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「君がいなかったら、もっと。」
物心ついた時から…いや、つく前からも、俺の両親は不仲だった。
朝に起きて、夜に寝るまで、ずっと。
父親は、世界的に有名なマジシャン。
母親は専業主婦で、家事をしている。
父親は家に帰るなり仕事の疲れで母親に八つ当たり。
母親はヒステリックになったり、泣いたり、時々狂ったように笑い出したり…
おまけに両親は…俺に無関心だった。
両親から何も教わらなかった。
…いや、でも、教わったか。直接的ではないけれど。
怒り、悲しみ、不安、恐怖、孤独感。ただそれだけ。
そのせいかな。俺の心は、空っぽだった。
ポジティブな感情があまりよく分からない。
……愛とか、好きとかは、特にわからなかった。
よくよく考えてみれば、そりゃそうだ。
人の心の土台を作る乳幼児期から、両親から愛を貰わず、
両親の口から”好き”なんて言葉を一度も聞いたことがなかった。
でも、周りの人達は、ちゃんと持っていた。
芯から満たされている心を…”人間らしさ”を。
「…いいなぁ」
小学生の頃。
普段通り、学校近くの図書館で時間を潰していた。
一番最初は、遅く帰ったら両親が俺を心配してくれるかも…と、心のどこかで思いながらやったことだった。
…でも、やっぱり、両親は俺に無関心。 心配なんて、しなかった。
今では、少しでもあの居心地の悪い家に居る時間を少なくするために、帰る時間を遅らせている。
ふと、目に付いた本。
「…心理学?」
そこでやっと、一筋の光が見えた。
人の心理を学べば…
俺も、”人間らしく”なれるかもしれない。
大学生になった。
あの日から、俺は心理学の本を読んで…読んで、読んで、読んで、読んで読んで読んで。
心理学部にも入って。
それで得られたのは…
人の心を見透かせるようになったこと。操れるようになったこと。
自分を偽れるようになったこと。
傍から見れば、幸せで、心が満たされている、”人間らしい”人間。
外面だけでも”人間らしく”して、満たされてるようにすれば、いつかは心も満たされると思って…俺の為に俺を偽ってきたのに。
でも、満たされなかった。人間らしくなれなかった。小さい頃から何も変わらない、空っぽ。
どうすれば心は満たされる?どうすれば”人間らしく”なれる?
分からない。
そんな時に、君が…千空ちゃんが
俺のことを好きだって言った。
千空ちゃんが好きなのは、人間らしい、偽りの俺で…本当の俺じゃない。
そもそも、俺には”好き”が分からないんだから、俺じゃ、その気持ちに応えられない。
今まで俺に告白してきた人も、それを理由にして、沢山振った。
…でも、
人と愛し合ったら、”好き”とは何かを知ることが出来て…
本当の意味で”人間らしく”なれるんじゃ?俺の心は満たされるんじゃ?
…そう思って、俺は、千空ちゃんと付き合った。
「…ていうこと。」
「メンゴ、千空ちゃん。」
「俺は千空ちゃんみたいに、心の底から”好き”って言えない。」
「俺だって…千空ちゃんと過ごす日々で、何も感じないわけじゃなかった。」
「…幸せだった……と思う。」
「でも、俺の、千空ちゃんに対する感情が、本当に”好き”っていう気持ちなのかが分からない。」
「口だけの言葉なんて、千空ちゃんを傷つけるだけ。」
「だから言わなかった。”好き”って。」
「…」
千空ちゃんを、また傷つけてしまったかな。
…傷つけたいわけじゃない…なんなら、傷つけたくないのに、どうして…
…最低だなぁ、俺。
「…幻。」
「…?」
千空ちゃんが、俺の服を指先だけで引っ張った。
「俺は、”浅霧幻”が好きだ。」
「…え。」
「そりゃ、最初は、テメーの”人間らしい”ところが好きだと思った。」
「でも、幻と一緒に過ごしていくうちに、」
「”浅霧幻”という存在ごと、好きになった。」
「幻のことを考えると、いてもたってもいられなくなる。」
「幻が隣に居ないと、なんか、違う。」
「幻にもっと近づきたい。」
「幻の笑顔を見ると、幸せだ。」
「幻の”いつも通りじゃない”姿も、愛おしい。」
「…だから、っ!」
「俺が好きなのは、全部偽りの幻だなんて、そんなの嘘だ! !」
「…なぁ、幻…テメーはどうなんだ。」
「俺と居ると、何を感じる。」
「…俺、…は…」
「…千空ちゃんと居ると、安心して…」
「千空ちゃんを傷つけたくなくて…」
「今…千空ちゃんにそんなこと言われたのが、嬉しい。」
「…ねぇ、教えてよ…千空ちゃん…」
「この気持ちは、”好き”なの?」
「…人によって、”好き”の基準は違う。」
「だけど…これだけは言える。」
「俺もテメーと同じこと感じる。」
「…そう感じるのが…」
「”好き”だと思ってる。」
…そっか、
千空ちゃんのどんな一面を見ても、愛おしくて…もっと見たいと感じたのも
千空ちゃんが倒れたって聞いてから、頭が真っ白になって、こうしてここに来たのも
全部、全部…
“好き”って感情があったからなんだ。
耳と、鼻が熱い。
宙に浮いている感覚。
視界がぼやけてる。
…あれ、俺…泣いてる?
「…俺、っ千空ちゃんのこと好き!」
「千空ちゃんと一緒に生きたい…!」
「…そうか。」
そんな、素っ気なく感じる返事。
だけど…千空ちゃんは
暖かく、穏やかで、何も偽りがない…
優しい表情だった。
俺の心は、空っぽだ。
それでも、埋まらなかった。
君がいなかったら、もっと。
今は君がいるから、少しずつ、本当の意味で
人間らしく生きることが出来る。
完結ですーーーー✨✨😭😭
ありがとうございました!!!🙇🏻♀️´-
もし、「え?なにこれ、どゆこと???」ってなったらいつでもコメントで聞いてください😭😭
おまけ〜(書きたいことを書きます。)
小さい頃から父親(百夜)に愛情を注がれてきた千空が、家族から愛情を注がれずに空っぽのまま育った幻に”好き”とは何かを教える(確かめ合う)の…
エモい!!!!!!
幻にとっての人間らしさの定義↓↓↓
“好き”とは何かがわかる=人を愛すことが出来る=心が満たされてる=人間らしい
幻の心が空っぽ、家庭環境に問題がある っていう展開の伏線立ててるので良かったら探してみてください!!
1話1話の題名について↓↓↓
第1話 『感情という現象』
第2話 『君の好きが分からない』
第3話 『これは俺の為の俺』
この題名たちとと似たようなこと第5話と最終話に書いてるんですよね… その話の内容に合うように、題名すらも伏線にしました。
第4話 『名前がない想い』
これ、もちろん、千が幻に振られて割り切れない気持ちも表してるんですけど…
幻の、千に対する気持ちは沢山あるけど、この気持ちが何なのかは分からない。っていう、あるのに分からない。
幻にとって、『名前がない想い』ていうのもあるんですよね…
第5話 『相対する空虚な心』
幻に振られて、何も感じなくなった千の空っぽな心と、元々空っぽの幻の心が、5話の最後に向き合うんですよね…
しかも『向き合う空虚な心』にしなかった理由は、”相対”って、対になってるイメージじゃないですか?
質も量も、空っぽになった理由も違う空虚な心が対の立場で向き合うのを表現したくてですね…😭😭エモい!!!
最終話 「君がいなかったら、もっと。」
他の話は『』で、最終話だけ「」なの、なんでなのか考えてみてください!!🙏🙏🙏
構成メモ📝(字汚いです)(深夜テンションで書いたのでなんかやばいです)
小説とちょっとというかだいぶ違う(最後ら辺とかマジで違う。)ところあるけど気にしないでください!!
「それでも、埋まらなかった。」のシーン、描きたいところ描きました。
このシーンの絵見たい!!っていうのあったら遠慮なく言って欲しいです😭😭喜んで描きます!!!!
(とてつもなくおこがましいですが、逆に描いてくださっても嬉しすぎて口角が宇宙に行きます。)
コメント
6件
え、最高すぎませんか? 小説書くのも上手くて絵もかけるなんて主様神以外のなんですか? 全話最高でした!素敵な作品を読ませていただきありがとうございました!
良き良きの良きすぎてもう大変でした。イラストが凄い格段に良くなってて好きです。ハピエンだ!!!!
あのすみません。涙腺返してください😭😭😭😭結構ガチで泣きました🥺🥺🥺 好きすぎます😇😇うわ……え…?めっっっちゃ好きです(語彙力皆無)ゲンちゃんの過去家庭環境あまりよくなさそうですよねめっっっちゃくちゃ共感えぐいです。。🥺🥺うわぁ~~FAめっっっちゃ描きたいです……でも私なんかが描いちゃっていいんでしょうか……素敵な作品をありがとうございました!!!!!!😭😭✨