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今日は、週末の金曜日。定時後、珍しく智之も私も残業無しで帰れることになったので、思ったより早く合流して一緒に晩ご飯を食べに行くことが出来た。
智之が「焼肉行こう!」と言ったので、
「うんうん、行こう!」と、2人で焼肉屋さんへ行った。
久しぶりの焼肉を堪能出来て大満足だった。
せっかくの楽しい時間を壊すようなことはしたくなくて、お店で話し合いをするのは、違うと思って避けた。ただただ美味しいお肉を堪能した。
「「ご馳走様でした」」
将来の為にと、2人で一緒に貯金をしているので、そこから焼肉代を支払う。
「これくらい、俺が出すのに」と、智之は言ってくれるが、「ううん」と2人のお財布から出す。
「あ〜美味かった!」
「うん、美味しかったね〜」
そして、智之は、スッと手を繋いでくれる。
その後は、何も言わなくても、いつものように、智之の部屋へと向かう。
タクシーに乗り込んだ。
智之は、都内で一人暮らしをしている。
私は、実家暮らし。
大手商社に勤める厳格な父と、自由人でちょっと不思議ちゃんな母に育てられた一人娘。
生まれた時から父方の祖父母と同居。
祖父は、私が大学生の頃に亡くなったので、今は、祖母と両親の4人暮らし。
小さい頃は、それはそれは父にも甘やかされて育った。が、大きくなるにつれ、厳格な父を煙たがり、学生の頃から早く家を出たいと何度も思っているのだが、一人暮らしすら許してもらえないような箱入り娘なのだ。
だから、到底同棲など許してもらえないだろうと思っている。もう24歳の大人なのだから、自分の事は自分で決めたいと思うが、私にとって、それは初めて親に歯向かうことになるのだ。
なので、なるべく穏便にスムーズに家を出るには、もう正式に結婚するしかない! と思っている。
それに、急がなければ、親戚からそろそろ縁談の話でも、持って来られそうで怖いのだ。
──まったく、いつの時代よ! もう令和なのに
未だに、とても古い考えが残っているような旧家なのだ。
その為には、まず結婚に対する智之の考えを明確にする必要があるわけで、その上で、プロポーズ→親への挨拶となるのかな?
だから、智之の今の気持ちが知りたいと思っている。
本当は、プロポーズは智之からして欲しいと期待していたが、なんなら私からでも良いのかもしれないとさえ今は思っている。
来るもの拒まずの人だから……。
付き合って1年経った頃に、「将来の為に一緒に貯金しようか?」と言ったら、「うん、そうしよう!」
と言ってくれたから、一緒に始めた貯金。
だから、将来は……とは思ってくれているのは間違いないと思うのだが、智之が思っている《《将来》》とは、いったい何年ぐらい先のことなのだろうか……
智之のマンションに到着した。
鍵を開け、玄関ドアを開けてくれたので、
「お邪魔しま〜す」と中に入った。
「綾!」と、突然後ろから抱きしめられる。
「ん? どうしたの?」
「ずっと、こうしたかった」と、いつもより強く抱きしめられる。
そして、私をくるっと自分の方に向けて、
優しいキスをする。
いつもなら、コレくらいで終わって、部屋の中へ入るのに、今日は、更に激しく私の唇を奪う。
そして、しばらくすると、
ようやく唇から離れて、「綾、抱きたい」と言った。
──なんだろう。トモいつもと少し違うような気がする
「どうしたの?」
「今すぐ綾が欲しい!」と、もう一度熱いキスをして、首筋にもキスをする。
「ちょ、ちょっと待って! シャワー浴びてからね」と言うと、
「このままで良い!」と言って離さないが、
「ダメだよ、ちょっとだけ待ってて」と宥めると、
「だよな、ごめん」と、ようやく手を離してくれた。
「トモが先に浴びて来て」と私が言うと、
「分かった」と、バスルームへ向かう智之。
──なんだろう。この違和感……
いつもの智之じゃない気がした。
バスルームから出て来た智之
「綾、どうぞ」
いつもの優しい笑顔の智之に戻っていた。
「うん、待っててね〜」と、笑顔で言う。
「うん」と額にキスをされ、笑顔で見送られる。
──いつもの智之だ
さっきのは、何だったんだろう?
そう思いながら、バスルームでシャワーを浴びる。
そして、「お湯ためとく?」と智之に聞く。
「うん」
自動でお湯を張っておく。
私がバスルームから出ると、待ち構えていたように、バスタオルを広げて包み込まれる。
「ビックリした!」
「迎えに来た」と笑っている。
やっぱり何かがいつもと違う。
普段、智之は、そこまでガッツクようなことは、しない。
なのに、今日は、なぜか1分1秒でも早く! と
急かされているかのように違和感を感じてしまった。
──本当にどうしたのだろう?
さっき呑んだビールのせい?
バスタオルで、綺麗にカラダを拭いてくれた。
そして、また、黙ってキスが落ちて来た。
すると、もう止まらないようだ。
「行こう〜」と、私をバスローブで包み、ヒョイと抱き上げて、ベッドルームへと向かう。
──とりあえず、こうなるよね〜
話し合いは、この後かな……
そう思いながら、智之に身を任せる。
始まると、いつも通り優しい智之だった。
でも……
途中から、なぜか少し乱暴な気がした。
いつもより激しく夢中になっているように思える。
私は、驚いてしまったが、余裕がなくされるがまま。
「綾、どう? 気持ちいい?」と聞かれた。
そんなことも普段は、聞かないのに……と思っていた。
私は、何も言えず黙っていた。
そして、《《その時》》を待っていた。
智之は、散々私を好き勝手にして、とても満足気だった。
こんなことは、初めてだ。
「綾、最高だった」と言って私を強く抱きしめて、
軽くキスをした。
私は、違和感しかなかった。
智之に腕枕をされた。
そして、思わず「ねえ、何かあったの?」と聞いてしまった。
「ん? 何もないよ。どうして?」と聞き返された。
「だって、なんだかいつもと違うから」と言うと、
「もう俺たち2年半以上も付き合ってるだろ?」
「うん」
「そろそろ、新しいことを取り入れて行かなきゃ、倦怠期かと思って」と笑っている。
──倦怠期? 私は、そんなこと思っていなかった。
「トモは、そう思ってたってこと?」
「いや、そうなる前にね。良かったでしょ?」と言った。
私は、寧ろ怖かった。ただ自分勝手に、《《されて》》いるようで……
そう話すと、
「え? ごめん綾」と、ようやくいつもの優しい智之に戻ったのか、私を気遣い始めた。
「ごめんな、大丈夫? 痛いところないか?」と、
「うん」
そう言いながら、私の目から涙が溢れた。
「え? え、ごめん綾、そんなにイヤだった?」と、
言われて、
「トモが違う人みたいで、怖かった」と、泣いてしまった。
「そっか、ごめん、ごめんな」と抱きしめてくれた。
いつもの優しい智之だ。
「だから、何かあったのかと思った」と言うと、
「ううん、ごめんな。俺は綾だけを愛してるよ」と言った。
《《綾だけ》》
まるで、他にもいるかのように……
いつもなら、『大好きだよ』『愛してるよ』と言う。
敢えて、《《綾だけ》》と言う必要があるのか?
と思ったが、私の考え過ぎかと思って、その時はそれだけで終わった。
そして、私は、今日の本題に入らなければと思った。
「トモは、倦怠期って言ったけど、私は、そろそろ将来のことを考えてたよ」と私が言うと、
「そっか、嬉しいな」と笑顔で言った。
智之は、私の父が厳格なことを知っているから、
「俺はそろそろ同棲したいと思ってるよ。でも、綾んちは、厳しいから無理なんでしょう?」と。
そう言われて悲しくなった。
「うん、だから……」と言いかけると、智之は、私の口を自分の右手で覆って、
「それは、俺から言わせて」と笑っている。
そして、
「綾! 結婚しよう!」
と、サラッと言われた。
やっぱり嬉しかった。
でも……今の状況を見ると、
「ふふ、軽っ! それに今?」と思わず笑ってしまった。
「え〜ダメ出し?」
「ふふ、だって……」と、今の2人の状態を見て笑う。
色んなシチュエーションを想像していたのに……
私が結婚の話を出そうとしていたからといって、2人は全裸のままだし、智之の腕枕でサラッと言われてしまった。
それでも、やっぱりプロポーズしてくれたことが嬉しくて、2人で笑い合い、
「嬉しい〜!」と、智之に抱きついた。
「おお〜最高〜!」と、ぎゅっと抱きしめられる。
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