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私は、奴隷だ。物心ついた時には既にここにいた。
毎日…毎日…同じ作業…誰の目にも付かず、人を殺したり、その処理をしたりした。間違えれば罰を与えられる…私は右目の瞼を縫い付けられた。
私は今、ここから抜け出すために毎日考えて、行動している。今までずっと無感情にこなしてきたこの生き方に、感情をもってしまったからだ。
ターゲットを殺せと言われて街に行った時。
眩しくて、焼けてしまいそうだった。突き刺すような日差しも、私より小さな子供の純粋で残酷な言葉も。
…その子は、私に話を聞かせてくれた。その子はリリーという名前で、両親や兄弟、姉妹がいる大所帯らしい。リリーは三女で、兄が二人と姉が一人いると。最近妹が生まれたから、妹のための買い物に来たのだそうだが、はぐれてしまったらしい。
「でもリリーは大丈夫!」
私より小さく脆い体のどこからそんな自信が溢れて来るのか。誰かに連れ去られば、簡単に何処かへ売られてしまうのに。
「ヒーローも神様も助けてくれるの!」
「…そうか。」
こんな世界にヒーロー、ましてや神などいてたまるか。
「そうだとしても、一人は危ないぞ。ヒーローも神様も暇ではないだろう。」
「うーん、確かに…」
私は、少女の家族を探してやることにした。
「家族とはどこではぐれたんだ。」
「あそこにある少し大きな露店で、振り向いたらいなかったの…。」
…息を飲んだ。あれは私が奴隷をしている組織が運営しているものだ。今回のターゲットはとある家族全員とのことだった。オマケにターゲットの話は露店ですると言われていた。
「…すまない。」
あぁ、ヒーローが本当にいたらいいのに。
「え?どしたのおねぇちゃ…」
ドンッ
気絶した少女を抱え、露店に入った。
「時間ピッタリだな。何抱えてんだ?」
「もしやと思って話を聞いていたら、露店の前で家族が消えたと言っていてな。取り逃しじゃないのか?」
「ハハッ!大当たりだな。」
「悪ぃ悪ぃ、アンタのこと疑ってたんだよ。アンタは今までクソみてぇな大人しか殺して来なかったろ、かわいいガキを殺せるか試したかったんだよ…。」
…あぁ、世の中クソだな。
「で?どうするんだ、殺すのか?」
「…いや、腕の立つ奴隷商に売る。そいつ抱えて着いてきてくれ。」
いつも通りに、いつも通り言うことに従った。いつも無感情に、何も考えずにやってきた。こんなにも心が動いたのは初めてだ。
「…わかった。」
…こんなところ、居られるか…!
その日から、アジトを抜け出すために考えるようになった。
…ヒーローを待てるほど、神に祈れるほど私は純粋で信心深くない。
実行日はもう明日だ。