テラーノベル
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地図は1枚埋まり、2枚目も縦の半分ほどが埋まっていた。
埋まっていく地図の端、そして視界の遠くの方にやっと陸地が見えた。
「…マジか…」
ルウラも
「(「ふ」と「く」の間)〜ん…(Oh〜no…)」
「(「ふ」と「く」の間)ん…(あぁ…)」
シェアとハーフも難しい表情を浮かべた。なぜか。見えた陸地は白銀。
そう。雪の地帯。樹氷バイオームである。
進んでいくと、その樹氷バイオームに近づくに連れ、風が徐々に冷たくなる。
さらに近づくに連れ、海面にも氷が見えるようになってきた。
流氷は基本透明で、ゆらゆらと浮かんでいるが、乗ってみると安定する。
さすがに寒くなってきたルウラは、シェアとハーフのチェストから、もっこもこのコートを取り出して羽織る。
前のボタンも留め、なるべく冷たい風が入ってくるのを防ぐ。
「さっ…っぶ…」
めちゃくちゃ寒い。それはそうだろう。
普通の水、たとえば池や外に置いてある金魚鉢、水たまりは水温が0℃から凍り始めるのだが
それに対し、海水は、水温が約マイナス2℃ほどにならないと凍らない。
それは普通の水、真水に比べると、海水には塩という異物が紛れているためである。
きっとこれを読んでいる、見ている、聞いている人は
頭の中にホワイトボードや黒板、あるいはモニターが浮かんで
「あれ?科学の授業かな?」と思った方もいらっしゃると思いますが
文章の量(かさ)、もしくはマンガならコマ、アニメなら尺を稼ぐためだと思ってもう少々お聞きください。
海水が凍るためには塩を水中から排出しないといけない。
なので海に漂っている流氷などは、元はもちろん海水なのだが、その氷には塩分は含まれていないのである。
さらに、池や外に置いてある金魚鉢、水たまりとは違う点がもう1つある。
それは海には“波”があるということである。もちろん波の少ない穏やかな海も存在するだろう。
しかし、少なからず池や外に置いてある金魚鉢、水たまりよりは水面に“動き”がある。
となると凍りづらいというのは言わなくてもわかることである。
本来海水は水温が約マイナス2℃ほどから凍り始めるのだが
それはあくまでも海水が何℃で凍るのか?という実験において
波の立たない状況下で行った実験によるものである。
なので本来の波のある海で海水が凍るのはもっともっと低い温度。ということになる。
となると。である。水温がマイナス2℃以下になるということは、外気はそれ以上に寒いということになる。
体感では水温は外気温の20倍以上温度を伝えやすいのだが
水温が冷えたり温まったりするのには相当な時間を要する。
まとめるとすると、今ルウラの向かっている樹氷バイオームは、バッカみたいに寒いということである。以上。
「さぁ〜…むぅ〜…」
と右手で左肩を、左手で右肩を抱くようにして、さわさわさわさわと摩りながら言うルウラ。
さすがのシェアとハーフも極寒の海を泳いでいて、どこかしら顔色が悪い。
流氷の大きさがだんだんと大きくなっていき、ついに大きな氷の地面へと着いたので
ルウラ、シェア、ハーフ、3人で氷の陸地に上がる。
「おっ、おっ、おっ。滑るぅ〜」
と滑るルウラ。今にも凍そうなシェアとハーフを見て
「ちょっと待って」
と両手前に突き出して、シェアとハーフから離れるルウラ。そして
「どうぞ」
と言うとシェアとハーフは身を震わせるようにして体についた水分を飛ばす。
そしてシャーキーン!とキラーン!とドヤ顔をする。しかしすぐ寒さに気付き震える。
「ま、濡れてるよりは、だいぶと寒さはマシだろ」
とシェアとハーフの、鼻筋というのか、眉間の下部分というのか、そこをポンポンとするルウラ。
そして3人で歩き出す。
「気ぃ〜つけろよぉ〜」
とシェアとハーフに言うルウラ。しかしその直後、ツルンッ。…ドサッ。転けた。
「いってー…」
と言うルウラに
「ぷっ…」
「ぷっ…」
っと笑うシェアとハーフ。
「おい!なに笑ってんだよ!心配するとこだろ!」
なんてわちゃわちゃしながら地図を埋めていく。地図は水色、青、白で埋まる。
水色は氷、青は海。では白はなんなのか?白は雪である。氷が広がる樹氷バイオームにも土の陸地が存在する。
しかしその土の表面は雪で覆われている。そのため地図では白く表示される。
「これは…。ここに村あっても移り住みたくは…」
とルウラが言うとシェアとハーフは2人して首を左右にブンブン振る。
「だよな」
地図は縦が埋まったので、今度は横に歩いていく。
□で言うと横で1/4に分けて、↑方向には埋まったので、今度は右に向かって歩いていく。
すると右側も地図の端まで樹氷バイオームだった。
「さっむぅ〜」
口を吐いて出る言葉はもはや6割が「寒い」を占めていた。
結論から言うと□②□③
□①□④と4枚ある地図のうち、①の地図はそもそも埋まっていた。
②の地図は海と樹氷バイオームで埋まった。そのまま横に移動して③の地図に移動した。
しかしぱっと見、視界の奥の奥の奥のほうまで雪と氷で埋まっていた。
「あったかいとこ行きたい…」
と言うルウラに、ブンブン頷くシェアとハーフ。
「砂漠も、歩いてたときはめっちゃ嫌だったけど」
ブンブン頷くシェアとハーフ。
「今になってはあの暖かさが欲しい」
ブンブン頷くシェアとハーフ。文句を言いながら地図を埋めていった。
「ここに村あっても移り住みたくはないな」
と言ったのがフラグになったのか。それとも物欲センサーの反対のセンサーが働いたのか
「…」
「…」
「…」
立ち止まり、無言で、ジト目で見つめる3人の視線の先には村があった。
イグルーと呼ばれる、日本の雪洞(かまくら)のような建物があった。
ちなみに。…あ、また授業始まると思って離脱しそうなあなた。
…待ってくださいお願いします。学校や飲み会で使える豆知識が1つ増えると思って。
では改めて。ちなみに雪洞(かまくら)とイグルーの違いとは。
雪洞(かまくら)は降り積もった雪をかき集め、大きな半円の山を作り
そこを掘って中を空洞にしていくというものだが
イグルーとは降り積もった雪を集め、雪でレンガ状のブロックを作り
その雪レンガでドーム状の建物を作るという違いである。
ちなみにイグルーは氷のレンガのブロックで作られることもあるらしい。
さらに言うと、雪洞(かまくら)はイベントや遊びなどで作るのに対し
イグルーはそこで生活する、簡易的な居住地、いわば雪(や氷)でできたテントのようなものなのである。
以上。お時間お取りました。
「寒そぉ〜」
とルウラは言うものの、村人たちは薄い水色や灰色の、袖にファーがついたもこもこのコートを羽織っており
一見すると寒そうには感じられなかった。
そのコートにはミスマッチな麦わら帽子を被っていたりする村人もいた。
「麦わら帽子…」
思わず呟くルウラ。村人たちは一見、寒さを感じさせない様子で普通に過ごしていたが
彼らの口からは吐かれる息は真っ白だった。まあ、ルウラ、シェア、ハーフの吐く息も真っ白なのだが。
突っ立って村人の動向を見ていると、村人の1人がルウラ、シェア、ハーフに気づいて
「あぁ!行商人さん!」
と寄ってきた。
「あぁ。どうも」
「この間来た行商人さんとは違う方だ」
と言う村人に
「どんな人でした!?」
と食い気味に聞くルウラ。村人が特徴を話してくれた。父や母とは違う印象だった。
でも、もしかしたら外見は変わったのかもしれない。そう思い
「名前は」
と聞いてみたら
「いや、名前なんて聞かないよ」
とあったり言われた。
「行商人さんは、長くても3日やそこらで出ていっちまうからな。
行商人さんから、村で子どもを育てさせてもらったー。なんて話も聞いたこともあるが
なんせうちの村は極寒だからな。子育てで留まることもない。
じゃあ名前聞いて覚えるなんて脳の要領の無駄だろ?」
と笑って言う村人。
「そ、うですか…」
と少し落ち込むルウラに、その村人は村を案内してくれた。
雪が積もらないように傾斜のついた三角屋根にしていること。
(ブロック世界なので、なるべく三角屋根にしているが屋根に雪は積もっている)
イグルーの中は意外と暖かいこと。木造の家の中も意外に暖かいこと。
畑作業をする村人は、畑の耕した土に水を供給するための水路が凍ってしまうことの大変さ。
鍛冶屋さんのあまり汗をかかずに済む話など、いろいろな話を聞かせてもらった。しかし
…前も樹氷エリアの村で同(おんな)じこと聞かされたなぁ〜
と思いながら聞いていた。
「で?なんか交易に来たんだろ?」
と村人に言われ
「まあ…」
と微妙な反応をするルウラ。
本当は交易する気はなくて、ただただ地図を埋めてたら
たまたま村があって、寄ろうか迷ってただけなんだけどなぁ〜…
と思ったものの、一応交易をした。持ち物をエメラルドに交換し
そのエメラルドを少しだけ使い、焼き魚だけでは飽きていたので、お肉やパンと交換した。
村人の人がベンチの場所を案内してくれた。パッっと見、雪の山だったが
村人の人がその雪を払いのけるとベンチが現れた。
ルウラは「ありがとうございます」と言うようにペコッっと頭を下げてベンチに腰を下ろす。
「…」
冷たいか?と思って腰を下ろしたが、もこもこの、丈が長めのコートを着ているため
コートが座布団のような役割を果たしてくれて、あまり冷たくはなかった。
太陽は真上から少し横にの位置にいた。昼過ぎか。と思い
ひさしぶりにお肉でも食べようかと思っていたら、隣に村人の人が腰を下ろした。
「冷たいだろ」
と笑顔で言う村人。
「いや、まあ、案外」
「あ、そうか。暖かそうなコート着てるもんな」
「そうっすね」
「でも、なんで行商人の名前なんて聞くんだ?」
村人が不思議そうな顔をルウラに向ける。
「…。オレも村で育ててもらったんですよ」
とルウラが言うと
「あっ、へぇ〜。そうなのか」
と少し驚く村人。
「ま、ここじゃないですけど」
「だろうね。覚えないもん」
と笑う村人。
「12歳になって少ししたらかな。父さんと母さんは村人にオレを委ねて行商人の仕事に出ていったんです」
「それで親御さんを探してるってことか」
「探してるってほどのことでもないですけど、ま、近くにいたんなら会いたいなって」
「なるほどな。ま、この広い世界で、地図も連絡手段もない状態のあんたたち(行商人)親子が
再び出会う。なんて人生で一度くらいなもんじゃねぇか?」
「…ま。それもそうですよね」
「ま、ここの村覚えといてくれよ。行商人の人が来たら聞いてみっからよ。赤髪のー…」
「リンダーレトです。リンダーレト・ルウ・ランダーワグ」
「赤髪のリンダーレトって名前の子に覚えはないか。って」
「ありがとうございます。ただ、その頃にはオレがこの村を覚えてないかもしれないですけど」
「違ぇねぇ」
と笑う村人。
「ま、ゆっくりしてったらいい」
と立ち上がる村人。
「はい。今晩はここで過ごさせてもらいます」
「あぁ。1晩でも2晩でも」
と言って行き交う村人の中に混ざっていった。
ベンチに座りながら、村の様子を見ながらひさしぶりのお肉を食べた。
「…うっま」
美味しかった。ただ手の先は今にも凍りそうなほど冷たい。
食べ終えてすぐにポケットに手を突っ込む。そして村を見る。
村人同士が井戸端会議をしていたり、カーン!カーン!という音を響かせて鍛治をしていたり
溶鉱炉のある家の屋根からは、モクモクと煙が立ち昇っていた。
井戸端会議をする村人同士も吐く息が白く、モクモク立ち昇る煙も白く、周辺も雪で白い。
まるで雲の上にでもいるような気分になった。
お昼?を食べ終えたので、村の周辺だけでも散策してみようと立ち上がった。
シェアとハーフには村で休んでもらって。地図を持って少しでも埋めようと村周辺を歩くルウラ。
村周辺も、もちろん地面が土なら雪が積もり、海なら氷で覆われていた。
「…あっ…」
氷の上ではやはり滑る。
「ぶねぇ〜…」
ヒヤッっとする。ルウラが滑りかけて、間一髪のところで転けずに済んだとき
ルウラの視界内で転けたものがいた。それと目が合うルウラ。それはポーラーベア。いわゆるシロクマである。
転けたシロクマは「あ、見られちゃいました?」みたいな、少し照れた表情をして立ち上がった。
ルウラはそのシロクマの周囲を即座に確認する。
「…いない。オッケー」
ルウラが確認したこと。そのシロクマの周囲に子シロクマがいないかということ。
「ま、あの表情するってことは大丈夫だろうけど」
なぜ子シロクマがいないかを確認したのか。それは子シロクマと一緒にいる親シロクマは
子シロクマを守るために、周囲の生物を、敵味方の判断すらせずに攻撃してくるため。
過去にも樹氷バイオームに行ったことがあるルウラ。友好的なシロクマと出会い
もふもふさせてもらったのだが、次に出会ったとき、子シロクマをもふもふしていたら
背後から鋭い爪で襲われた経験があった。死を覚悟したが、それこそ死に物狂いで走って
木の後ろに隠れて透明化のポーションを飲んで、その状況を逃れた。
「あんな経験、人生で1回切りでいいわ」
と呟いて、子シロクマを連れていない、おそらく友好的であろうシロクマにも近づかず
目を逸らさずに会釈し(シロクマも会釈をし返してくれた)その場をゆっくり離れた。
空がオレンジ色になるまで地図を片手に周辺を散策してみたが、結果は
「ま、わかってたけどね」
周辺一帯、樹氷バイオームだった。夕空になり村に帰る。
「赤髪の兄ちゃん!一緒に食べようや!」
「一緒に飲もう!」
と誘われて村人と夕ご飯を食べることになった。一緒に夕ご飯を食べて
「寒いときはな?こいつが一番よ」
「そうそう!体の芯からあったまるからな!」
「これ無しで寝たら、朝起きたらカチンコチン!だったりしてな!」
「笑えないっての」
というブラックジョークを聞きながらアルコールも飲ませてもらった。
集まりは日が落ち切る前に解散となり、皆そそくさと家に帰っていった。
ルウラは、最初にルウラに話しかけてくれて、村を案内してくれた村人が
家で過ごせばいいと言ってくれたので、お言葉に甘えてお邪魔させてもらうことにした。
ま、外で過ごしたら、それこそ朝氷漬けになってたかもしんないしな…
と窓から、すっかり暗くなった外を見て思う。暗い外に、小さく丸く光るものが複数あった。
それは寒い地帯にのみ現れるスケルトンの別種。Stall(ストール)。
オシャレアイテムの1つである、英語では貴婦人などが身につける細長い大判の布、それがストール。
そのボロボロのストールをまとっているスケルトンがストールである。
基本的にはスケルトンと変わらないのだが、スケルトンが空洞のように真っ暗な目なのに対し
ストールは白、というより少し淡い水色がかっている目をしている。
ストールもスケルトンと同じで弓を装備し、矢を放ってくるのだが
厄介なのが、その矢に「移動速度低下」のデバフがかかっているということ。
その矢が体に刺さると、ダメージを受けるのはもちろん、移動速度が低下するのだ。
ルウラも過去に何度か襲われた。しかし幸い、スケルトンもストールも走ることはないし
移動速度が低下するデバフがかかっている状態でも
走ったらスケルトンやストールの歩く速度より速い。なので走れば逃れられる。
優恵楼(ゆけろう)、大丈夫だろうか…
なんて人のことを思う様になっていた。そんな自分がおかしくなって
「ふっ…」
思わず笑ってしまう。
「どうした?」
村人に訊ねられる。
「いや、思い出し笑いを」
と言っている頃優恵楼は、1人寂しくベッドに入り、布団をかけ
「ルウラ…大丈夫かなぁ〜…」
とルウラと同じことを思っていた。
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