コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
修学旅行が終わって数日後。
普段通りの学校生活に戻ったクラスは、少しお疲れ気味ながらも、賑やかさは健在だった。
昼休み、純喜はクラスの女の子たちに囲まれて楽しそうに話している。
「純喜くん、修学旅行の写真めっちゃ良かったよ!やっぱ撮るの上手いな~!」
「ほんま?ありがとう!でもモデルが良かったんちゃう?」
「もう、そんなこと言われたら照れるやん!」
きゃっきゃと盛り上がるその光景を、教室の隅っこで見ていた拓実は、箸を持つ手が止まった。
(……何してんねん、純喜くん。調子乗りすぎやろ)
「拓実、どうしたん?弁当の箸止まってるけど」
隣の席の友人に突っ込まれて、拓実は慌てて食べ始める。
「別に……なんもない」
そう言いながらも、気になって仕方がない。
その日の放課後。
クラスのレクリエーションとして、体育館でバスケをすることに。
拓実はそこまで乗り気でなかったが、純喜が誘ってきたので仕方なく参加した。
ゲームが始まり、純喜は相変わらず目立っている。
スピーディな動きでボールを操り、得点を重ねていくたびに、周りから歓声が上がる。
「純喜くん、カッコいい!」
「さすがやな!」
そんな中、純喜が味方の女子にパスをし、彼女がシュートを決めると、純喜は手を叩いて大喜び。
「ナイスシュート!めっちゃ良かったで!」
「ありがとう!純喜くんのおかげやわ!」
それを見た瞬間、拓実の中で何かが弾けた。
(……なんやねん、それ。俺の時より楽しそうにしとるやん)
試合が終わったあと、拓実は純喜を無視してそそくさと体育館を出て行こうとする。
「拓実、待って!」
純喜が追いかけてきて、彼の腕を掴む。
「なんやねん。俺、用事あんねんけど」
「絶対ウソやん。さっきからずっと変やったで。俺のこと避けてるやろ?」
純喜の真っ直ぐな目に、拓実は思わず目をそらす。
「別に……何でもない」
「何でもないわけないやん。俺、拓実のことちゃんと見てるからわかる」
その言葉に心臓が跳ねる。
拓実は怒り交じりに振り返った。
「じゃあ聞くけど、何であんなに女の子と楽しそうにしてんの?」
「え?」
「昼休みもそうやし、バスケの時も……純喜くん、俺の時と全然ちゃうやんか!」
勢いで口に出したあと、拓実はハッとして口を押さえる。
「拓実……もしかして嫉妬してくれてるん?」
純喜がニヤリと笑い、ぐっと顔を近づけてくる。
「なっ、そんなんちゃうし!」
「でもさっき、『俺の時と全然ちゃう』って言うたやん?」
耳まで赤くして否定する拓実に、純喜は嬉しそうに微笑んだ。
「拓実、俺が誰と喋ってても、誰とバスケしてても、好きなんは拓実だけやで」
「……そんなん信じへん」
「ほんなら、どうやったら信じてくれるん?」
純喜が拓実の顎を軽く持ち上げる。
「ほら、拓実。ちゃんと俺の目、見て」
拓実は逃げようとするが、純喜の真剣な瞳に吸い寄せられるように顔を上げる。
「俺が誰を大事にしとるか、ちゃんとわかってほしい」
「……純喜くん、ホンマに俺のことだけなん?」
「当たり前やん。他に誰がおるんよ」
純喜の言葉に、拓実の頬がさらに赤くなる。
「……純喜くんのそういうとこ、ホンマ嫌いや」
「えー、それ褒めてるやろ?」
純喜が嬉しそうに笑い、ふわりと拓実の髪をくしゃっと撫でる。
その後、二人は並んで帰り道を歩く。
拓実はぶつぶつ文句を言いながらも、純喜の隣を歩くスピードを落とさない。
「なあ、拓実」
「……何やねん」
「嫉妬してくれるんは嬉しいけど、今度からちゃんと言ってや。そしたらもっと拓実だけに構うから」
「っ、誰が言うか!アホ!」
夕焼けに染まる道を、二人の笑い声が響いていた。