ニキしろ SS
「はぁ……花火大会ね」
俺は寝る前に携帯で都内の夏祭りの情報を収集していた。今年も夏らしい事を何か一つはしたくて、せめてでも休みの日に祭りにでも行けないかと思い探していたところだった。自宅から行ける距離で花火大会があることを知って、ちょっとだけ胸が高鳴る。
「ボビー、何みてーんの」
同じ布団の俺の隣に寝転がっているニキが俺の携帯を覗き込んでくる。
「あ?これや、花火大会」
「どこ?」
「んー、都内やからこっから行ける距離やで」
「へぇ、いいね。行くの?」
「まぁ、行きたいなーとは」
何となくそう答える。こういうイベントに一緒に行く相手がいるかと言えば、ニキくらいしか居ないけれど。
「誰と?」
「いや、決めとらん」
「えー?僕じゃないの?」
「はいはい。分かっとって言ったわ。ニキと」
「やったー行こうよ!ね?」
「ええな。行こうか」
そう言うとニキはあからさまに嬉しそうな顔をして携帯で同じ花火大会のことを調べ始めた。どうやら屋台もあるようで、ちゃんとした大きな夏祭りのようだった。
「ねぇねぇ、ボビーは浴衣持ってる?」
「おう、去年着たやつあるで。洗えるやつ」
「よし。じゃあ2人で浴衣ね」
「わざわざ着るんか?」
「いいじゃん、ボビーの浴衣また見たいし」
「……仕方ないな。引っ張り出すわ」
俺はニキの要望を応えることにした。せっかくなら年に1回のイベントだし、浴衣が着られるならいいと思った。ニキの浴衣姿も見られるのは俺にとってまぁまぁ都合が良かった。
「ふぁ……ぁ」
「ボビーもう眠い?」
「ん…もう寝る……」
「僕も寝よー、おやすみ」
「おやふみ……」
そうしてまた、何度か2人で一緒に眠った頃。時はもう花火大会当日。午前中は2人で編集に勤しんで、日が暮れる頃を待っていた。夕日が顔を出した頃に、俺たちは浴衣の用意をして、互いの部屋で着替えていた。着付けを終えた俺は、簡単に出かける荷物をまとめてリビングに向かう。
「ニキー、着替えたー?」
「おぉ…………!!ボビー可愛い……!」
「お前も似合ってる。準備万端やな」
「ありがと。はぁ……可愛い…僕のボビー……」
「いちいち反応がデカイな」
ニキは俺の姿を隅から隅まで見て、キラキラした目で俺をさらに見つめてくる。俺もニキの浴衣姿に見蕩れていた。
「独り占めしたくなっちゃうな」
「……もうしとるやん」
「でもこれから出かける訳じゃん?こんな可愛いボビーが人目に晒される訳じゃん?無理じゃね?」
「何が無理やねん、仕方ないやろ」
「えーーん!僕のボビーなのにぃ〜!」
「暑い暑い、くっつくな」
俺に抱きついてくるニキをよしよしとあやす。大型犬が抱きついてくるような感覚だった。丁寧にセットされた髪を崩さないように気をつけながら頭を撫でてあげる。
「ボビーの匂いするなぁ…」
「嗅ぐな嗅ぐな」
「ねぇ、行く前にちゅーしたい」
「はぁ、なんでやねん」
「僕のボビーってこと、ちゃんと示すの」
「まぁ、好きにしてくれ」
「はぁい、ありがと」
ニキは優しく俺にキスを落とす。その目を見ると、とても優しく微笑んでいた。それに俺は撃ち抜かれそうになった。
「……照れるから、離れて…」
「はは、可愛いね」
「うっさい、ほら。行くで」
「よっしゃ〜楽しみ〜」
俺らはタクシーで祭りの会場近くに向かった。もう周辺にはたくさんの人がいて、会場に向かうまでも浴衣の人を何人も見た。夏の夜、そこはだいぶ賑わっていた。
「ボビー、なんか食べよー」
「ええでー」
「今のうちに色々買い込んで、花火が綺麗に見えるところ陣取っちゃお」
「そうやな、とりま飯買うか」
「じゃあ行こう、ほら」
「あ?」
「ほーら」
「だから、なんや」
「もう〜!手!」
「あ、あぁ……おぅ」
差し出された手を握って、俺たちははぐれないように隣に並んで近い距離で歩き出す。外ではあまりこういう恋人らしいことは控えているために、慣れておらず気恥しい。もし視聴者に見つかったらちょっと気まずいと、そんなふうに思いながら歩いた。
定番の焼きそばやたこ焼きを買ってから、しばらく歩いていた時、視聴者と思われる人に声を掛けられてしまった。俺は咄嗟にニキの手を振り払ってしまう。マスクをして歩いていなかったのにバレてしまったことに驚きつつ、ニキと2人で受け答えをして、手を振ってその視聴者達を見送る。
「……焦ったわ…」
「ボビーの視聴者さんだったね」
「そうやな、すまん」
「僕のボビーなのになぁ…手も握っててくれなかったし」
「そりゃあ、バレたらあかんなぁって思って」
「でも…振り払わなくていいじゃん」
「焦ってたんよ、ごめんな?」
「もう……来て」
「ちょっ、と……!」
ニキに思い切り手を引かれて人混みの中を早足で歩いていく。しばらく彷徨い歩いて、人が少ない場所に出る。座って待っている人が多いのを見て、花火の待機場所なんだと察する。その中でも後方の木の影になっている、人気の少ない方にニキは足を進めた。
「ニキ、待ってって、コケるから」
「ボビー、こっちおいで」
人々は祭り会場の方や、花火が上がるはずの空を眺めていて、俺らの方には全く気を向けていなかった。そんな中、俺は木の後ろに押さえつけられる。
「やめろって、外やぞ」
「ねぇ、ボビーは僕のだよね?」
「そりゃそうや、行く前もキスしたろ」
「……あれじゃ足りなかったみたいだなぁ」
「んっ……んぅ……ッ」
木の影になっている、それが救いだった。俺はニキに突然キスされる。
「や……めろって」
「やっぱ可愛いから……俺のボビー」
「はぁ?何言うてんの」
「視聴者にあんまり媚び売らないでよ、今日は僕とのデートでしょ?」
「まぁそうやけど、仕方なかったやないか」
「でも、手……振り払わなくて良くない?」
「それは……すまん」
「ちょっとショックだったなぁ」
ニキは少しだけ悲しそうな目をして俺を見つめる。俺もそれを見つめ返していた。
「咄嗟の判断やったから、ごめんな」
「……帰ったら解らせるからね」
「怖いなぁ……全く…」
ニキはまた一瞬キスをして、俺の手を引いて人気のある方に歩いて戻る。買ってきたものを広げて、また少し祭りらしさを感じる。
「屋台の飯ってなんか美味いよな」
「わかる、雰囲気も相まってね」
「花火上がるまで……あ、もうすぐやな」
「もうそんな時間かぁ、楽しみ」
しばらく空を眺めて呆然としていた。
すると、派手な音と共に空に大きな花が咲いた。
「うわぁ……すげ」
「めっちゃ綺麗……」
色とりどりの花。俺たちの夏の夜が彩られていく。会場の比較的近くで花火が上がっているせいで、音も大きい。その迫力に魅せられていた。ふと、横にいるニキを見ると、綺麗な横顔が花火の光で照らされていた。俺は周りのみんなが花火に夢中になっていることを信じて、花火に見蕩れるニキの横顔にそっとキスをした。ニキは驚いて俺の方を向く。その時、一段と大きな花が夜空に咲いた。
そして俺らは、その花の下、キスをする。
そっと微笑むニキの笑顔に見蕩れてしまう。その間にも、花火は打ち上がる。
「ほら、見なよ。綺麗」
ニキは空を指さして笑った。俺はその指をさされた空をゆっくりと見上げた。儚く散っていく火花を眺めながら、俺はニキの愛情を振り返りながら想いを抱き締めていた。愛おしい。深くそう思う。視聴者に嫉妬するニキも、俺と手を繋ぎたがるニキも、花火よりも俺の事を見ているニキも、全てが愛おしいものであった。
そして、最後の花火が打ち上がる。
俺たちは、その最後まで、ずっと繋いだ手を離さなかった。
「めっちゃ良かったな」
「ほんと良かった、来てよかったね」
「ありがとうな、来てくれて」
「こちらこそ。じゃ、帰ろっか」
「せやなぁ」
俺たちはまた手を繋いで歩いた。会場近くでまたタクシーを捕まえて、俺らの家に帰宅する。手を洗って、リビングのソファーに2人で落ち着いた。
「ねぇ、ボビー」
「なんや?」
「帰ったらさ、解らせるって言ったよね」
「あ、あぁ……」
「もう二度と、僕の手離せないように躾てあげるから」
そう言うと、ニキは俺の手をぎゅっと強く握った。少し痛いくらいに。そのまま手を押されて、ゆっくりとソファーに押し倒される。
「裕太」
「な……なに」
お互い浴衣のままで、髪もちゃんとセットしてあって。いつもよりビジュアルが整ったニキの顔に見下ろされて、心臓がドキドキする。見つめられて、それを見つめ返して。ゆっくり顔が近づいてきて、またキスされる。花火の会場でしたようなキスじゃなく、熱くて甘いキスだった。
「ん……ぁ…っ」
「顔、蕩けてるよ」
「……言うな…」
「僕のこと好き?」
「好き…やよ」
「愛してる?」
「……愛してる」
「もっと素直に言えばいいのに」
「恥ずかしいんよ…」
嬉しそうな顔をしたニキが、また俺の唇を奪う。甘ったるくて蕩けてしまうキスを何度も繰り返した。お互いの手を絡めて、求め合うように激しいキスを続けた。
「はあっ……ぁ…くるし……」
「可愛いよ、裕太」
「んん……」
「ねぇ、抱いていいかな……限界かも」
「……仕方ない…な」
「裕太だって、反応してるじゃん」
「ひ……ぁッ…」
浴衣の隙間から手が侵入してくる。太ももをそっとなぞるように触れて、キスだけで反応してしまった俺のそれに優しく触れられる。それだけでゾクゾクして、声が出る。
「んっ……んぁ…ッ」
「まだ直接触ってないのに。かわい」
「……ぅ…るさ、い」
「もっとここ、触って欲しいでしょ?」
「うぁッ……っ♡」
下着の上から擦るように触れられて甘い声が漏れ出す。布の感触がなんとも言えない。一定のリズムで刺激されて、どんどん腰が疼いてしまう。
「裕太、腰動いてる」
「んぅ……っ♡」
「下、脱がすよ」
ニキの手によって簡単に脱がされる。浴衣だけ羽織った状態で、俺はニキに抱かれようとしていた。段々と着崩れてしまっている浴衣が気になった。ニキは俺の右手をまたぎゅっと掴んで離さない。
「おっきくなってるねぇ、可愛いな」
「お前のせい……やろ…ッ」
「そうだね、僕の手が気持ちいいからでしょ?」
「んッ♡あ……あっ、ぅ……んんッ♡」
「気持ちよくて声出ちゃうねぇ」
「んん♡ぁ……、あ、あっ……ぅあ…っ♡♡」
「いいよ、裾掴んでて」
「んっ♡♡ん、ぁ、あっ、あぁ……ッ」
俺は空いている片方の手を伸ばしニキの浴衣の胸元の裾を縋るようにぎゅっと握りながら、情けなく感じていた。ニキの大きな手が大好きで、それが酷く気持ちよかった。
「ん゛ッ♡♡あぁ、あっ…あ、にき、にき……ぃ、あ…っ♡まって…ッ」
「もうイきそ?」
「ぅ……イく……ぅ…ッ♡」
「よしよし。イッちゃってもいいよ?」
「んん゛ッ♡♡あ……あっぅ゛〜〜〜ッ♡♡」
ニキの手に俺の白濁とした液体がドロドロと流れていく。力が抜けて、浮いていた腰が落ちる。息が上がってしまって、抑えられないほどの興奮状態だった。浴衣姿のニキに手解きされている今の状況が官能的で、俺をさらに興奮させた。
「イッちゃったね、裕太」
「はぁ……ぁ、ふぅ……♡」
「そのまま手、握っててね」
「ぅ……?あ、あっ……ぁ゛?!」
ニキの指が俺の中に入ってくる。ゆっくりと丁寧に時間をかけて、入口から中を解されていく。手前までしか来ない刺激にもどかしさを覚えていた。ニキのすらっとした男らしい指が、俺の中にある。それだけでも興奮するのに、ニキは俺をずっと見つめたままそれを繰り返していた。
「裕太ってさ、ほんと綺麗な目してるなぁって思うんだよね」
「う……ッあ、あ、なん……や…ぁ」
「肌も白くて、顔も整ってて、髪もふわふわで……ほら、この手も綺麗でしなやかで。俺、裕太の全部大好き」
「ん゛ッ♡あ……ぁ……わかっ、た、か、ら…♡」
「だからこの手、俺以外に握らせるなよ」
「あ゛ッ?!あぁ……ッう、あ、あっあ……ッ♡」
指が上向きになって、トンっと気持ちいいところを押された。それにまた腰が浮いてしまって、可愛くない声がまた溢れてしまった。だいぶ解されてしまって、苦しさよりも気持ちよさが優先して脳に伝わっていた。
「そろそろ入れるよ、いい?」
「ん……♡きて……」
「そんな可愛い目で誘わないでよ、ただでさえ浴衣姿、可愛いんだから。ね?」
「お゛ッ♡♡あ゛あっう、あ、っあぁ……ッ♡」
「いきなりそんなに締めないで……っ」
「ん゛ッ♡ぁ……う、ぁ……あっあ♡♡」
俺は急に恥ずかしくなったのと、浴衣姿のニキを直視すると身体がさらにキュンとしてしまうため空いた片手で顔を隠した。
「ねぇ、顔隠さないでよ」
「う゛ぅ……っ♡」
「ほら、こっち見て」
「あ゛ッ♡あぁ……ッう、んッ♡」
「顔赤いね…?ナカ気持ちいいんだ」
「んん゛ッ♡ぁ……ぅ♡」
「涙目でうるうるしてるよ、ナカつらい?」
「ん゛ぅッ♡……つら……く、な゛…ぃ♡」
「そっか。よかった」
「あぁ゛ッ♡♡あぁっうぁ……あぁ…ッぁあ♡」
握った手をぎゅっとに握られて、さらに奥を突かれる。気持ちいいところにニキのそれが届いて、腰が自然とニキの動きに合わさて動いてしまうし、声も抑えられないし、気持ちよさで涙も出てくる。
「ぁあ゛ぁ〜〜〜〜〜〜ッ♡♡」
「蕩けちゃってるよ、裕太」
「ん゛ぁッ♡あ、っあ゛……ぁぁあぅ♡♡」
「浴衣はだけちゃったね、胸元見えてんのエロ……っ」
「ぁあ゛ッあ、ぅッうぁ゛……イ…ッ……♡♡」
「だーめ、まだイッちゃダメだよ」
「ん゛ぅッ♡ぁ゛ッうぅぅ……ッん゛ん゛ぅ゛」
「駄目。耐えな」
「お゛ッ……ぅ♡ぅあ゛ッあ、あっあ、ぁ♡♡」
「そう……偉いね、裕太」
「あ゛ッ♡♡あぁっ……イ……ッ、ちゃ…あ゛っ♡ぅッう゛ぅ〜〜〜〜〜〜〜ッ♡♡♡」
優しい口調で偉いと褒められ、その暖かな声色にキュンと中が動いてしまって耐えられずに果ててしまった。出るものもなく、中でイく。
「あーあ、イッちゃダメじゃん」
「う゛っ……うぅ……っ♡♡」
「裕太、「ごめんなさい」は?」
「あ゛ぁ゛ッ?!? あッ♡お゛ッ、あぁ……ッ、ご、ごめんなっ、ひゃ……っい゛ッぃい゛♡♡」
「もっと俺の手握ってよ、離さないで?」
「お゛ッ♡♡ はぁ゛ぁあ゛ッあ、ぁうッ♡」
今出せる力を使って右手でニキの手を握る。ニキも強く握り返してくれて、俺の空いた左手はニキによって手首を押さえつけられていた。顔も隠せないし動かない。拘束されているようで興奮した。
「ずーっと俺の手握ってないと駄目。裕太は俺だけのものなんだからさぁ」
「んん゛ッ♡わ、かっ……てるぅ゛ッ♡♡」
「ダメだよ、他の人にこの手許しちゃ」
「わがッ……たぁ゛ッ♡ あっ、うぁ……♡」
「ちょっとでも触れさせたら許さないからね」
「ん゛ッ……っ?!ふ……ぅッ、ぅ……ん゛…ッ」
ニキの右手が、俺の手首から首に移った。思うように声が出せずに息ができない。苦しい。苦しいけれど、ニキの嫉妬や独占欲を直接感じることが出来ていて身体がまた熱くなる。
「ふぅ゛ッ♡ぅ……ひ……ゅ……ぅッ♡」
「苦しいのに感じてんの?」
「ん、ぉ゛ッ……っ……ッ〜〜〜〜〜〜♡♡」
「……はは、イッたね」
「はぁ゛ッ……はぁ……ぁ……ッは……ぅ♡」
「可愛すぎ……大好き」
「んぅ……ッ♡ んん゛っ……♡♡」
俺は唇を奪われる。先程とはまた違う苦しさに襲われるが、舌から伝わる快楽と下から伝わる快楽のふたつが合わさっておかしくなりそうになる。脳内がビリビリと痺れて、中がぎゅんと締め付けてニキのそれを求めてしまう。奥に何度もそれが当たって、気持ちいいところがぐちゃぐちゃにされて、呼吸のペースもニキに取られて、今、俺の全部がニキに囚われていて、俺は幸せを感じていた。
「ぅ……裕太、イッていい…?」
「う゛ぅぅ……ッ♡♡あ、あっ、きて……っ」
「ずるい、ずるい。大好きだよ裕太、愛してる」
「あ゛っ……いして、る……っ♡♡」
「受け止めろよ……ッ」
「お゛ッ♡ぅあ゛ぁあ〜〜〜〜〜〜〜ッ♡♡♡」
俺たちは同時に果てて、互いに抱きしめあっていた。終始手を繋いでいて、身体も手も繋がっていて。そんなふうに求められるのが心地よかった。俺はニキのものだし、ニキは俺のものだから。
「はぁ……裕太……好き……」
「ん……だいすき……ニキ…」
「浴衣、汚しちゃったね」
「……洗えるやつ、やから……だいじょぶ…」
「浴衣似合ってたよ。超可愛かった」
「にきも、似合ってる。かっこいい」
「ありがと」
そう言って、またキスをする。優しい触れるだけの甘いキスをした。ニキはそっと俺に微笑んでくれて、その目の優しさにまた惚れ直す。
「風呂いこ、暑いわ……」
「そだね、裕太立てる?」
「……だっこ」
「ふふ、はいはい。甘えんぼだね〜」
ニキに抱えられて立ち上がって、俺らは風呂に向かう。一緒に入って、汗を流して、背中を洗ったり頭を洗いあったり。こうやって男子高校生のようなテンションでふざけ合える仲であることにも感謝していた。ニキとは何をしていても楽しい。どんなことをしていても楽しい。ニキがいるだけで生活が豊かになるし、色が着く。とてもとても幸せだった。これが永遠に続けばいい。死ぬ時までニキが側にいればいい。俺から離れないで一生ここにいればいい。俺以外の人間に興味なんて無くなればいい。そんなふうにも思っていた。
「なぁ、ニキ」
「なぁに?ボビちゃん」
「お前はずーっと俺のこと好きやんな?」
「そりゃもちろん、大好きだよ」
「……そっか」
「どしたん」
「んーん、なんでもないで」
ニキが持つドライヤーの音にかき消されてまう位の声量で、俺は彼に、愛してるを呟いた。
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