「こんにちは!」
思いがけない楽しげな声で15、6歳の女の子が入ってきた。
「お久しぶりです」
女将がいくつか分からぬような姿で、また挨拶する。
いつもの動きが来るかと思ったが女の子はにこにこと笑って言った。
「あれ!?どこかであったことありますっけ?」
陽気に案内されて、黒の五百八十九番の部屋に入っていった。
不思議な子だ。
あたしと同じくらいの年なのになあ~。
ナッカルタンは、17の時に交通事故で死んだ。
そして、ここで働き始めたのだ。
「失礼いたしま」
魂の名を見分けられる先輩に教えてもらったので、呼んでみた。
部屋掃除のついでに話してみようか。
始終無言は気まずすぎるしな。
「どうぞ~」
部屋に入ると、椅子に腰掛けて本を読んでいた。
もしかしたら、この子もあたしみたいに驚かないかもしれない。
あたしみたいな子かもしれない。
「こんにちは、マヌーレさま」
声をかけると本から顔を上げ、問うてくる。
「はーい?」
不思議そうに言ったが、驚いた様子は見えない。
「お、驚かれましたかっ!?」
期待に胸が鳴る。
この方にも聞こえてそうな大きな音で。
「え、驚いてはないですけどぉ…」
《マーヌレ》と呼ばれたことより、ナッカルタンの声に驚いている。
この子は、あたしと同じで、《散らぬ花》かもしれない。
自分で言うのもなんだが、《散らぬ花》の者は美しい。
マヌーレさまは輝かしいほどに見目が良い。
「《散らぬ花》…」
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