隣に横たわった男の髪を優しく撫でる
朝日に照らされた彼の寝顔が愛おしい
布団から出て水を1杯飲んだ
彼に付けられた跡を確認する
人は恋人にキスマークとやらをつけて自分の物だと示すらしい
私の体には打撲痕
これが彼なりの愛情表現だ
『太宰、愛してる』
そう言って殴られた
何度も何度も何度も何度も何度も
嗚呼、痛い
殴られる度に耳鳴りがして視界が揺らぎ、血を吐く
チビゴリラに殴られるなんてたまったもんじゃないのだ
だが殴られた痛みは愛として体に蓄積され
打撲痕は愛を囁いてくれた数として体に刻まれる
彼は殴る時にだけ愛を伝える
『愛してる』は殴る時の常套句
昨晩枕元で彼が漏らした独り言を思い出す
『…済まない太宰』
『わかってくれ…』
その時の彼の顔は
誰よりも悲しそうだった
殴りたくないのに殴ってしまう
そんな自分に絶望しているのだ
罪悪感で押しつぶされそうなのだ
私を愛してるが故に悩み苦しみ
あんな不器用に愛情を伝えてくれているのだ
嗚呼、嗚呼!
それがなんとも
愛らしい!
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