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梨奈……
あの日、君がこぼれ落ちたことを、僕は今でも忘れられない。
「もっと早く駆けつけていれば…」と、何度も頭をよぎる。
その時、もしも僕がすぐに君のもとへ行けたなら、きっと違う未来が待っていたはずなのに…。
君が笑って、名前を呼んでくれる声が、まるで耳の中で響いているようだ。あの、あたたかな声をもう一度、僕に向けてくれたら、どんなにいいだろう。
そして、僕はその声に耳を澄ませながら、君を思い続ける。君はもう、この世界にはいない。いや、もしかしたら、どこかで僕を見守ってくれているのだろうか。
「太宰」と呼んでくれる君が、どれだけ僕にとってかけがえのない存在だったか…そのことを、言葉で表現することさえできないほどに。
嗚呼……君がもう一度 僕の名前を呼んでくれるだけで、この傷は癒されるのだろうか。
いや、そんなことはない。君の声が戻らない限り、この痛みは永遠に消えないだろう。
僕はこんなにも君に依存していたのに、結局 君を守ることができなかった。それが何よりも、耐え難い。
でも、もし君が今もどこかで僕を見ていて、どうかその声で、もう一度、名前を呼んでくれることを願っている。
…僕の心は、きっと君がいなくなってからずっと、君を求めているんだ。
どんなに手を伸ばしても、もう届かない君に。