「…なんか雰囲気違う。」
『変?』
「いや、いいと思う」
ほら、やっぱり。彼は気づいてくれた。褒めてくれたらいいなって思ってた。どんな反応するかなって小さな期待もあった。この嫌な気持ちも吹き飛ぶかもって。
でも実際の反応を見ると嬉しさではない感情が溢れて涙が出てきた。優しい彼が大好きだったのに、嫌になってる。
「えっ、は?なに?どうした?」
『…わたしたち、別れる?』
「……は?!なんでそうなんの?! 」
彼はどっちかというと冷たい印象を持たれるけど、約束は忘れないし、小さな会話も覚えてくれてるし、具合が悪いときはすぐに気付いて気遣ってくれる。ふたりのときは甘えてきたりする。そんな優しい彼が楽しくないって言うなんて、よっぽどだと思うんだ。
かわいい髪型も、綺麗な服も、滑稽だ。
褒めてくれたけど、やっぱり変わったね。前はちゃんとかわいいって言ってくれたのに。
『もうやだっ!別れるっ』
気持ちの奥底は伝えられずに、言い放って走ってしまった。
彼から言われるのも嫌だ。
彼の心が離れていくのも耐えきれなかった。
ほら、追いかけて来ないじゃん。
泣いたままで電車には乗れないから、人通りの少ない駅前のロータリーのベンチで落ち着こうと呼吸と整えた。 すると、すぐ目の前に誰かが立つ。
一瞬彼かと思ったけど、違った。
『え、、』
「やっぱお前か。なに、泣いてんじゃん」
『泣いてないよ』
「すぐわかる嘘つくんじゃねぇよ」
その人は、慣れた手つきで私の頭を撫でた。
「ふられたー?」
『…』
「うわ、地雷踏んだ、帰ろ」
そう言いながらも帰る様子は見せずに頭を撫でてくれる。
「胸貸そうか」
『いらない、ばか』
「こんなにかわいいのにねー」
泣き止めよと言うふうにひたすらに頭を撫でてくれる。
その時だった
「なにやってんの」
今度こそ、本当の彼が現れたのだ。
『…え?!あき、え、なんでっ』
いきなりのことに上手に喋れない私を他所に強い力で引っ張られる。後ろをむくと慰めてくれてたその人は手を振るだけ。
『…ちょっと英、』
「おまえどういうつもり?」
『え?』
「なんで俺以外の男と親しげに一緒に居るんだよ、!」
英は頭に血が登っているのか、いつもより口調が荒い。
でも、怒ってるのは英だけじゃないよ。
『それ、英が言うの?』
「は?」
『あの子にしてるのと、何が違うの?』
「いやっ、今のやつには下心とかあるかもしんねーじゃん」
『うん、だから。それを英が言うの?』
二度目は強調するように言う。
すると意味がわかったのか、バツが悪いのか彼は俯いた。
「…ち、がう、アイツはそんなんじゃ、」
『じゃあ下心がなかったらいいんでしょ?私だって一緒に帰ったり、出掛けたり、問題ないでしょ?』
「…なんで、駄目だろ…」
『自分は良くて、私は駄目なの?なんで?』
「… 」
『あの子の気持ちも知らない英に言われたくない。私は今の人とそういうの無いってわかってるから』
「そんなのっ」
『わかるよ、今の人は私のお兄ちゃん』
「は?」
英が勘違いしているのは分かってた。でもこの話に持っていく為にあえて言わなかった。
『もう一度聞くね。私は駄目なこと、自分はいいの?』
「…」
『もしそうなら、私と英とはもうやっていけない。英には悪気がないから。英の普通と私の普通が違う以上、私達はこれからうまくいかない』
「…ごめん」
『英、無神経な優しさはね、人を傷つけるよ』
掴まれていた腕をそっと解く。
『わたしだって、もう一緒にいても楽しくないよ』
「っ」
『別れよ、英』
もう一度、ちゃんと言う。
最後くらい、笑え。
笑え。
わたしばかり好きで好きで好きで、ずっと辛かった。
この服も、この髪型も、かわいいって言われたかった。
誰でもない。英のためだったんだよ
コメント
2件
やばい涙出る
(´;ω;`)切ないなぁ