
桜は小さくうなずいて、梅宮の手をもう一度ぎゅっと握りしめた。
「……うん」
その手を離さず、二人はしばらく何も言わずに歩き出す。
未来なんてわからない。
でも、今だけは、この手を繋いでいれば――どんなことでも乗り越えられそうな気がする。