「ただいまーっと」
玄関で靴を脱ぐ。
「おぉ、お兄ちゃんおかえり」
洗面所から私服の妹が顔を覗かせた。
「おぉ、ただいま。どっか行ってたん」
「うん。友達と遊びに」
「へぇ〜。ま、青春は楽しみ尽くしなさい」
「なにそれ」
妹と入れ違いで洗面所に入り、手洗いうがいを済ませ、階段を上がり、自室へ入る。
部屋着に着替え、リュックから部屋着、下着のパンツを取り出し
さっきまで着ていたものを合わせて、1階の洗面所の洗濯籠に入れ、リビングへ入る。
キッチンでは母がスマホをいじっていた。僕はテレビ前のソファーへ行き、腰を下ろす。
ローテーブルの上のリモコンを探すが見当たらない。振り返るとダイニングテーブルの上に置いてあった。
正直19時前はまだ報道番組ばかりだと把握していたので
リモコンは取りにいかず、ソファーでスマホをいじっていた。
しばらくして部屋着に着替えた妹がリビングに入ってくる。
妹もソファーへ来て、スマホをいじる。母が料理を始めて少しして父も下りてくる。
その後、母の料理がテーブルに並び、家族で食べる。
「「ご馳走様でした」」
食器をシンクへ運ぶのを手伝い、お風呂のスイッチを押す。しばらくリビングで家族団欒し
各々のタイミングでお風呂に入り、各々のタイミングで部屋に戻った。
その日、実況を撮ること、というか夜に鹿島から
ゲームのお誘いもなく、ただテレビを見て、眠くなったら布団に入り、眠りについた。
なんでもない日曜日が過ぎ、月曜日。いつも通り妹に起こされ、歯を磨き顔を洗い
リビングで家族と朝ご飯を食べ、妹と父を見送り
部屋戻り、早めの昼寝をして、11時少し前に起き、着替えて12時前に家を出た。
音楽と共に駅に向かい、ホームで電車を待つ。電車に乗り、終点へ。
終点で乗り換えて、大学の最寄り駅で降りる。
大学に入る前にコンビニに寄って、ココティー(心の紅茶の略称)のストリートティーを買い
大学の正門から入り、講義室を目指す。講義室に入ると音成と妃馬さんがいた。
音成が僕に気づき、軽く手を挙げる。僕も軽く手を挙げる。
音成が手を挙げたのを見て、妃馬さんも僕のほうを見る。
パッっと笑顔になる。何度も妃馬さんの顔がパッっと笑顔に変わるのを見ているが慣れない。
心臓がドクンッっと跳ねる。胸の辺りで控えめに手を振る妃馬さんに僕も手を振り返す。
鹿島や匠を探すが見当たらず、一人で寂しく座る。講義が始まり
講義中ゲームをしたり、妃馬さんとLIMEしたりして過ごした。
「今回はここまでで終わりにします。お疲れ様でした」
講師の方が講義を締め、講義室内が騒めき始める。
出入り口の扉が帰宅ラッシュの電車の出入り口みたいになっていたので
空くのを待ってから、音成、妃馬さんの元へ寄る。
「おっすー」
「お、幸せもんだ」
「えへへぇ〜」
「なんか腹立つな」
「わかります」
「ちょ、わかんないでよ」
「帰りますか」
「ですね」
「あいよー」
みんなで講義室を出て、校舎の外に出た。
「金土で発表会したらしいじゃん」
「そうだよ。あいつ最初「ダメでしたー」なんて言うから、マジで鹿島とどうしようか迷ったわ」
「聞いた聞いた。たっくん笑ってた」
「出た!生たっくん!」
「生たっくん?」
「生たってくんって」
妃馬さんが笑う。
「いや、話してたんすよ。
告白成功してなんか変わった?って聞いたとき、呼び方変わったって話してて
そのときにたっくんって呼ばれてるって聞いて「たっくん!?」って」
「驚いたんですね」
「そんな驚く?」
「驚くってか笑った」
「笑うなよ」
「だって。ねぇ?小野田くんって呼んでたのが急にたっくんって」
「で小野田さんは「恋」でしょ?」
「そうそう…なんか照れるわぁ〜」
音成が頬に手をあてる。
「え、なんか腹立つ」
「わかりますわかります」
「幸せオーラぷんぷんに出しおって!」
妃馬さんが音成をくすぐる。
「やめて!サキちゃん!」
「こんにゃろー!」
「ギブギブ!」
そんなことをしていると駅につき、改札を通り、ホームに入るとタイミング良く電車が来たので乗り込む。
「ここに匠がいたら音成のこと名前で呼んでたのか」
「そうだねぇ〜」
「なんか小っ恥ずかしいわ」
「なんでよ」
「いや、なんでだろーな。経緯(いきさつ)を知ってるとなんかこう…なんだろ。まあなんかな」
「なんよ」
「怜夢さん。私はわかりますよ」
「さすが妃馬さんです」
「ちょ、そこの2人。2人で完結しないで、こっちにもわかるように伝えてよ」
妃馬さんと目を合わせるが、どうも言葉が出ず、2人で首を傾げる。
「ごめん。言葉が出ん」
「ごめん。私も」
「ちょっとー」
そんな話をしていると大吉祥寺につき、降りて乗り換える。乗り換え先でも
ホームに入ったとき、ちょうど電車が来たので、その電車に乗り込む。
その電車内でも他愛もない話で盛り上がり
あっという間に音成と妃馬さんの降りる駅につき、3人で降りる。いつもの道を3人で歩く。
「今度デートどこ行くの?」
「んん〜特に決めてないなぁ〜」
この話鹿島と3人でしたなぁ〜と思い出す。
「たっくんなんか言ってた?」
「うぅ〜ん…。いやなんも言ってなかったよ」
「そっか」
「慣れなぁ〜「たっくん」」
「それは慣れて?としか言い様がない」
「だよな」
「小野田さんが恋ちゃんを名前で呼ぶほうが慣れないかもですよ」
「あぁ!たしかに!音成とはこうやって一緒に帰ってるから
匠の話題の度にその呼び方聞けば、慣れるかもだけど
匠が音成のこと名前で呼ぶのは慣れんのに時間かかるかも」
「あぁ、たしかにね」
「恋ちゃんのこと「恋」って呼ぶの想像できないなぁ〜」
「森本さんも妃馬さんも恋「ちゃん」ですもんね」
「ですです」
「みんな「ちゃん」呼びですよね。なんで?」
「なんでだろ?」
「さあ?」
「最初は音成さんだったんだよね?」
「そうそう。恋ちゃんも根津さんだったよね」
「その日か?初日に一緒に帰ってるときに恋ちゃんって呼んでいい?って」
「それで恋ちゃんも、じゃあ妃馬ちゃんって呼んでもいい?ってことになったんだけど」
「サキちゃんが「妃馬ちゃんはちょっと距離感感じるから
サキちゃんって呼んで?」って言われたからサキちゃんになったんだよね」
「そうそう」
「仲良しぃ〜」
「仲良しだよねぇ〜」
「ねぇ〜」
その後も2人の仲良しエピソードを聞き、音成の家の前まで歩いた。
「じゃ、またな幸せもん」
「はーい。幸せもんでーす」
「ウザっ」
「ウザっ」
「ちょっと」
「じゃ、またねぇ〜」
「またねぇ〜」
3人で笑い、音成が帰っていく。妃馬さんと2人で
すぐそこの根津家の入っているマンションのエントランスを目指す。
「いやぁ〜良かった良かった。怜夢さんとようやく恋ちゃんの話できるようになった」
「先週の帰り、変な無言タイム多かったですもんね」
「いや、あ、喋っちゃうと思って」
「気を遣っていただき、ありがとうございます」
「いえいえ」
「あ、そうだ。関係ないんですけど」
妃馬さんが「ん?」という顔をする。可愛くて心臓がドキンッっと跳ねる。
「来週?ん?今週か。の土曜か日曜、スマホケース探す旅の続きに行きませんか?」
「おぉ。じゃっ、あぁ〜…日曜日でもいいですか?」
「もちろんです」
「土曜日はフィンちゃんと恋ちゃんと遊ぶので」
「なるほどですね。まあ疲れて無理なら言ってください」
「そんなことにはならないと思いますけど」
妃馬さんが笑う。
「土曜どこ行くんですか?」
「恋ちゃんの祝勝会です」
「あれ?こないだの土曜もやったってLIMEくれませんでしたっけ?」
「しましたよー」
「またするんすか?」
「またするんす。女子はたぶんずっとします」
「ずっと?」
思わず笑う。
「それは嘘」
「たしかにずっとは嘘」
妃馬さんも笑う。エントランス前にはとっくに着いていて、エントランス前で2人で話していた。
「電話とかでもまだ言う感じですか?」
「そりゃーそーですよー。怜夢さんだってまだ言ってるじゃないですか」
「たしかに。そう考えると1カ月は言うかもです」
「おんなじくらいです」
「こっちは匠で妃馬さんたちは音成って感じで」
「いじり倒してやりましょう」
妃馬さんが手を挙げる。「?」と思いながらも僕も手を挙げる。すると妃馬さんが笑顔で
「イエーイ」
と言いながら僕の手にあてる。妃馬さんの無邪気さにキュンとする。
「イエーイ」
遅ればせながら僕も言う。
「じゃ、また明日」
「明日もいじってやりましょう」
「ですね」
「じゃ、また明日&LIMEで」
「はい。また明日&LIMEで」
手を振って妃馬さんと分かれる。角を曲がり、イヤホンで音楽を聴きながら駅へと歩く。
駅につき、電車乗って自分の家の最寄り駅で降りる。
家に帰り、夜ご飯を食べ、鹿島とゲーム実況を撮り、動画を編集して眠った。
次の日から火、水、木、金と鹿島がいたりいなかったり、匠がいたりいなかったりして
帰り道は音成を匠との話を聞いて茶化して帰った。
土曜日、妹は友達と出掛けると言って出掛けて行ったが
僕は特にすることもなく、朝ご飯を食べ、寝て、昼ご飯を食べ、ゲームをしたり
テレビを見たりしてあっという間に夜ご飯となった。
その後、いつも通りお風呂ができるまで家族団欒し
各々のタイミングでお風呂に入り、各々のタイミングで部屋に戻った。
部屋でテレビを見ながら鹿島や匠、妃馬さんとLIMEをし
妃馬さんとのLIMEでは次の日の待ち合わせ場所、待ち合わせ時間などを決めた。
その日は鹿島からゲームのお誘いはなく
次の日の待ち合わせ時間もそんな早いわけではないが遅いわけではなかったので、早めに寝ることにした。