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私の名前は中村ユカ。
実を言うとこの前まで大学生だった。
だから大学生ブランドが終わってしまい、ちょっと寂しいというのが本音。
そんな私だけど、数ヶ月前に就職先の会社の面接になんとか合格した。
これで他社から山のように送られたお祈りメールともおさらばできる。
だからとても気分が楽だ。
どれくらい気楽かというと背中に羽が生えたんじゃないかってくらい。
それくらい山盛りのお祈りメールを横目に合格メールが届いた時は爽快だった。
そしてなんと今日はその合格した会社の入社式。
新しい出会いは緊張すると言う友達は多いけど、私はワクワクするタイプ。
だけどそんな私でも入社式の朝は少しドキドキしていた。
「はあ…。」
思わず吐息が漏れる。
なぜかというとそれくらいロマンチックな夢を昨夜見たからだ。
吐息が漏れるほどロマンチックな夢、言葉にするととても甘美な響きがする。
甘美な夢というとエロい夢なんじゃないかと思われるかもしれない。
しかし残念ながらこの夢には、官能小説ばりの強かなエロティックさは仕込まれていないのだ。
単純にイケメンな男性が遠くからこちらに手を振っている、そんな夢。
もしかしたら夢がシンプルすぎて私以外の人がその夢を見たら退屈するかもしれない。
だけど私はあくびをする人を横目にその夢を見て吐息を漏らすんだろうな。
それくらい私はその夢にでてくるイケメン男性がタイプなのだ。
こんなことを言うと顔が良いから吐息が漏れるんだろうなと思われそうだけどそれは違う。
単に顔がカッコいいからだけでなく、雰囲気がその人は良いのだ。
なぜ雰囲気という細かいところまで知っているのかというと、それは同じ夢を何度も見ているから。
その夢との出会いは高校時代にまでさかのぼる。
だからかれこれこの夢とは7年くらいの付き合いなのだ。
なかなか長いと思う。
なのでこうして考えてみると同じ夢を何度も見て吐息を漏らしてるなんてなかなかなことをしていると思う。
だけどそれくらいその夢に出てくるイケメン男性が私はタイプなのだ。
繰り返しになるけど、やっぱりそのイケメン男性の雰囲気が良い。
優しそうな笑顔、ゆるく振っている手、転んでも手を差し伸べてくれそうな紳士的な態度。
どこをどこからどうとっても素晴らしかった。
さて、なぜ私がここまでたかが夢に出てきた男性のチェックに手厳しいのかというのには理由がある。
それは私の父親が原因なのだ。
私の父親は私が物心ついた時から母親に暴力をふるっていた。
いわゆる世間で言うところのDVというもの。
だからつまり私の父親はDV男というわけなのだ。
しかしながら残念なことがあった。
それは私の父親がシラフの時は優しい人だったということ。
だけど私の父親はお酒を飲むと母親に暴力をふるう。
だからずっと私は父親がお酒を飲む瞬間が好きになれなかった。
お酒を飲むと父親は一気に雰囲気がトゲトゲしいものに変わってしまう。
あの雰囲気が途端に変わってしまう瞬間は今思い出してもゾッとするものがある。
そういうわけで私は彼氏を作る時は絶対に雰囲気も細かくチェックする習慣ができてしまった。
しかも現実だけでなく、夢に出てくる男性にまでそのチェックを欠かすことはない。
改めてこの徹底ぶりに育ちというものがどれほど関係してくるのかをとても痛感させられた。
さて、そんな教育をしてくれた父親はありがたいことに既にもうなぅなっている。
育ての父親が亡くなってるのにありがたいなんて言えてしまう。
それくらい父親のDVが酷かったというわけだ。
ちなみに亡くなった理由は肝臓ガン。
長年、お酒を飲み続けていたことが原因で肝臓ガンになったのだ。
あの時、少しでも母に対して申し訳無さを感じてお酒を控えればこんな終わり方はなかっただろう。
私は呪いみたいにお酒を見る度に父親のことを思い出す。
飲みの相手が彼氏だろうとそうでなかろうとでも。
やっぱり育ちというものは恐ろしいものだと何度も思わされる。