ある日の道を歩いてると、急に大雨が降ってきた。
うわ…なんでこんなときに限って傘持ってないかな
少しでも雨から逃れようと、路地裏に駆け込む。
………変わってないな、ここ
幼い頃いた路地裏に来てしまった。今日はほんとに運が悪い。
「……………」
狼の耳と尻尾が生えた幼い少女が、路地裏の隅で座り込んでる。
服はボロボロで、体のあちこちに傷がある。
………どうするか
少女から目を少し逸らす。
すると少女は虚ろな目で俺を見上げる。
………選択肢無くなった…
俺は少女を抱きかかえる。
「…………?」
少女は困惑したように俺を見る。
俺は走って家に向かった。
「………………?」
家に着くと、綺麗な家に興味津々なのか、きょろきょろと周りを見渡していた。
「えーっと…まず風呂かな。」
そう言って少女を抱き上げたところで気付く。
よく考えたら大人の男が子ども(しかも幼女)をお風呂に入れるってやばくないか…?犯罪組織が大暴れしたせいで法律が機能してないとはいえ…
でも濡れてるし傷だらけなのにお風呂に入れないのも…
「……………最終手段使うか…」
俺はスマホを取り出してある人に電話をかける。
「………で、私が呼ばれたと…」
そう言って少女を抱きかかえた人は、べるちゃん。べるちゃんは俺の元仕事仲間で、数年前大怪我をして、その後遺症で足が動きにくくなってしまい、仕事を辞め、その後会わなくなって音信不通に近い状態になってた。
大怪我の原因と音信不通だったことを考えると、べるちゃんには頼みづらかったが…
べるちゃんは考え込むように数分目を瞑ったあと、目を開く。
「………いいよ、この子お風呂入れてくるから、凸さんは服用意しておいて。」
「………!ありがとうべるちゃん。」
少しだけ、昔に戻れた気がした。
「えーっと…服…服…」
………そういえば俺の家に子供用の服なかった…
えー…ん?この袋…
クローゼットの奥に押し込まれてた袋を開くと、子ども用のパーカーとズボンが入っていた。
…親に買ってもらったやつ…
………ちょっとあの子には大きそうだけど…まあ無いよりかはマシか…
俺は洗面所に入ってべるちゃんに声をかけてから服を地面に置く。
リビングのソファに座ってると、扉が開いてべるちゃんと少女が入ってきた。
少女は俺に近づいて俺に抱きついてきた。
「……………♪」
なんか懐かれた感じがする…
べるちゃんは少し引いた様子で俺を見る。
「凸さん…そんなやつだったとは…」
「ちょ!?ち、違うから!ほんとに違うから!」
さっきまでの気まずさが嘘のように、昔みたいな会話をした。
「それじゃ私帰るね、なんかあったらまた呼んで。」
「ほんとにありがとう…帰り道、気を付けて。」
「………うん、じゃ、また」
そう言ってべるちゃんは少し足を引きずって歩いていった。
………足
元通りにはいかないか…
後ろから視線を感じて、振り返ると少女が心配そうに俺を見てた。
「………ご飯にしよっか。」
えーっと…何があったかな…
普段あまり自炊をしないので、食材を買うことがほとんどない。
やばい冷凍しかない…あの子何がいいのかな…
ふと隣を見ると、少女が興味津々で冷蔵庫の中を見てた。
そして冷凍オムライスの袋を掴む。
「………それがいいのか?」
俺がそう聞くと少女はこくりと頷いた。
レンジでオムライスを温めて、少女を椅子に座らせる。
少女にスプーンを握らせると、少女は嬉しそうにオムライスを食べ始めた。
………なんかやっと落ち着けた気がする。
にしても美味そうに食べるなあ…
汚れた少女の口を、ティッシュで優しく拭く。
少女が食べ終えた頃、ふと思った。
「………そういえば、名前は?」
………でも何も喋んないんだよなあ…
少女は少し黙り込んだ後、口を開く。
「……………………まる、べろす…」
か細い声だけど、聞こえた。
「マルベロス?」
少女ことマルベロスがこくこくと頷く。
マルベロスは疲れたのか、眠そうに瞼が閉じかけてた。
マルベロスを抱きかかえて、寝室に向かう。
………一緒に寝るのはまずいか…?
けど俺の服を掴む力が強くて、マルベロスを剥がしにくい。
起こさないように引き剥がそうとしたが、数分経ってから諦めて一緒に寝ることにした。
………あったかいな
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