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大正
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裏五条
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異世界・ヴァルガラ。
数十年にわたり、ただの一度も敵対する組織に発見されなかったアトミルカの本拠地。
ついに、探索員協会による明確な侵攻を許す。
「2番様」
「見ていれば分かる。3人か。……だが、いずれもかなりの手練れだな」
ヴァルガラの入り口、異界の門から現れた敵を見据えて、2番と3番は冷静だった。
同時多発的に発生した重要拠点への侵入。
それを察知した時点で、2番には既に予感があったのである。
「3人ともデータベースの照会で該当者がありました。最後尾にいる男が雨宮順平上級監察官。その露払いでしょうか。前に構えているのが、川端一真監察官と水戸信介監察官です。いずれも日本探索員協会の幹部であり、一騎当千と呼んでも差し支えないかと」
3番がモニターに情報を並べて表示させた。
2番は「うむ」とだけ答えて、しばしの間、知り得る限りの敵に関するデータを頭に叩き込み整理する。
「雨宮と川端はカルケルで見かけたな。私は直接相手をしていないが、特に雨宮の戦闘力は驚異と言っても良いだろう。川端も相当な使い手だが、こちらは私が相手をするほどではない。3番。8番を連れて、雨宮以外の2人を対処しろ。できるな?」
「殺しても構いませんか?」
「いや。可能ならば生け捕りが好ましい。こちらの手札はまだ少ない。もはや、好む好まざるとも言っていられん。精々、その身柄を利用させてもらおう」
「ははっ。了解しました。では、準備をして参ります。その前に……」
3番は通信機を起動させ、8番に連絡する。
「8番。出番です。装備を整え、5分後に本部へ来なさい。敵襲です」
8番は、現在の新生アトミルカにおいて唯一無役のシングルナンバー。
元Z5番。名前はバッツ・ホアン・ロイ。
彼にだけ任務や司令官職を与えられていない理由はと言えば。
『3番様! 自分、今しがた定食屋で怪鳥の照り焼きを5人前ほど注文したのですが! それを食べてからでも良いですか!!』
「良い訳がないでしょう。照り焼きは敵を殲滅してからにしなさい」
極めて戦闘力は高いものの、反比例するように知略に欠けるそのアンバランスさ。
端的に言うと「8番の指揮官を任せるとその部隊が機能しなくなる」からである。
しかし、繰り返すがその戦闘力はシングルナンバーを任せるに充分であり、先々代の5番、現在は8番とウォーロスト暮らしを挟んでもシングルナンバーとして登用されている事実がそれを証明している。
「ザール。お前はヴァルガラの住人をシェルターに避難させろ。そうだな。理由は、大型のモンスターの群れが現れた事にでもしておくか」
「はっ! さすがバニング様……。敵の急襲を受けても住人を気遣われるとは……!!」
「ふっ。甘いと言いたいか? だがな、彼らはアトミルカではない。ならば、我々の作戦行動で犠牲になるのは筋違いだ。私や1番様は長らくこの地の世話になっている。安全を確約するのは当然だ」
「……ご立派です! 自分はあなたの部下である事を誇りに思います!!」
そう言うと、10番は駆け足で本拠地を飛び出して行った。
2番は「やれやれ。ザールは才能ある若者だが、いささか人の善意にほだされる傾向があるな」と微笑しながら彼を見送った。
続けて、簡単な防具を身に着けた2番は大きく息を吐く。
「……では、敵を一掃するか。1番様の住まわれる園に土足で足を踏み入れることはまかりならん」
先んじて出撃した3番に続き、アトミルカの屋台骨もゆっくりと戦場へ赴く。
◆◇◆◇◆◇◆◇
こちらは、見事に当たりを引き当てた雨宮隊。
だが、彼らはここがアトミルカの本拠地だと気づいていない。
福田弘道オペレーターによるサーベイランスの索敵でも、特に脅威は発見できなかったためである。
伊達にアトミルカも数十年この地に潜伏していない。
証拠の隠滅は完璧に行われていた。
「あららー! まあ、のどかな所だねぇー! ほら見て、水戸くん! なんかモコモコした鳥さんがいるよ! かわいいねぇー。いやぁ、癒されるなぁ」
「どれだけのんきなんですか!! アトミルカの本丸じゃなくても、ヤツらの何かしらの拠点である可能性は極めて高いんですよ!!」
「そうだねぇー。多分、アレじゃない? 避暑地だよ! 軽井沢的な!!」
「いや! 01番さんの秘匿データに軽井沢的な場所をわざわざ記録します!?」
「水戸くん! 軽井沢に失礼でしょ! 謝りなさい!!」
「た、確かに……!! すみませんでした! 軽井沢、最高です!! 行ったことないですけど!!」
雨宮と水戸が師弟漫才をしている間にも、川端一真監察官は福田と共に警戒任務にあたっていた。
彼はおっぱいに生涯を捧げているだけで、「仕事人」の異名を誇る優れた監察官である。
そんなおっぱい男爵が、急速接近して来る煌気反応に気付いた。
彼は「雨宮さん! 水戸くん!!」とだけ叫び、次の言葉を発する代わりにスキルを放った。
「つぇりゃあ!! 『鋼鉄蹴撃破』!!」
「ボンバァァァァァァ!! ファイアァァァァァァイ!!!」
全身をメタルゲルの外皮で作られた鎧に覆われた大男。
8番。バッツ・ホアン・ロイである。
メタルゲルの外皮の正しい使い方は装備の素材にする事であり、間違ってもソース代わりに食べるものではない。
誰に向けて言っているのかについては、諸君のご想像にお任せしたい。
「あらー! すっごいパワー!! 地割れみたいなヒビが入っちゃったよ。川端さん、水戸くん! 私もそっち行った方が良いかな?」
8番の『ボンバークエイク』により、大地には相当な深さの亀裂が走る。
幅が10メートルは優にあるため、気軽に飛び越えるという訳にもいかない。
「それには及びませんよ。あなた方を分断したのは私の策です」
「この男……! 事前の資料で見ました! アトミルカナンバー3ですよ!!」
3番も現場に到着。
例によって、『圧縮玉』を多数持参している。
「なるほど……。雨宮さんの素性を知っているのか。ゆえに、我々と別離させた。……あまり私たちを舐めないでもらおうか。私も水戸くんも、監察官だ」
水戸は『ムチムチ鞭』を取り出す。
川端も得意の蹴り技を再度繰り出せるよう、身構えた。
だが、3番は「ふっはっは。思い違いをされているようで」と不敵に笑う。
彼は続けた。
「私たちがあなた方2人をこちらにお招きしたのは、あの方の邪魔にならないようにするためですよ。私たちレベルのスキル使いがちょろちょろと動いては、あの方が本気を出せませんからね」
実に良いタイミングで、『噴射玉』を使い飛来してきた2番が静かに着陸した。
当然だが、雨宮の前にである。
「雨宮上級監察官だな」
「あららー。そのダンディフェイスにはおじさん覚えがあるよー。ちょっとー。福田くんってばー。私たちが当たりを引いてるじゃないのやだー」
雨宮は全てを理解した。
当然、川端と水戸も感づいている。
「ふっ。名乗るまでもないか。とは言え、一応戦いの礼節をこなさねばな。……私がアトミルカナンバー2だ。上級監察官。お前が倒されるまでのわずかな間、覚えておいてもらおう」
自己紹介を終えると、2番は『魔斧』を具現化させた。
噴き出す煌気の量を見て、雨宮は困ったように頭をかく。
「これは本気を出さなくちゃ、おっぱい祭りの前に死んじゃうねー。あーあー。ダンジョンでハッスルするんじゃなかったよ」
雨宮も珍しく臨戦態勢。
『物干竿』を伸ばし、クルクルと回転させる。
これがアトミルカの本拠地で行われる、初めての対人戦。
あの雨宮順平が本気になる。
それだけで、事態の深刻さの表現としては充分であった。
コメント
1件
うぉおおお!!雨宮隊、まさかの本拠地直撃じゃん!!しかも対峙するのは2番と3番、バッツまで出てきて完全にボスラッシュ状態状態😭💥福田くんの索敵が完璧だったのにまさかアトミルカがここまで隠蔽してるとは思わなかった…油断ならねぇ! でも一番胸熱だったのは「あの雨宮順平が本気になる」って一文!物干し竿構える雨宮さんの緊張感、普段のノリからは想像できないほどシリアスでゾクゾクしたよ…!川端さんと水戸くんが別部隊に分断されたのも気になるし、次話もう待てない!!🔥