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振り返るとそこには黄金色に輝く丸い物体があった。もうヨダレが垂れてくる程のいい香り、香ばしさと言っていいのだろうか揚げ物独特の香りでキマッてしまうかもしれない。「おまたせしました〜!おまかせのコロッケですね〜!」目の前に大きな皿に載ったコロッケが3つ。コロッケか…てっきりメンチカツかと思っていた。いや、別にコロッケがダメという訳では無い。だがビールに合わせるなら肉汁がほとばしるメンチカツの方が合うと思ってしまった。しかしいい香りだな、ジョッキに口をつけるとビールがなくなっていたことに気づく「すみません、生おかわりで」よし、飲み物も準備できた。コロッケに目線を向ける。どうやって食べようか…コロッケと言えばソースをかけるのが定番のはず…しかしここのコロッケにかけられているのはタルタルソース、ケチャップ、そして醤油だ。よし、まずは珍しい醤油のものから食べてみよう。大きく口を開いてかぶりつく。ん?ほんのりと香る磯の香り…その中にしっかりと姿を現す鰹の風味。これは…鰹節となんだ?絶対に食べた事のある味だ…噛みごたえもある…なんだこれは?店主に尋ねてみる。本当に貝ひもらしい、コロッケでは今まで感じたことの無い歯応えに楽しさを感じ始める。あぁ…もうひとつ食べたい…一瞬で食べきってしまったように感じる。それにしても食べるまでは中年にさしかかっているのに揚げ物はさすがに重いか?と思っていたのにもう次に手を伸ばそうとしている。何となくサラッとしている気がするのだ。さて、次だ次。どちらを食べよう。ビールはまだ半分残っているぞ。迷っていると店主からタルタルをおすすめされた。やはり店のおすすめが1番だよな、自分で決められないのかと言う声がどこからか聞こえてきそうな気もするが郷に入っては郷に従えだ。新しいコロッケにかぶりつく。たっぷりかかっているタルタルソースが口の周りにもついてしまう。しかしそんなことは気にしていられなかった。中から溢れ出てくる濃厚なクリームに押し流されそうになってしまう。海老と蟹、どちらも喧嘩せずに協力して私の口の中を殴ってくるかのような濃厚さ、タルタルにより濃厚な中にほんの少しのアクセントが加わりよりビールが進んでしまう。無我夢中に味わっているとビールが無くなった。しまった、まだもうひとつ残っているというのに…しかし飲みすぎると明日に響いてしまう…どうしようか。こればっかりは自分で決めなければどうしようもない。よし、もう明日なんて知らん!「すみません、生おかわりくださー…」「PPP…」ポケットから聞こえてしまった。終わったかもしれない…スマホを取り出して細目で送り主を見る。終わった、この後敗北が約束されてる戦いに出向しなければならない。「いつ帰ってきますか?」妻がこの文章を送るというのは確実にキレている。私の首をかけよう。絶望に打ちひしがれながら最後のコロッケを口に入れる。う、美味いっ。前の2つが前座なのか?と思うほどに旨味が溢れてくる気がする。ゴロゴロとしたじゃがいもと挽肉、そして挽肉の旨味を逃がさないためのマッシュポテトこの3つが先程までの絶望を打ち消すかのように私を励ましてくる。よし、この後の戦いにて一矢報いてみせようじゃないか。お会計を済ませ帰路に向かう。「…何時間で収まるかな…」
【続く】