そして、1週間の時が過ぎ、ザスパユースとの練習試合の日となった。
まずは、1軍とザスパユースのレギュラー組との試合が始まった。
貴也と森田は、レベルの高さに圧倒されるばかりで、あっという間に試合終了となった。
試合内容はある程度、打ち合いとなり、3-3の引き分けの結果となった。
2人が注目していた、天才・青山は試合の中でもひときわ目立っており、育榮高校がポゼッションをしている瞬間は、青山がフィールド上の皇帝かのように君臨し、ピッチ上を支配しているかのようなパス回しを実現していた。
その後、育榮高校の2軍とザスパユースの控え組のメンバーとの試合も行われることになった。
早稲田「それでは、試合のスタメンを発表する。今回の試合は、全員に出場機会を与えようと考えている。試合の結果も大事だが、内容も大事なので、是非各々は独りよがりのプレーはしないことは前提としても、アピールも頑張ってほしい」
貴也と森田は、スタメンではなく、控えからのスタートとなった。
前半の試合は、お互い守備重視の少し堅い試合の入りとなり、結局どちらも決定機らしい決定機はなく、膠着状態のまま前半が終了した。
前半と後半では全員交代となり、さっそく後半から貴也と森田も出場できることとなった。
貴也は、センターフォワード(CF)、森田はセンターバック(CB)でそれぞれ出場した。
貴也は以前ほど、闇雲に相手選手を追いかけ回すことは無くなったものの、得意のスピードとスタミナを活かして、ある程度効果的に相手にプレッシャーを掛け続けていた。
さすがに初見の相手は、貴也のチェイシングには度肝を抜かれており、パス回しも少しほころびが生まれていた。
また、貴也は育榮チームがポゼッションを持ったときは、裏への裏抜けの機会を伺いつつ、プルアンドアウェイを繰り返していた。
相手のディフェンダーは貴也のチェイシングのスピードを目の当たりにしていたため、気を抜かず貴也のことを徹底マークしていた。
森田も常に貴也の動き出しを見て、一本でもいいから貴也のもとへロングフィードを送る機会を伺っていた。
後半30分ごろ、貴也は森田がボールを持った瞬間、自分の足元へロングフィードを送るように合図を送り、一瞬裏抜けの動きをフェイントで入れた瞬間、森田が貴也へするどいパスを送った。
相手のディフェンダーは、一瞬、貴也の裏抜けのフェイントで騙された。
次の瞬間、森田からのパスを、貴也は柔らかいタッチでトラップし、すぐさまディフェンダーの体の向きを見て、逆をき、ペナルティーエリアのスペースめがけて、自分のスピードを活かして、一気にペナルティーエリアまでぶち抜いた。
貴也はゴールキーパーと1対1となっていたが、冷静だった。
ゴールキーパーの体の向きをしっかりと確認して、その逆方向にそのままボールを流し込んだ。
貴也は今まで個人練習で取り組んできたことを全て総動員して、やっとゴールを奪うことができ、ゴールが決まった瞬間は茫然自失となっていた。
自分に駆け寄ってくる味方の姿を見て、初めて自分がゴールを奪ったことに気づき、そしてその瞬間、去年自分が見たワールドカップの光景が頭を駆け巡ってきた。
そして、ホイッスルがなり、試合は貴也が決めた1点を守りきり、1-0で勝つことができた。
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