コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
⚠︎︎つかあま 生前設定 共依存 バッドエンド
普くん視点
「俺を壊してよ」
何を言っているのか理解できなかった。
でもつかさが制服の下から引っ張り出してきたソレを見て嫌でも理解した。
冷たい金属が月明かりを反射して部屋を照らす。
つかさの手には包丁が握られていた。
「な、なにしてるの…」
つかさは満月の光を宿した瞳を猫みたいに細めて笑う。
「あまねは俺を守りたいんだよね」
「俺、あまねがいないと駄目なんだ」
「あまねがいなくなったら俺壊れちゃうからさ」
「どうせ壊れるんならあまねがやってよ」
刃先を自分の胸に向け、俺の手に握らせる。
金属の重みが体に響く。
情けないくらい体が震えて刃先がつかさの服をかすめる。
「む、無理だよッ…!つかさをこ、殺すなんて…」
たとえつかさが望んだとしても、俺につかさを殺すなんて出来るわけない。
つかさが死ぬ瞬間なんて見たくない。
そんな事実俺には耐えられない。
はやく、今すぐにでも俺が先に死ななきゃ。
つかさよりも先に。
この鋭利な金属を自分の胸に目掛けて…
…無理だ。
言葉が無くてもわかる。
指示された動き以外は許されない。
つかさの目線が俺をその空間に釘付けにする。
心臓の音がうるさい。
呼吸が荒くなり、冷や汗が止まらない。
「大丈夫、ほらもう我慢しないで」
「俺が全部許してあげるから」
あれ、俺何してたんだっけ
まるで夢を見ているみたいに頭がふわふわしている。
でも夢じゃないことくらいすぐにわかった。
右手に握られた包丁
布団に咲いた赤黒い花
俺はその上に横たわるつかさに馬乗りになっていた。
「つか…さ?」
包丁を投げ捨て、つかさを抱き寄せる。
まだ息も体温もある。生きてる。
その時、僅かにつかさの唇が動いた。
今にも消えてしまいそうなか細い声で何度も俺の名前を呼んでいる。
その度に傷口から血が滲み出ていた。
「ッ…!つかさ、もうわかったから、」
「もう喋らないで…!ねぇ、つかさ!」
つかさは虚ろな目で此方を見つめ、ぎこちない笑顔を浮かべた。
「ぁ…まね」
「…ぃ…….、ぁ…よ」
つかさが小さく腕の中に沈み込む。
「…え?」
声も、温度も、さっきまでそこにあったはずのものが急に遠くなる。
「つかさ…、起きて…ねぇ、つかさ…」
返事はない。
目も唇も、もう動かない。
…死んだ?
そう考えた途端、とてつもない恐怖に襲われた。
一番恐れていたことが実際に目の前で起こったのだ。
俺が殺した。
俺がつかさを殺した。
つかさを守りたいなんて言って殺したんだ。
涙がつかさの頬を伝って落ちる。
泣く資格なんてないのに。
「ねぇ…、まって…」
「置いていかないで…..」
「ひとりにしないで…、」
「ねぇ、つかさってば…!」
震える声でどれだけ呼びかけても、もう意味は無い。
つかさは最初から全部わかってたんだろう。
俺にはつかさを殺せない。
それはつかさのためでもあり、自分のためでもあった。
だから全部許すなんて言ったんだろう。
その言葉で俺の理性は崩れ落ちた。
気づいた時にはもう遅い。
もう取り返しのつかないところまで追いやられてる。
そんな俺に残された道はひとつしかない。
その道こそがつかさが望んだ”理想の未来”。
結局、最後まで俺の言うことは何にも聞いてくれなかった。
本当に自分勝手な人だ。
投げ捨てた包丁をもう一度手に取る。
つかさが最後、声にならない声で呟いた言葉。
『だいすきだよ』
「…俺には一度も言わせてくれなかったくせに」
首筋に冷たい刃先を当てる
「本当に、ずるい人だ」