テラーノベル
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第14実験室の隣、さらに低温に設定された第15実験室。そこには、数日前まで外資系証券会社で数億の金を動かし、冷徹に部下を裁いていた男――かつての「誠也」がいた。
今の彼は、ただの【NYXSPEC-002】。
全裸で、羊水に似た生温かい粘性液が満たされた円筒形のカプセルの中に浮遊している。
「……002。君のカルテには『過度の重圧による精神衰弱と、強い自罰感情』とある。ここでは、その肥大化した自意識を、物理的に粉砕し、再構築する」
スピーカーから流れる研究員の冷徹な声。
002は視界を遮断され、耳には低周波のノイズだけが流れる「感覚遮断(アイソレーション)」の状態に置かれていた。外界との接触を断たれた脳は、自身の鼓動や血流の音さえも爆音のように拾い上げ、極限の過敏状態に陥っていく。
「やめてくれ……いや、殺して、くれ……っ」
「殺しはしない。君が求めたのは『責任からの解放』だろう。……では、そのための処置を開始する。『深部感覚への電撃的介入・多点同時刺激プロトコル』」
カプセルの底から、数本の触手のような精密マニピュレーターが伸びた。
それらは彼の意志を嘲笑うように、硬く閉ざされた後孔(アヌス)へと、無機質な潤滑剤と共に侵入した。
「ひっ、がっ……あ、あああああぁぁ!!」
マニピュレーターの先端が、前立腺の最も過敏な一点を正確に、執拗に抉り始める。
同時に、彼のペニスには導電性のリングが装着され、脈動に合わせて微弱な電流を流し込んだ。
浮遊状態で踏ん張ることもできず、逃げ場のない快感が脊髄を駆け上がる。
それは、彼が知っている「セックス」とは次元が違った。脳の報酬系を直接ハンマーで叩き壊すような、暴力的で、それでいて脳がとろけるほど甘美な「内側からの爆発」だ。
「……っ、は、あ、ああ! だめだ、これ、は……っ! 私は、私はこんな……ッ!」
「羞恥心は、最高の触媒だ。有能な君が、機械に弄ばれて獣のような声を上げている。……見ていろ、君の『プライド』が崩れる瞬間を」
カプセル内に透過ディスプレイが点灯し、彼自身の無様な姿が映し出された。
数日前まで高級スーツを纏っていた男が、今は全身を痙攣させ、涎を垂らし、機械のピストンに合わせて腰を振らされている。
「あ、あぁ……ぼく、が……こんな……ひどい、かお……っ」
「いい反応だ。自尊心が壊れる瞬間に分泌されるアドレナリンが、絶頂をさらに深める。……さあ、リミッターを解除するぞ」
さらに、カプセル内に高濃度の催淫ガスが充満した。
002の体からは、一度の絶頂を終えてもなお、止まることのない精液が溢れ出し、周囲の粘性液を白く濁らせていく。空打ちを強要される射精管の痛みさえも、増幅された神経が「極上の疼き」として脳に誤認させた。
「あああ! もう、いい……! ぼくは、002……ただの、番号でいい……っ! 仕事も、名前も、いらない……っ!!」
彼が自ら「人間であること」を放棄し、番号を受け入れた瞬間。
電極の出力が最大に引き上げられ、彼の脳内は真っ白な閃光に包まれた。
カプセルの中で、002の筋骨逞しい肉体は激しくのたうち回り、粘性液を激しく波立たせる。
やがて、ぐったりと脱力した彼のうなじには、001と同じく、青白く光る刻印が鈍く輝いていた。
【NYXSPEC-002】
「……システム、安定。002も『馴染んだ』ようだな」
研究員は満足げにメモを取り、モニターを切り替えた。
そこには、隣の部屋で同じように虚脱した表情を浮かべる001(ミウ)の姿がある。
「次は、001と002を対面させる。……『共鳴の檻』。一人の快楽を二人が共有し、一人の絶望を二人が分かち合う。……その時、彼らはどんな美しい悲鳴を上げるだろうな」
深い山の夜。
社会から脱落した男と女は、それぞれ別の地獄の中で、等しく甘美な虚無へと堕ちていった。
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