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作者🌈🕒学び中
⚠mcfw寄り
⚠似てない場面有かも
⚠本人様とは関係ありません
⚠体調不良
塾の収録中
fw side
「はい、カットー!」
監督の明るい声が本日二本目の収録の終わりを知らせる。
まだ3人は収録の余韻が残っているようで和気あいあいと話し込んでいる。
俺はと言うといつもと同じように曖昧な返事をしていた。
楽屋に移動して休憩が始まった。
いつもより人の声が大きく聞こえる、何故だろうか。
しれっと楽屋を抜け出し手洗いへ。多分バレていない、はず。
個室に籠った俺は深く深呼吸をするが腹の中を渦巻く汚物は止まることを知らない。
びちゃびちゃという少し汚い音を立てながら口から汚物が出ていく。と言っても
相変わらずそんなに健康と言える生活をしていなくて出てくるのは唾液と収録とかで食べたものだけ。
別に今日が特別という訳ではなくて今日みたいな日はざらにある。
こういう時だけ「しっかり食べとけばなぁ」と後悔が思わず口からこぼれてしまう。
そんな自分に呆れつつも少しスッキリした口元をゆすいで楽屋へ戻っていく。
楽屋へ戻ると収録開始が近づいているようで移動が始まった。
その日の収録(前半)は少し顔色が悪い、つまりはまぁ、いつもと変わらない程度で無事終わらすことが出来た、とか 明日は特に予定がないのでゆっくりしようか とか考えながら移動していると、
思わぬハプニングが。
機材の故障で修理に1日かかると言う、従って今日の収録は中止。
全員のスケジュール上たまたま明日に時間が取れるということで収録は明日へ延期となった。
「こりゃちょっとまいったなぁ」なんて小声で零すと鋭いもちさんが
「何か用事でもあったんですか?」なんて邪気が払われた目で聞いてくるもんだから、
思わず「そんなことないんですけどねぇ」なんていつものにゃははという愛想笑い付きで返してしまった。
これではカッコイイオトナの面目がたたない。
少し疑問に思ったようだがあっさりと引いてくれたもちさんに感謝し今日は早めに上がることにした。
なぜならこの後配信があるからだ。
みんなに「お疲れ様ですー」なんて声をかけ1人とぼとぼ帰路に着く。
慣れた動作で鍵を開け、配信準備をする。
配信まで時間はある、少し仮眠をとってゆっくりとした。
配信5分前に目が覚め「あぶねぇ」と声を漏らしつつ間に合ったことに安堵をこぼした。
配信が始まるといつもと同じ雰囲気に呑まれすっかりVTuberの不破湊だ。
時々コメント欄に『今日体調悪い?』とか『声変じゃない?』とか、「姫の観察眼は鋭いなぁ」なんて
思いながら無事配信をやりきることができた。
何も食べる気は起きず今日の成果にエナドリで乾杯して、連絡を確認して、と日課を繰り広げる。
1つ違うとすればいつもより少し早めに睡眠を取りだしたこと。
明日の目覚ましを確認し眠りについた。
次の日
「ふわぁ」と声を漏らしながら起床しいつもと変わらぬ、いやいつもより曇って見える朝に乾杯して、
収録場へ向かった。楽屋へはいると既に3人は来ていて「俺が最後っすかー」なんて笑いながらいつも通り入っていく。
やはり休むべきだったか、と後悔が始まったのは1本目の収録中。早くないか、と思うけれど
それほどまでに溜め込んでいたのだろう。しかし収録を中断させる訳には行かない。
ここは意地でも不破湊を通すぞ、と覚悟を決めた時、グラッと視界が動いた。体が宙を舞った。
みんなの騒ぐ声と共に意識を暗闇に葬った。
mc side
ちょうど”一昨日”くらいからふわっちの様子が変だった。いやいつも変なんだけど。
空を見ているというか。まるで不破湊という媒体はそこに存在するのに
不破湊本体はどこが宙へ舞ってしまったかのように。
なんて気のせいか、勘違いか、とかぐだぐだ考えているうちに昨日の延期になった収録が始まった。
特別今日予定はなかったがふわっちさえ良ければ様子を見に家へ訪問する気だったので少し不機嫌だ。
そんなことを呑気に考えていると左に座っている彼が思いっきり床に倒れ込んだところを
視界の端で捉えてしまった。
「不破さん!!」
「アニキ、!?」
2人は驚愕の声を上げスタッフさんたちも慌てて向かってくる。
いつも賑やかなスタジオがより賑やかになった瞬間だった。
fw side
気がつくとスタジオの仮眠室に横たわっていた。
意識が途切れたのだろう、運んでくれた彼にも感謝をしなくては。
そう思いながら寝台に寄り添うように座っている彼を見つめた。
その寝顔は16歳とは言えないような大人びた表情だった。
これ配信で晒したら媚び判定なんかな、なんてくだらないことを考えていると
「ん、、ぅ?」
なんて声を漏らしながら目を擦る彼、 もちさんが、安心しきったような声を出した。
「良かったぁ〜」なんて微笑む彼は先程までの大人びた顔とは打って変わって子供のようだった。
他のふたりはきっと関係者さんたちに連絡とか難しそうなことをしてくれているんだろう。
人間の人生に比べちゃあ些細なことだが少しだけ歳上な彼らはこういう時だけは頼りになるな、と
少し皮肉を込めて笑うとそれを見たもちさんが不思議そうに、でもどこか察しているように笑った。
こういう時間を案外俺は求めていたのかもしれないな、と
ハードなスケジュールを見直すきっかけにしようと思った。
「ところで、」
と平和な空気を濁すかのような声が聞こえて彼を見るとまるで映画のラストシーンに出てくる
ラスボスのような鬼のような顔をした彼がいて「おっとぉ、」なんて零して逃げようとすると、
「こら逃げない」なんて言って子供みたく引き戻される。
そこからはまるで地獄だった。
「どうしてこんなになるまでスケジュールを詰め込んだの」だとか
「睡眠時間は何時間」だとか。
すごいうるさいノイズだった。望んで叱られているわけではない、決して。
でもどこか喜んでしまっている自分がいて。
あぁ、人に叱られるって、見て貰えるってこんなにも幸福なことなんだなぁと思わず顔が綻ぶ。
そんな俺を見てもちさんが「わかってないな?」みたいなことを怒りを込めて口走ると思ったが
案外にも彼は切なそうに、でも嬉しそうに笑ってくれた。
それだけで今までの嫌なこと全部消え失せてしまうような、そんな気がした。
そんくらい、綺麗だった。