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乗車したコユキは自分用に善悪が取ってくれた二人掛け座席の中央の肘掛をシートの位置まで持ち上げると、ドッシリと中央に腰を下ろし、チンピラ二人に対面になるように向かいのシートを回転させ、丁度通り掛った車掌にその席の指定席代と二人の乗車券代を支払うと弁当を一個ずつ渡して食べるように促した。
そうしておいて、自分も飲む様に十個の弁当を食べながら、二人の生い立ちを知った理由、秋沢(アキザワ)明(アキラ)の事なんかも交えて不思議な縁がある事、悪い事なんかしなくても父母と、新たな仲間達や自分の家族たちが待っている、素敵な住処、幸福寺がある事等を話して聞かせたのであった。
兄弟が目を見張ったのは、一旦死んだ母と育ての父が生き返っているという奇跡の箇所と、それ以上に食いついたのは、魔法、魔術? 善悪風に言うと『神通力』が使えるという所であった。
「ね、姐さん、本当に俺達にも使えるんですかい? その、すきるですか?」
「多分ね、アスタ、あ、本名はアスタロトって言う大魔王なんだけど言ってたわよ、『魔力は生命力だ、故に生きとし生ける物は例外なく使えるぞ!』とか格好付けて言ってたからね! 何? 使いたいのん、スキル?」
「そっ、そりゃあ、なあ、竜哉(たつや)?」
「ああ、使いたいよなぁ、虎大(こだい)兄貴」
こいつ等のネーミング、キラキラとも違う、んまあ、生まれ年を活かしているならそれで良いが、兄貴は未(ひつじ)年、弟は酉(とり)年であった…… 残念至極……
連れて帰ったら一回イラとルクスリアの馬鹿な親二人に怒ってやんなきゃいけないな、そんな風に思いながらもコユキは話を続ける、確り者であったのである。
「オケイ、その辺は任しときなさい! んでも今回はアタシが大事な用事があって兵庫県まで行かなきゃイケ無いのよぉぅ、んだからチョット付き合ってちょうだい! その後でお母さんたちに会わすわね?」
コユキは満足気である、二人も今迄に無く真剣な瞳をして大きな声で返事をした。
「「はいっ! 姐さん、よろしくお願いします!」」
「あいよっ!」
「いやあねぇ~、このご時勢に対面シートォ? 常識無いわねぇ~! コロナとか知らないのかしら? 大声で話して! 声で感染る(うつる)わ、声で! おお恐っ!」
突然割り込んできた見知らぬおばはんの声にコユキが振り返ると、薄めの化粧にフェアトレード製だろうか、なにやらナチュラリスト的な衣装に身を包んだ、それなりに金の掛かってそうなヤングマダム二人がコチラを見下ろして汚らわしそうな視線を向けていた。
「おんどれ、何だって言うんだ! おんどれ、文句があるなら――――」
「まってオンドレ! 貴女達随分失礼な物言いじゃないの、口舌(こうぜつ)の刃(やいば)で人を切るとは…… 余裕が無いのね? テレビやネットの見過ぎじゃないのん?」
虎大の言葉を遮ったコユキが立ち上がってヤングマダム(金持ち)に向かって大きな体を反らしながら言った。
因み(ちなみ)にコユキは勝手に渾名(あだな)で呼ぶ事に決めてしまっていた、兄をオンドレ、クールな感じの弟はバッテン傷にクールな目からバックルであった。