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#さのじん
藍月。
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離婚伝説『紫陽花』の歌詞パロです
⚠️さのじん
🩷視点
「…ねぇ、今日も無理?」
「悪い、疲れてるから」
「その”悪い”って言葉、今月だけで何回聞いたと思う?」
返す言葉が見つからない。
仕事が忙しいのは事実だった。
でも、それを理由に仁人との時間を後回しにしていたのも事実だった。
「来週には落ち着くから」
「その来週って、いつ来るの?」
仁人はそう言うと、玄関に置いてあった傘を手に取った。
「どこ行くの」
「少し散歩」
「雨降ってるぞ」
「だから?」
その一言だけ残して、仁人は外へ出ていった。
バタン、と扉が閉まる。
追いかけようか迷った。
でも俺は動かなかった。
少し頭を冷やせば帰ってくる。
そう思っていた。
三十分後。
知らない番号から電話がかかってきた。
「佐野勇斗さんのお電話でしょうか」
「はい」
「○○病院です。吉田仁人さんが交通事故に遭われまして_」
そこから先は、ほとんど覚えていない。
病院へ駆け込むと、医師が待っていた。
「命に別状はありません」
その言葉に胸をなで下ろす。
「ですが、頭を強く打っています。意識が戻るかどうかは……正直、分かりません」
俺は病室へ向かった。
ベッドには仁人が眠っていて、 機械の音だけが淡々と響いている。
「……仁人」
返事はない。
椅子に腰を下ろし、その手を握る。
「…仁人、ごめん」
初めて素直に口にした。
「仕事ばっかりで、お前のこと全然見てなかった」
沈黙だけが続く。
「ちゃんとするから……帰ってきて」
俺はそのままベッドの横で眠ってしまった。
目を開けると、そこは病室ではなかった。
薄暗いトンネル。
雨の音が響いている。
「……なんだ、ここ」
周囲を見回したときだった。
少し先に、人影が見えた。
見慣れた背中。
「仁人!」
駆け寄ると、仁人が振り返る。
「やっと来た」
「こんなとこで何してんの」
「勇斗を待ってた」
まるで何事もなかったような笑顔だった。
俺はその腕をつかむ。
「帰るぞ」
「…帰れるかな」
「帰るんだよ」
仁人は困ったように笑った。
「出口まで行けたらね」
「だったら行こう」
「途中で後ろを見ちゃだめだよ」
「……分かった」
理由は聞かなかった。
仁人は少しだけ笑った。
二人で歩き始めた。
長いトンネルだった。
雨音だけが続く。
会話はほとんどない。
ただ手だけは離さなかった。
やがて遠くに光が見える。
「もう少しだ」
「そうだね」
あと数メートル。
その時だった。
握っていた手の感触が少しだけ軽くなる。
「……仁人?」
返事はない。
足音も聞こえない。
ちゃんと後ろにいるのか。
急に不安になる。
「勇斗」
後ろから声がした。
「前だけ見て」
「でも……」
「お願い」
仁人の手を握り直す。
あと少し。
あと少しで外だ。
そう自分に言い聞かせながら歩き続ける。
光が目の前まで迫る。
一歩踏み出した瞬間。
雨音が消えた。
そこは病室だった。
医師と看護師が慌ただしく動いている。
「先生!」
「反応があります!」
ベッドを見る。
仁人の指が、ほんの少しだけ動いた。
「仁人!」
ゆっくりと瞼が開く。
「……勇斗?」
その声を聞いた瞬間、力が抜けた。
「…よかった」
思わず涙が溢れる。
「心配かけたね、ごめん 」
仁人も少し涙目だった。
「謝るのは俺のほう」
ベッドの横にしゃがみ込み、仁人の手を握った。
「もう仕事ばっかり優先しない、ちゃんと仁人のこと大切にする」
「…ほんと?」
「約束する」
仁人は少し照れたように笑う。
「じゃあ、信じる」
窓の外では、雨が止んでいた。
病室の庭に咲く紫陽花は、雨粒を残したまま太陽の光を受けている。
end.
今作も離婚伝説さんの歌詞パロでございました
トンネルのシーンはギリシャ神話を元にしました
神話では途中で振り返ってしまって、結局大切な人を失ってしまうんです
でもそんなの私が耐えられないので、生きてもらいました笑
ではまた次回作で🙂↕️
コメント
1件
おお、読んだ読んだ!離婚伝説の「紫陽花」パロか…元ネタ知ってるから余計に刺さったわ。トンネルで「後ろを見ちゃダメ」って仁人に言うシーン、ギリシャ神話のオルフェウスっぽいなって思ったらやっぱりそうだったか。振り返らずにしっかり連れ戻せた勇斗、偉すぎる。最後の紫陽花の描写でじんわりくるわ。生きてくれてよかった…(´;ω;`)