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私は泣き続ける彼女を抱きしめることしか出来なかった。自惚れだとは思うけど、他にやり様がなかったのか悔やまれる。私自身悔しい気持ちで胸が張り裂けそうになってる。
でも、家族や仲間を皆失った彼女の心の痛みに比べたらどうってことはない。ただ抱きしめ続けた。
どれくらい時間が経ったかな。ようやく落ち着いたのか、彼女が泣き止んで身動ぎするから手を離したんだ。そしたら、勢い良く離れた。うーん、嫌だったのかなぁ?
「あっ、あのっ!本当にごめんなさい!」
顔を真っ赤にして頭下げてきたよ。
「あははっ、気にしないで。大丈夫……じゃないって分かるけど、少しは落ち着けたかな?」
私の服は彼女の涙とかその他諸々でぐちゃぐちゃだけど、こんなのは魔法で直ぐに綺麗に出来るからね。
「……はい……ごめんなさい。それに、助けていただいたお礼もまだ……本当にありがとうございます」
また頭下げちゃったよ。
「良いって。こっちこそ皆を助けられなくてごめん……」
あー……駄目だ駄目だ!また重い空気になっちゃう!悲しみを抑えて頑張ってくれてるんだから、私も頑張らないと!
「あー……よし、自己紹介しよう!私はティナ。見ての通りアード人だよ。貴女は?」
考えてみたら自己紹介まだしてなかったんだよねぇ。
「私は……フェラルーシアと申します。リーフ人です」
「ほうほう、フェラルーシアさんかぁ。じゃあ、フェルって呼んでいいかな?」
「えっ?」
「その代わり私の事もティナって呼んで。馴れ馴れしいかな?」
いきなり愛称は早まったかなぁ?内心ドキドキしたけど、フェラルーシア、フェルは笑顔を浮かべてくれた。
「はい、親しい人にはそう呼ばれていましたし、命の恩人であるティナ様を拒む理由はありません」
「様は要らないよ。私、別に高貴な生まれとかじゃないし」
転生ものなら高貴な生まれとか特別な生まれとかデフォルトなのに、私は普通の村娘だよ。
髪の色が皆と違うくらいで、才能なんて皆無だし。泣きたくなってきた。
「そうなのですか?その、アード人は綺麗な金の髪だと聞きました。でも貴女は綺麗な銀の髪だから、特別な方かと……」
「これは生まれつきだよ。偉い人の御落胤とか良くあるけど、正真正銘一般人だし。フェルは?リーフ人って皆綺麗な銀髪だったと思うんだけど。それにその羽根」
ちょっと踏み込んでみた。どうかな?
「この髪と羽根は生まれつきで、原因は分からないんです」
「じゃあ一緒だね」
「一緒……」
「普通と違うアード人とリーフ人の女の子が宇宙で出会う。ロマンを感じない?」
実にロマンチックだよ。悲劇がなければ尚良かった。
私の言葉にキョトンとしていたフェルは、クスクスと笑ってくれた。可愛い笑い方するなぁ。
「はい、変わり者同士ですね。では……ティナさんと」
「敬語要らないよ?」
「これは癖みたいなもので……ごめんなさい」
「ああ、良いよ良いよ!個性は大事だもんね!」
危ない危ない、落ち込まないようにしないと。
「何故ティナさんはあの場所に?アード人は宇宙進出を諦めたと聞いていましたけど」
「それは間違いないね。私以外のアード人は宇宙に居ないと思うよ。多分ね」
「では何故?」
「ふふんっ、この無限に広がる星の海!未知の惑星!恒星!ロマンだと思わない!?」
「ロマン?」
「そう!」
地球を探すのは大事な目的だけど、前世では叶えられなかった星の海を旅する!こんなに楽しいことが他にあるかな!?いや、無い!
「それで、そのロマンを追い求める冒険家のティナさんに私は助けられたんですね」
「嫌だった?」
「まさか!ティナさんが居なかったら、私も死んでいました。皆が死んでしまったことは……凄く悲しいし、しばらく引きずると思います。でも……私は生き残れた」
「うん」
「皆の想いを、願いを無駄にしたくはありません。だから……安心してください。この命、粗末にするつもりはありませんよ」
悲しげだけど、その言葉には確かな力を感じた。
「目的地はアードだよね?送ろうか?」
探索は中断することになるけど、数日だけだし。
「ティナさんはどこへ向かうおつもりですか?」
「ん?アリア、出して」
アリアにお願いすると私達の前にギャラクシーマップが開かれた。
「ここだよ」
私はアードから見て銀河の反対側を指差した。
「ここに何が?」
あー……流石に転生云々の話は止めておこうな。誰にも話してないし。
「知的生命体が居るかもしれない惑星があるんだ。それを探しに行く途中なんだよ」
「知的生命体、ですか」
「そう、センチネルは怖いけど星間交流は大切だから」
「その惑星が友好的である確信があるのですか?」
「んー、変な話だけど確信はあるよ。面倒なことはたくさんあるだろうけど、センチネルを相手にするよりずっと楽しい筈」
もちろん根拠は前世の記憶だけなんだよね。今地球がどうなってるか確認も出来ない。
ただ、ここが天の川銀河だとしてアンドロメダ銀河との距離は私が生きていた時代と変わらない。少なくとも数万年単位で変わってはいない筈。
私の仮定が全て正しければ、だけどさ。
「付いていっても良いですか?」
はい?
「えっ?フェルも?」
「ご迷惑でしょうか?」
涙目で上目遣い止めて。罪悪感が凄いことになるから。
「そりゃあ、構わないけどさ。良いの?直ぐにアードヘ連れていけるよ?」
「ティナさんの目指す先が気になるんです。もし、ご迷惑でないなら!何ともします!」
「いーよ」
「え?」
あっさり許可を出した私に、フェルはビックリしてるよ。目をぱちくりさせてる。うん、可愛い。
「独り旅は寂しかったから、大歓迎だよ!」
もちろんアリアが居てくれるけど、やっぱり温もりも欲しくなるよね。
「ありがとうございます!私、頑張ってティナさんのお手伝いをさせていただきますね!」
「固い固い、もっと気楽にいこうよ」
まあ、皆を失った悲しみから少しでも解放されるならそれでも良いかな。広大な宇宙を旅するのに、仲間が居ないのは寂しいし。アード人には頼めないからねぇ。
張り切るフェルを見ながら私はそんなことを考えてたんだけど。
グーッ!
うん、お腹の音だ。フェルが顔を真っ赤にしてる。そうだよね、取り敢えず。
「ご飯にしよっか」
何事もお腹を満たしてから取り組まないと。腹が減っては戦は出来ぬ何て言うしね。
顔を真っ赤にしながらも恥ずかしそうに頷くフェルを見ながら私は笑顔を浮かべた。うん、退屈しなくて済みそう!