数日は何もなくて、でもあれ以降不思議と僕は少しずつ前みたいに眠れるようになっていった。
悶々としていた気持ちを若井が忘れさせてくれたのおかげ?
『今日、行ってもいい?』
ちょうどそのメッセージが来たのは翌日で僕はもちろんいいよ、と返事した。
「お邪魔します」
昨日も会ったっていうのに若井は嬉しそうに僕の家にやってきた。
「いらっしゃい···」
「うん···涼ちゃん、もしかしてもう眠れるようになった?最近前みたいに顔色いい」
若井の方から言い出してくれるなんて、と安心した僕はバカだ。
今更ごめんねなんて都合のいいことを言って終わると思っていた僕は阿呆だ。
「うん···そう。若井が煮詰まってた僕の気持ちを溶かしてくれたおかげなのは確かだと思う。おかしくなってたんだと思う···夏のせいにするつもりはないけど、どうかしてた···本当にごめん」
しっかりと頭を下げながら、どんな返事がくるか心臓がバクバクしてしまう。
「俺は涼ちゃんのせいだとか悪いとか思ってないから。だって俺は涼ちゃんのこと大好きなんだよ?」
「若井···」
「でも、涼ちゃんをあそこまで追い詰めたのは元貴のせいって思うとね、俺は···俺の方が」
オカシクナリソウ。
若井の唇が声無くそう動いた気がした、けどその瞬間もう僕は若井に抱きしめられて手を後ろに回されてカシャン、と嫌な金属音とともに僕は拘束されていた。
「は···?」
「用意するから、ちょっと待っててね!」
ふふん、と鼻歌なんて歌いながら若井が目の前でTシャツを脱いでから鞄から取り出した別の服に着替えて更に香水みたいなものをシュ、と振りまく。
その見覚えのある服と甘い香りに頭の中はパニックになっていく。
「···そ、それって··· 」
「さすが涼ちゃん、すぐわかるんだね···妬けるなぁ。大正解、元貴の服借りてきちゃった···それに香水は一緒のを買ったんだよ」
なんで?
なんでそんなことする必要があるの?
こんなはずじゃなかったよね?
もうおしまいにするつもりだったのに。
···それは僕だけだったってこと?
後ずさった僕を抱き抱えて寝室に向かう若井に抵抗しようとしたけど腕をギュッと握られて痛みで力が抜ける。
「痛くしたいわけじゃないから抵抗しないで。涼ちゃんは受け入れてくれればいいだけなんだよ。元貴だと思って俺に抱かれて?」
「そんなことできないよ!」
「出来るよ···俺、上手にやるから···元貴のフリするから!だから受け入れてよ、俺はそれでもいいからさぁ!」
若井がそう叫んで僕にキスする。
自由にならない手のせいで頬を掴まれると抵抗出来ずに受け入れるしかない。
「わかい···やめて···!こんなの若井のこと傷つけるだけだよ!」
「傷ついてもいい、涼ちゃんが手に入るなら。そんな半端な気持ちじゃない」
ぢゅ、と唇を吸いながら上顎を舌でなぞられてゾクゾクと快感が背中を走る。
「これ、好き?もっとねぇ、しようね、りょーちゃん」
胸は手でイジられて深くキスされながら元貴の香水の匂いが、それだけじゃなくて元貴自身の匂いもするなんて僕の妄想が過ぎるんだろうか。
「元貴は俺のことが好きなのかな、どう思う?」
「ぅ、ぁ···っ」
「だって元貴の脱いだすぐの服貸してくれるとか普通してくれないよね?どう?嬉しい?元貴のにおいする?」
「ふっ、ぁッ···やっ···」
若井の熱い手が下半身をなであげる。
そこは硬くなってて濡れている感触があって自分の言葉とは裏腹だ。
「元貴はどんな風に涼ちゃんを愛するかな、イジメるの好きそうだしいいところばっかり責めるのかな?」
「ひっ···ぁ!や、め、て···」
まだ抵抗しようとする僕は脱がした服で目隠しされて、増やされた指でいいところばっかり触られる。
覆いかぶさった若井からは元貴の匂いしかしなくて視覚が無くなった僕はそれに嫌でも反応してしまう。
「いいでしょ?りょーちゃん···いっぱいイきな」
「ッく、あっ!いっ···!」
前を同時に責められて呆気なく出してしまう。
これは元貴じゃない···元貴は僕のことを好きじゃない、抱いてなんかくれない。
ハァハァと息を整えながら現実を見ようとするのにそれを許してくれない若井が僕に挿入ってくる。
「···ぅ゙~っ!」
「りょーちゃん、良すぎるよ···!」
何度も入ってきて良いところも苦しいくらいの奥も突かれて頭が真っ白だ···いい、良くない、いいけど、だめ。
「元貴って呼んでいいよ」
「だ、め···!ゔぅ、ぁッ···!」
「呼んで、名前で···もときって」
もう、だめ。 身体は正直で全部喜んで受け入れて元貴の匂いに包まれて幸せを感じてる。
「ほら、呼んでよ、名前···」
ごめん。
ごめんね、若井。
「···ぃ、もときぃ···」
「うん」
「元貴···すき、大好き···」
「うん···」
「っく、ぁっ、ぁ···っ」
少しの間止まっていた動きが再開されて更に激しくなって、 拘束された僕はただそれに合わせて声をあげる。
「いっ、ぁっ、んんッ、あっ···」
「涼ちゃん、涼ちゃん···っ」
ぐっ、と奥に押し当てながら2人同時に果てる。
身体に被さるように力が抜けた若井の重みは気持ちよくて、背中の下敷きになっていた腕は痺れて痛かった。
「手···ちょっといたいかも···」
そう言うと外してくれたけど若井は黙ったまま、でも赤くなった手首を優しく撫でてくれた。
そっと若井の背中に腕を回して抱きしめると僕の肩に頭を顔をうずめた。
言葉が出なくて、なんて言ったらいいかわかんなくて、自分の気持ちもわからなくなっていた。
「涼ちゃん···理解出来ないと思うけど俺はこんなことしてでも求められたかったんだ···」
絞り出すような若井の声が胸に刺さる。
わかるよ、全部とか完璧じゃないけど。
僕も元貴をそのくらい求めていたから、理解は出来る。
「わかる気がする···僕もそれくらい求めていたから···たぶん、若井が想像する以上にね、僕は汚くて卑怯だ」
そんな自分が嫌でみっともなくてもそれを超えて求めてんだ、それぞれの愛しい人を。
行動に移した若井と、それを良いように利用している僕、どっちが黒いですか? 寂しさ故と許されますか?
「俺たちどうしたらいいのかな···」
ここから動けなくなりそうで、答えが欲しくて涼ちゃんにくっついたままそう声にする。曝け出してしまった俺たちはもう、無かった事には出来ないから。
「若井は、僕が好きで···僕は元貴が好き···」
涼ちゃんが静かにそう耳元で囁く。
「そして元貴は、若井が好き···」
涼ちゃんの言ってることはきっと正しい、元貴のことをより知りたくていつも以上に近い距離の俺に元貴は···キスをしてきたから、そして 俺はそれを受け入れてそれさえも真似しようとしてたけど。
「じゃあもういっそ···」
「元貴も誘って3人で堕ちていく?」
その言葉に思わず顔をあげて見た表情はいつもの優しい大好きな笑顔だったから、 俺は思わずうれしくなってしまったんだ、求められて、許されている気がして。
「···それいいね、3人ならきっと」
幸せになれるかなんてわからないけど。
今よりはきっと独りじゃなくなる。
別の次元 「踏み込んでしまった」って
堕ちてゆく深くへ
治らないロンリネス···?
コメント
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完結、ありがとございます💕 💙が💛ちゃんの事を想いすぎて、♥️くんを利用しつつも💛ちゃんに迫る姿が切なくて🥲 💛ちゃんのごめんね、も刺さりすぎました🫣 はるかぜさんの重愛話も好きなので、私は満たされました🤝💕いつも素敵なお話、ありがとうございます❣️
完結おめでとうございます✨ 最後まで、ずっと一方通行で、切ない狡さの中での苦しい恋でしたね😭 その落ちてゆく「深く」には、本当に幸せはあるのか…?と怖いくらいの、愛の物語だと感じました。 毎回、楽しみに読ませていただきました、ありがとうございました😊✨
ロンリネス完結です。 ハッキリとはしない終わり方···なのですが歌詞に沿った終わり方だけは決めていました、呼んでくださった皆様ありがとうございます!