僕は新宿にある専門学校に行くため、駅にいた。
長野で見た事のないくらいの人の波。
みんな怖い顔をして早歩きしている。僕が乗り換えも分からず立っていると色んな人のカバンが当たってくる。
人ってこんなに大きかったっけ?
壁みたいに僕を取り囲んでる。
空気が生ぬるくて。人が吐いた息をそのまま吸っている気がして気持ち悪くなった。
昨日あまり眠れなかったから頭も痛い。
少し座りたい。
でも見えるのは人、人、人。
怖いよ。
歩き初めて、僕は人の足に躓いて、倒れ込んだ。
蹴られる。痛い。
気持ち悪くて、痛くて起き上がれないよ。
酸素も薄い。
僕のフルートが蹴られて手から離れた。
誰も助けてくれない。
お願い。このまま死ぬの?
怖い。たすけて。
「大丈夫ですか?」
声がして目を開くと男の子がいた。
色白で、目の下にクマがあって、優しそうに微笑んだ男の子。きっと僕よりも年下。
彼が手を差し伸べてくれた。
震えた手でそれを握る。
その子は弱そうに見えるのに僕を引っ張って立ち上がらせた。
やっぱこの子、僕より小さい。
上手く立てなくて、また倒れそうになる。
「ベンチまで歩けますか?」
僕は頷く。
しっかり支えてくれる暖かいからだにささえられれて僕はベンチに座った。
「大丈夫ですか?」
優しい声だな。透き通っていて、でも芯のある声。
僕はやっと目を開けた。
「ありがとう。」
すると、その子がギターを背負っているのに気付いた。
日に焼けた子が走ってきた。
「元貴、水、買ってきたよ!」
ああ、元貴って言うんだ。
「ありがと! 水飲めますか?」
走ってきた子がキャップを開け手差し出してくれた。
僕は水を受け取った。
ゆっくり飲んで、少し落ち着いた。
「音楽、やってるんですか?」
元貴くんは少し驚いた。
「はい! あの、Mrs. GREEN APPLEていうバンドやってて。僕がギターボーカルで、滉斗がギターです」
走ってきた子をさして言った。
滉斗って言うのか。
「…ぼ、僕、ピアノとフルートやってて」
元貴くんは目を輝かせた。
「ほんと!! 僕たち、ちょうどキーボードが足りなかったんだ。もし良かったら」
バンドに入らない?
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