傷ついた心、君のせい

春の風が柔らかく吹き、街の中には新たな始まりを予感させるような空気が漂っていた。しかし、智也の心はそれとは裏腹に重く、息苦しいものだった。
数週間が過ぎ、智也は春菜と三咲、そして自分自身との関係に迷っていた。どちらかを選ぶことができずに、彼はどちらとも十分に向き合えないままでいた。そんな彼に、ふと一つの結論が浮かび上がった。それは、もう一度、二人としっかり向き合わせるべきだという決意だった。

そして、その決断を下した日、智也は春菜と三咲、それぞれに一通の手紙を渡すことにした。手紙の中身はシンプルだったが、彼の心の中にあるすべてを詰め込んだ。

春菜には、心からの謝罪と感謝を綴り、彼女が自分に与えてくれた愛に対して感謝していることを伝えた。しかし、それと同時に、彼女が抱えていた痛みや不安にも触れ、これ以上一緒にいることが、春菜にとっても自分にとっても正しい選択ではないことを伝える決意を固めた。

そして、三咲には、再び自分の心が彼女に引き寄せられていることを告げた。しかし、これ以上彼女を苦しめたくないという思いも込めて、彼女が再び自分を受け入れてくれるかどうかはわからないことも正直に伝えた。

智也は、手紙を二人に渡した後、学校の空気が一気に重くなるのを感じた。それは、ただの告白や告白の返事ではなかった。彼が送った手紙には、これからの彼の人生における大きな決断が込められていた。

しばらくして、智也は春菜と話す機会を持った。春菜は冷静に、そして心を込めて智也の話を聞いた後、静かにこう言った。

「智也、あなたがどんな決断をしても、私はあなたのことを大切に思っている。でも、あなたの心がどこにあるのか、私はもう知っている。それを受け入れることは、私にとっても辛いけれど、あなたが本当に望む場所に進んでいってほしい。」

春菜の言葉は、智也の心を痛めたが、同時に彼女の優しさが胸に響いた。彼女はすべてを理解し、受け入れる準備ができていた。

その後、智也は三咲とも向き合うことができた。三咲はしばらく黙っていたが、智也が告げた言葉を受け入れた後、やっと静かに答えた。

「智也、私もあなたの気持ちはわかる。でも、私はこれ以上あなたに傷つけられたくない。もし、あなたが心から私を選んでくれるなら、私は待つことができるけれど、今はそれができない。」

智也はその言葉を胸に刻みながらも、三咲の目から一筋の涙が流れたのを見逃さなかった。それは、彼女の心がまだ智也に対して愛を抱えていることを示していたが、それと同時に彼女の心もまた決別の瞬間を迎えつつあることを意味していた。

その日、智也は再び自分の心を見つめ直した。彼の心は三咲に引き寄せられていたが、同時に春菜に対する感謝の気持ちも大きかった。彼は、再び別れを選ばなければならないという現実を受け入れなければならなかった。

しかし、彼が本当に選ばなければならないのは、誰でもなく、自分自身であることに気づき始めていた。

その後、智也はひとりで夜空を見上げながら、心の中で静かに誓った。

「僕は、これから先、誰かのために生きるのではなく、僕自身のために生きるんだ。」

その決意が、智也にとって新たな一歩を踏み出す力となり、これからの彼の人生においても大きな影響を与えることになるのだった。

そして、再び訪れた別れの日が、智也にとってただの終わりではなく、新たな始まりを意味する日でもあった。