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地雷さんのご配慮はしておりません。
センシティブ規制がかかっておりますがR-18表現はありません。
この物語に政治的・及び戦争賛美の意図は一切ございません。
イタ王、CLN、サロ共和国
独自解釈・独自設定有り
『なん、で…なんでわかってくれないんだよ!!こうすることが、イタリアのためなんだ!!』
『理解ってないのは君の方さ!!これからの時代は全体主義だ!!見ただろう、君もドイツのあの躍進ぶりを!!第一次世界大戦で敗けて多額の賠償金を負い、そして世界恐慌のダメージも世界トップクラスだった、あのドイツが!!我々イタリア王国のファシズム政策に感銘を受け、そしてファシズム化を進めた結果が今のドイツだ!!軍事力も統率力もトップクラス、あれほどファシズムの権力や素晴らしさをその身で騙る国は存在しないも同義、我々も…我々も、あれを目指すべきなんだ!!』
『今のドイツの状況を知ってるのか!?ソ連軍に大敗し、スターリングラードまで進んでいたところを大幅に後退させられているそうじゃないか!!』
『それでもドイツは敗けない!!もう二度と、だ!!今負けているのは冬が来たから…また春が来たら、絶対にソ連などという図体だけの国は滅ぶんだ!!』
……怒鳴り声が聞こえるたび、僕は体を小さく縮こまらせる。
ここに閉じ込められてから、一体どれくらいの月日が流れたのだろう。
時間感覚もなくなる程に、あの二人の言い合いの間には国の化身である僕の居場所は無い。
…嗚呼、こんにちは、皆。僕の名前はイタリア王国。…だった存在。
今や国としての力は殆ど無く、二人の後継国に権力を全て持っていかれてしまっててね。
最終的に僕は元々の一国を統治する国の化身としての威厳は霞のごとく消え去り、この小さくて狭くて、じめじめとした地下牢の中でこの命が朽ち果てるのを待っている。そう、所謂虜囚の身。
「……もう、嫌だな…疲れた…」
ここに閉じ込められてから、一滴の水も、たった一口の食事も無い。
それでも僕が死ぬことはない。
いくら権力が失われようと。
いくら生活が困窮しようと。
いくら傷つき、重体となったとしても。
僕は死なない。死ぬことなんかできない。
だって僕はどんな形であれ、国が崩壊しなければ僕自身が死ぬことも許されないから。
国の化身というものは残酷だ。
運営が上手く行き、これから未来永劫発展し続けていくのだろうと思われる国は決まって短命であり。
僕のように内輪揉めばかりを起こしている国は長く生き続けてしまう。
僕が一体どのくらいここに閉じ込められるのかは、わからない。
きっとサロとCLNが和解するか、互いに殺し合って決着が付いてから僕はようやくこの場所から逃れられるはずだ。
まるで鳥かごの中に閉じ込められた鳥のように、一生をここで過ごすのかも知れないけれど。
でも、良いのだ。
いつか、ナチスのように国家の終わりの見える国ではなく…それこそ、アメリカやソ連といった、将来に希望が見える国に助けてもらえる希望をほんの少しだけ、本当に少しだけ抱えてみようかな、なんて思う。
僕は、サロやCLNの下で温い幸せを抱えながら眠ったままでいるよ。
この命が尽き果てるか、誰かに助け出してもらえる未来を願って。
僕は湿った暗い地下牢の中で、そっと目を閉じるのだ。